2013年07月10日

季節外れで、すみません・・・!!

季節外れで、すみません・・・!! 木の花は白

 はかなげなる薄き花弁は、いとをかし

 また、真白き凛としたるもまたさらでも 

 若葉の蒼に映りて、空に向けて高く咲く 

 また 薄紅 薄紫言うべきにあらず

 淡き色 すべてゆかし

 濃きもまた 幼子のいといけなる

 頬の如くにして、ほほえまし

 花の色 盛りに咲きたる わろしものなし

 枕草子では、ありません。

 さあの作文。・・・いかがでしょう?
 



    The Song of Wind (367)

 シシィの姿は、もはや、豆粒ほどになりつつあった。

 ソルダムが、黒い霧の闇に近付くと、猛烈な勢いで、何もかもを、

穴に引き込もうとする力が、感じられる。

 ユリシアが、悲鳴のような声を上げた。

 「ソルダム!いけない!それ以上、その穴に近付かないで!!

  その中は、人が生身で、生きられる所じゃない!

  そこにはいったら、あなたは死んでしまうわ!!」

 「だが、シシィは中にいる!」

 「それは、シシィの波動・・・霊魂と言うべきかも知れない。

  彼女は、次元の狭間に落ちている!

  ・・・時の、永遠に滞った、異世界の空間に・・・」

 ソルダムは、腕の中のシシィを見た。亡骸に等しく、冷たい体。

 愛を理解せぬ、異世界空間に、魂を抜かれて・・・

 だが、闇を堕ちるシシィの魂に、再び愛が宿っているなら・・・

 「ミラン!王が将軍に命じる!ケルビンとオリザ姫を守り、

  ジャドゥビス、ドリスと共に血路を開き、地上に逃れよ!

  違背ならぬ!!セヴィリス、アルフィーニ、ユリシア、頼むぞ!」

 ソルダムは、命を下すと、黒い卵形の、霧の塊に向き直った。

 「黒い霧よ!そなたが愛を知らぬ事は、よく分かった!

  それは、そなたに愛を教えた者が、いなかったからだ。

  だから、今、教えてやる!!

  五感がなくとも、心はあろう。心の眼を開いて、よく見るがいい!

  これが、我が愛の形だ!!

 叫ぶなり、ソルダムはシシィの亡骸を抱いたまま、

黒い霧の引き込む力に任せて、その中に、身を躍らせた!

                      
 「ソルダム!駄目!行っては駄目!!」

 ユリシアがケルビンの傍らから消え、一瞬後に炎の内側に現れた。

 しかし、闇の引力は、激しい強さで、風の娘を飲み込んだ。

 「キャーーーーッ!!!」

 いつも冷静な風の精霊が、凄まじい悲鳴をあげた。

 その場の誰もが、身も心をも、凍りつかせた。

 アルフィーニは火球を吐き、火焔を断ち割って、ユリシアに続いた。

 幾百万の手が、、全身を所構わず、引き毟ろうとする・・・

そんな、異常な感覚が襲いかかった。

それも、刺々しい、ざらざらの「手」で、である。

 闇へ入る直前、アルフィーニは天馬に変身していた。

 ドラゴンの鱗ある体表面なら、この感覚が軽減されると、

分かってはいるのだが、ただ堕ちるだけでは、追いつけぬ。

 アルフィーニは、鼻面を皺だらけにして、耐えた。

 恐らくソルダムも、同じ苦痛を味わっている筈である。

 「ユリシア!風で私を覆え!!ソルダムが危ない!!」

 アルフィーニは、必死にソルダムとシシィの後を追いかけた。

 青い光点が赤色に変化し、長い尾を引いて、傍らを通り過ぎる。

 程なく、ソルダムの姿が大きくなって来た。


 ソルダムは、驚くべき執念で、シシィに追いついた。

 ソルダムの手が、もう一人のシシィに届くと同時に、

その姿がぼやけ、入れ違いに、ソルダムの腕の中の

シシィが目覚めた。

 「シシィ・・・戻れたか・・・」

 「ソルダム・・・来てくれたん・・・おおきに。

  でも、帰られへん・・・ここから、どないして出るん?」

 ソルダムの思案顔は、暫くだけだった。

 アルフィーニが、追いついて来たのだ。

 だが脱出は、思いの他、大変だった。

 ユリシアは来た道を、風の流れで示していたが、

黒い霧は、己の身の内から、毛一筋、砂粒一つ、

外へ出す気は、なかったのだ。
 
 流れに逆らう飛行は、意に任せぬ。

 力の消耗は、尋常ではない。アルフィーニは、ドラゴンの姿で

二人を乗せ、必死に、風の道標を辿った。

 闇を落ちる光の航跡が、異常さを増し、ドラゴンと背の二人を、

守り続けようとする、風の娘の身が、僅かずつ引きちぎれて、

後ろに、跳び退って行く。

 見えぬ闇の手が、風の道標をも、破壊し去ろうとしていた。

 ユリシアは死に物狂いで、ドラゴンを、来た道へ導いた。

 闇が震えた。

 「アイ・・・アイトハ・・・ナンダ・・・

  ゾウオト、トモニアリナガラ・・・ ゾウオト、ベツノモノ・・・

  ステテモ、アラタニ、ワキダス・・・

  アソコニモ・・・ムコウニモ・・・ソコニモ・・・

  ・・・ココノナカニモ、ワキアガル・・・」

                     続く


 栗本薫さんの、「宇宙的穢れ」が、実際、何を意味していたのか、

 グインサーガが未完の今、誰一人、知る由もないのですが、

 さあの脳味噌の感覚に、引っかかったのが、この、粒子生命体でした。

 これの設定には、実に苦慮しました。

 自分自身を、どういう認識で自覚してるか。

 それは、人間とは相容れない考え方で、

 でも、彼等としては、筋が通っていて、殺人者とか、狂信者とかとは違う、

 正しい道理がある。・・・難しかったです。

 大体、さあは、倫理社会習ってないんだよな。我流哲学。いいのかねぇ・・・iconN05

 ではまた次回。スペードicon12スペード今日もお越し下さって、ありがとうございました。



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(2)ファンタジー
この記事へのコメント
さあちゃん、

さすがのサスガです、
やわらかな感性に、お見事な文章力に打ちのめされます
人のモノする麗しき/言の葉は/酔いしれこそすれ/
羨むのも恥ずかし

ってな心境です(:_;)
Posted by 風 at 2013年07月14日 08:39
Dear 風さん
 いや、あの、これは・・・風さんのブログに、去年入れたコメントを、書き直したものです。
 高校時代の先生(国語)と連絡がつきまして、お読み下さっている事が、判明したので、
せっかく習った古典が、無駄になってない所を、お見せしようと・・・
今でも、春は曙、暗誦できます。この先生のおかげです。
Posted by さあちゃんさあちゃん at 2013年07月17日 01:09
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