ぶるんねん文庫

まる猫シリーズ。
（１）　　　　　　　　　　　　　　　　　（２）

（３）　　　　　　　　　　　　　　　　　（４）

（５）　　　　　　　　　　　　　　　　　（６）

　
　このブログのアクセス数からして、こんな事しても、とは思いますが、

　人気アンケート、取りたいです。（おやばか）

　何番が、よろしいでしょうか。コメントでお願いします。　

　　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（１６３）

　行けども行けども、同じような、灰色の通路が続く。

　ここは、どこなのか。なぜ、自分はこんな所に、いるのか。

　疑問を持ち始めると、正気を保てなくなる。

　ガラノデルムから、山道を、雑な地図一枚を頼りに、

ひたすら歩いた時の事が、思い出される。

　あの時も、行けども行けども、同じような山の景色に、

心が揺らいだ。今は、足場が平らなだけでも、

楽に歩ける・・・

　しかし、それは間違いだった。余りに単調な、作り物の、

平らな道は、次第にソルダムの心を、蝕んで行った。

　　　　　＊　　＊　　＊　　＊　　＊

　ニグは、黒い石の直方体に近寄った。

　その表面は、文字めいた文様で埋め尽くされている。

　青白い小炎に照らし出され、その浅い線刻が、

薄白く浮かび上がる。奇妙な事に、幾筋かは、

小炎に照らされたせいでなく、しらしらと、微かに輝いている。

　線刻の輝きは、暫しで収まった。

　ニグは、ソルダムから奪った大剣を担ぎ直した。

　小男のニグにとって、その大剣は、実際には、

振りかぶる事のできない、大きさと重量だった。

　それを、小柄な己の身に沿わそうとしてかざし、

ニグは、はっと息を飲んだ。

　黄金作りの柄の中央が、空であった。嵌っている筈の、

薄青い大粒の宝石、「サフィールの涙」が、無くなっている。

　ニグは、慌てて炎を増やし、周りを見回したが、室内には、

塵一つ落ちてない。ニグは、ギリリと歯噛みした。

　その時、扉が激しく叩かれた。ドリスの騒ぐ声がする。

　「ソルダム！どうしたの？！開けて！

　　なぜ鍵なんか・・・？何かあったの？！

　　・・・ソルダム！！」

　ニグは、急いで小炎を消し、暗闇の中で、

己の身を、黒い霧の中に、沈めていった。

　神官が鍵を開け、ドリスが駆け込んだ時、

黒い石の部屋は、人影もなく、人の気配も完全に

断たれていたのだった。

　　　　　＊　　＊　　＊　　＊　　＊

　グロリオーサ城を占領した、ルテシア軍は、その後、

後方からの補給もなく、なぜか、孤立している。

　洪水は、引きつつあり、篭城状態は、長くは続かぬ。

　逆に、ナタレンス公の、援軍要請に応えて、

近隣の大貴族や、王国の軍隊が、続々、集結しつつある。

　湖岸の直轄領の港から、出陣した、モーズロードン水軍は、

西の高台のルテシア軍を、昼間のうちに、制圧し終えていた。

　城に残るルテシア兵の命運は、風前の灯である。

　その数、百名余り。

　日差しの傾くのを合図に、モーズロードン王国軍が、

一斉に、四方八方から、船で攻め掛かった。

　我が母城を蹂躙された、ナタレンス公率いる隊が、いち早く、

城に取り付き、勝手知ったる城内へ、雪崩れ込んだ。

　だが、そこには・・・

　狂ったように敵を求めて、獰猛に、だが、からくり仕掛けの

人形の様に、戦い続ける、魔法に操られた、兵士達の姿は、

忽然と消えうせ、一人たりとも、存在しなくなっていた。

　　　　　　　　　　続く

　誰の、どんな行動も、次への布石になってます。気をつけてお読みください。

　アネッサが、宝石を抉り出したシーン。ありましたよね？つまり、こう言う事です。

　サフィール。ドイツ語で、サファイアの事です。そして、さあの誕生石。

　鉱石としてはコランダム

　紅い物をルビー、その他の色は、サファイアと呼ぶ・・・んだそうです。

　だから、薄青いサフィールは、もしかしたら、実在する・・・？かも、ね。

　では、また次回。アンケート、よろしくお願いします。

　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。