2013年10月26日

風の歌 409

風の歌 409 いつしか、姫紫苑の季節です。

 あの猛暑は、どこへ行ってしまったのiconN05

 ポケットにも、戸棚にも、

 置き忘れてなんて、いないのに

 夏はカレンダーの国へ帰って行ったのかしら

 北国からは、早や、雪の便りです。

 長男の行ってた北見工大周辺では、

 路面凍結iconN04

 あ、熊と自動車の正面衝突だってiconN06

 北海道って・・・iconN04くまiconN04

 九州は、tenki_1連続台風だし・・・嗚呼・・・ 


    The Song of Wind (409)

 ジャドゥビスは、ユリシアの言葉を、あらかた聞き流して

しまっていた。理解の域を超えた、聞き慣れぬ言葉が

入り乱れる、ユリシアの話は、真剣に身を入れて聞いても、

分からぬ事が多すぎる。

 だから、次第に、ユリシアの口調が、暗くなって行っても、

連日の移動で、疲れたのだろうと、簡単に考えた。

 「丘の麓に、ちょっと大きい村があって、

  そこに、馬車の迎えが来てる。

  夕べの宿に、手紙が届いていたんだ。

  だから、余り遅くならないうちに、峠を越えよう。

  次の宿場町が最後の宿で、明日の今頃には、

  フェティエが見える・・・」

 すっ、と、傍らに感じていた、人の温みが冷めた。

 木の葉はそよがぬのに、風が立った。

 「ジャドゥビス・・・私は・・・行けない・・・

  もう、ここから先へは・・・」

 それは、人の肉声では、最早、なかった。

 ・・・森の木々の間を抜ける、風の音・・・

 それが言葉を発したような、不思議な、波調・・・

 「ユリシア・・・なんだって?

  フェティエに行かない?なぜ?

  ・・・迎えが来てるのに?

  父母に、兄達に、君を会わせたいのに?

  ・・・どうして・・・?」

 「だめよ、ジャドゥビス。

  ご両親に、私を、誰と言う心算なの?

  私は風。風と霧の娘。

  本当は、帰ってきてはいけなかったの。

  役目が終わったのだから、私は、宇宙の果てで、

  消えて行く運命だった・・・

  あなた達と、長く居過ぎた・・・私は、悲しく、

  寂しくなって、あなた達を探した。

  そして、再び巡り会い、私は夢を見た。

  風も、夢を見るの。でも、それは、夢。

  夜が明けて、夢は覚めるの。

  もう、覚めなくてはいけないの。

  これは夢。もうすぐ覚める夢・・・

  お別れね。ジャドゥビス。楽しかった。この一旬節。

  ありがとう。私に夢を作ってくれて。」

 それは、悲しく切ない、実らぬ恋の告白であった。

 「シシィもいない。誰もいない。私の力も、もう限界。

  私が誰かを知る人と、会う事は、もう出来ないの。

  だから、お別れなの。私は、風に還る・・・

  でも、私は風。だから、いつも、あなたの傍にいる・・・」

 白い頬に、もはや血の色は蘇らず、冷たい手に、

温かみが戻る事もなかった。

 代わりに、白髪が風に巻き上がり、

表情から生気が失われてゆく。

 「ユリシア!!」

 ジャドゥビスは、無我夢中で手を伸べ、その小さな体を、

捉まえようとした。が、その指先に、触れるものは無く、

見える姿に、実体は無かった。

 「ユリシア!戻ってくれ!

  一緒に、フェティエに帰ろう!!」

 しかし、白い少女の姿は透き通り、目を凝らして

見極めねばならぬ。ジャドゥビスは、揺らぐ姿に駆け寄り、

叶わぬと知りつつ、その姿を掻き抱いた。

 一瞬、触れた感覚があった。

 が、それは、一条の風であった。

 ジャドゥビスの腕の中で、風は、一巻きし、

果樹園木々を揺らし、湖上を渡って、消えた。


 ジャドゥビスは、傷心を抱え、空馬を引き、峠を越えた。

 峠の麓に、馬車を交えた一群があった。

 先頭の二騎が、駆け寄って来る。

 「ティム!カイン!」

 「ジャドゥビス様!!ご無事で!!」

 それは、一年前、ラゥオールフィアで別れた、

従者の、ティムとカインであった。

 「二人とも!!具合はいいのか?」

 「はい!すっかり良くなりました!

  傷も、催眠術も、もう大丈夫です!!」

 二人は、元気良く答えながら、公子が全く一人なのを、

不思議そうにしていた。空の馬には、一応、水の筒と、

毛布地のマントの荷が付けてある。

 それは、ジャドゥビスとは別の分。

 ・・・他に、誰かいたのだろうか?・・・
 
 しかし、それらの疑問は、馬車から発せられた、

高く澄んだ声に、掻き消されてしまった。

 「大公様!いつになったら、私を公子様に

  紹介して下さるの?」

 御者が馬車の戸を開けると、幼い少女が、

軽々と飛び出して来た。

 明るい薔薇色のドレス。淡いプラチナブロンドの髪。

 何より、その瞳は、空の色そのままの、水色・・・

 「・・・ユリシア!?」

                  続く


 ユリシアが消えた所で、「ああ、終わった・・・」と思った方、残念でした。

 ずーっと前に、ユリシアの実体モデルは、芦田愛菜ちゃんだと、書きました。

 でも、登場人物のユリシアは、愛菜ちゃんより、長門有希に近いですから、

 ここらで、実体モデルに近づけて・・・と言うより・・・

 天下の「松潤」を、失恋させたまま終わってしまって、良いものかどうか。

 さあは、大野君のファンだよ。icon22kao_19icon06

 でも、だからって、松潤はどうでもいい、って訳じゃない。

 5人平等に、幸せになって欲しいんだ。

 だから、ちゃんと、ジャドゥビスも、ユリシアの面影を宿したお相手に、

 くっつけておきます。kao_10では次回、ホントの最終回。どうぞお楽しみに。

 iconN08今日もお越し下さって、ありがとうございました。iconN08

 



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(2)ファンタジー
この記事へのコメント
さあちゃん、

うまいね、実にうまい、
イイ、菓子パンじゃなくて美しい終わり方だ、
そうそう、だから「風の歌」何だか、嬉しい題名でした携帯で時折、読ませてもらって読み逃げして‥でも27日で真のオワリ、
ちょっと淋しさを隠しておけません。
お疲れさまでした。
Posted by 風 at 2013年10月27日 20:27
Dear 風さん
 実はね、この題名には、意味があるんです。
もう少し、考えがまとまったら、また、作文しますから。
 本当は、書き足りない所もあったけど、構成上、一応終わる事にします。
お読みいただいて、ありがとうございました。
Posted by さあちゃんさあちゃん at 2013年10月28日 18:16
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