2013年09月15日

風の歌 393



    The Song of Wind (393)

 四本の螺旋階段は、四重螺旋を描きながら、黄金の床から、

下へ向かって伸びている。しかも、唯の螺旋階段ではない。

 一つは、黄金の床からそのままに、金色に光り輝く物。

 一つは、神秘的な紫玉石を、黄金の上に張り詰め、

 美しく輝くよう、細かい線刻を裏側に施してある。

 もう一つは、翠緑石を同じように、黄金を下地に、

敷き詰めたものである。もともと、半透明な石なので、

 輝きはやや劣るが、澄んだ緑の深い色合いは、

最上質のものばかりを集めた事が、一目で知れる。

 最後の一つは、眩いばかりに、水鋼玉を敷き詰めた、

目の眩むような階段である。

 これを足で踏むなどと言う事が、許されるのだろうか、と、

疑念が湧いて来る程の、まったく、空恐ろしい代物・・・

 「凄まじい財宝だ。この一段分だけでも、

  王宮を建て直せるくらいだ・・・」

 ハズリックの呟きも、虚しいほどだった。

 上から、成り行きを見守る、御付きの人々も、

溜め息以外、声も出せない。

 だが、セヴィリスとトゥモーロスは、宝石の価値や、

美しい輝きには目もくれず、四つの階段を仔細に調べ、

見比べて、仕掛けやからくりの有無を、確かめようとした。

 「多分、どれか一つしか、降りられない・・・

  一つを降り始めると、後の、三箇所の亀裂が閉じる。」

 「当然の仕掛けだ。四箇所同時に、四人が降りたら・・・」

 「半歩でも遅れた者は・・・犠牲となる・・・」

 それは、想像もしたくない、おぞましい光景だった。

 「それで、真っ先に進んだものが、間違っていたら、

  その者も、百目獅子の犠牲となる訳だ。」

 「奇跡的に、二本、乃至、三本、四本の階段を、同時に

  降り切る事ができたとしても、三本の間違った階段を

  踏んだ事には違いない。黄金の牢獄が開いた時は、

  百目獅子の牙に掛かる時だ。」

 ソルダムは、二人の思案に、じっと耳を傾けていたが、

ふと、口を開いた。

 「黄金、紫玉石、翠緑石、水鋼玉・・・もしかして、

  これは、『ジルコニアスの世継ぎ選考の謎』では?」

 二人は、傾げた首を、立てる事をしなかった。

 それは、分かっている事だったからだ。

 ・・・ジルコニアス王には、四人の養い子がいた。

  王が年老いた時、四人を呼び集め、四つの箱を示して、

  好きな物を取らせた。

  その箱には、一つには蔵の鍵。一つには神殿の鍵。

  一つは空で、一つには、毒の薬瓶が入っていたと言う。

  どれに何が入っていたか、誰がどれを選んだか、

  どれが正解だったかは、謎のままであるが、箱は四つ。

  金色の箱、水鋼玉をちりばめた箱、緑の箱と紫の箱。

  その中から、正しい物を選んだアルカスが、

  次代王となったのである。

 「毒薬が正解だったとは、考えられないし、神殿の鍵は、

  神殿長となるよう、勧められたと言う事だろう。

  蔵の鍵は、いかにもそれらしいが、カラと言うのも、

  意味深い・・・」

 「どちらにしても、何色の箱に、何が入っていたのかが、

  分からなくては・・・四つの箱と、四つの階段・・・」

 ソルダムは、セヴィリスの目を見つめて言った。

 「知っているんだろう?解答を・・・
 
  八十八問、全て解いて、記憶しているのだろう?

  世継ぎのアルカスの、選んだ箱が、正解の階段の色を

  表すはずと思うが?・・・どうだ?」

 セヴィリスの表情は、困惑と焦りが、綯い交ぜだ。

 「僕の出した答えが、正解かどうか分からない。

  数学や図形の答えでもなく、歴史や地図の上に、

  答えが、現れているものでもない。

  恐らく、こうであろうと思う答えだ・・・

  正解を、確かめるすべがないんだ。」

                   続く


 すみませんiconN04kao_6iconN04

 前書きなし、画像なしですiconN04icon11kao_18icon11iconN04

 半日かそこらの事に、何回費やすんだろう・・・もっと話の展開を早くしたい・・・

  でも、こう言うシーンを、解説文ですっ飛ばしたら、

 それは、ただのレポートでしょiconN05icon07iconN05

 もう暫くご辛抱下さい。第一章で、シシィは、何をソルダムに渡そうとしたのか・・・ダイヤ

 ケルビンが、なぜ、頑強にシシィを連れ帰りたがってるのかiconN05

 なぜ、西の国に生まれ育ったシシィが、ラゥオールフィアの古歌を知ってるのかiconN05

 ケルビンの家にある、南国風貝殻模様の茶器は、どんな謂れがあるのかiconN05

 オリザ姫がジャドゥビスに、自分の祖母の話をしかけた時、

 なぜケルビンは、遮ったのかiconN05もうすぐ全部、分かるからね~~~iconN04iconN04iconN04

  気になる方は、第一章からお読み下さいicon06kao_11icon06ではまた次回。

 今日もお越し下さって、ありがとうございましたiconN10kao_10iconN10



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Posted by さあちゃん at 00:36│Comments(0)ファンタジー
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