ぶるんねん文庫

　だから、植えたらダメだって

　同じものを大量に植えると、

　いっぺんに実って、

　絶対食べ切れなくなるって。

　言ったのに！！

　誰が食べるの！

　親戚も誰も食べない。

　まるねこも食べない。

　オヤジも食べ飽きた。

　もったいない！！！


　　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（３８９）

　「『大地は、天空の鏡。写されし影を求めよ。』

　　灰色の階段の通路・・・記憶の回廊で、

　　ジルコニアスは、確かにそう言った。

　　・・・それから、もう一つ・・・」

　ソルダムは、必死に、記憶の糸を手繰った。

　「そうだ。『百目獅子の右前足』・・・

　　確か、そう聞こえた。」

　途端に、セヴィリスは、ばたっと立ち上がり、

ペルピテス山脈周辺の地図を、取り出した。

　「『天に右向き、地に左向き。』獅子の星座は、右向きで

　　立ち上がり、右前足を上げた図柄で表される。

　　ドレイオンの城跡を、この前足の先端として、

　　星座に含まれる星の配置を、左右反転して、

　　地図上に配置すると・・・」

　セヴィリスは、山頂のいくつかを、線で結んだ。

　数多い山の頂の内、ドレイオン周辺の山頂、全てが、

ぴたりと、反転した星座図に収まった。

　「・・・偶然？」

　「恐らく・・・ここまでは偶然だろう。

　　ジルコニアスは、この偶然に気付き、財宝の隠し場所の、

　　暗号に使う事を、思いついたのに違いない。

　　・・・右前足は、ドレイオン。百目獅子の急所は、

　　建国神話では、『のどぼとけの目』とされる。

　　だが、そこを狙っても、獅子の牙を逃れる事は出来ず、

　　結局、噛み殺されてしまう事になっている。

　　星座の『獅子ののどぼとけ』は、イラノス山。

　　この山の周辺では、昔から、数多くの冒険者が、事実、

　　未知の獣に、噛み殺されている。・・・もしかしたら、

　　謎を最後まで解かない、欲深者を、懲らしめるような、

　　仕掛けが、施されているのではないだろうか・・・

　　だから、謎解きが必要なんだ。・・・右前足・・・右手・・・

　　そうだ！『獲物が腐った。そなたの右手は何をする？』

　　答えは単純、『鼻をつまむ』だ。別に右手じゃなくても、

　　左手だって、構わないはずなのに、変な謎だと思った。

　　獅子の鼻が、本当の財宝の在り処なんだ！」

　ソルダムとトゥモーロスは、唖然とした、と言っていい。

　そんなに単純な考えで、いいのか？と、疑念が湧く。

　だが翌朝、ソルダム達は、「左向きの獅子の鼻」の、

カピュス山目指して、出発する事になった。

　ハズリックが、夜明け前から、村の長老を無理に起こし、

出発に間に合うよう、聞き取り調査をして来たのだ。

　見かけに拠らず、山歩きは達者らしい。

　案内に立つ村の樵からも、次々、情報を仕入れながら、

皆の先頭を、さっさと歩き始めた。

　山としては、高いものではない。稜線もなだらかだ。

　山頂近くに、巨大な岩塊がそそり立っている。

　ドレイオンからでも、良く見える。

　いかにも何かありそうで、幾度も調査の手が入っている。

　が、いずれも空振りであった。山頂に岩のある山。

　ただそれだけだと、考えざるを得なかった。

　程なく、一行は、岩塊の麓に着いた。

　「なるほど、『鼻』なんだ・・・」

　トゥモーロスが、一人ごちた。

　岩塊の下部には、洞穴が二つ開いている。

　「ここは、調査され尽くしています。右は、行き止まり。

　　左は、真っ直ぐ向こうへ抜けています。」

　なるほど、左は穴と言うより、巨大なひび割れである。

　ひびは、岩塊の上部にまで達し、奥には、微かに

向こうからの光が、差し込んでいる。

　右の穴は、自然物か人工物か、定かではない。

　人が立って入れる高さだが、カンテラを灯して入ると、

すぐに行き止まりだ。

　「左の方が、何かありそうかと・・・」

　「いや、右だ。」

　喋りかけたハズリックを制したのは、トゥモーロスだった。

　　　　　　　　　　　　　　　続く

　謎解きは、お風呂の後で

　書き出したら、止まらない。いつもの事です。

　お風呂入ってからでないと、入りそびれるから。

　　ではまた次回。今日も、お越し下さって、ありがとうございました。