2011年12月04日

初冬の青空 ナンテンが赤い

iconN13iconN13初冬の青空 ナンテンが赤い 

 青空にナンテン point_4point_4point_4

 物語は雨と洪水ですが、早く洪水が引くように、

 晴れた空を、載せてみました。tenki_2

 冬の朝。キンと冷えた空気に、耳が痛い。

 でも、ナンテンは、元気な赤です。

 また、今年も、鳥さん達が

 食べに来るんだろうな・・・ハートかめハート

   icon01ハートクラブpoint_4point_4point_4クラブハートicon01



   The Song of Wind (149)

 しとしとと、雨は窓の外に降りしきる。

 柔らかな薄灰色の、朝の光に、目覚めた少女は、

まだ、夢の続きのような仕草で、ベッドに起き上がると、

長い髪を、束ねようとするかの如く、うなじの辺りに、

手をやった。が、その髪は、黒く豊かだが、

短く首の上で、刈り揃えられている。

 少女は、不思議そうに、短くなっている髪の

切り口に触れ、それから、やおら周囲を見回した。

 美しい薄緑に統一された、寝室である。

富豪の娘か、貴族の姫が住まうかのような、

贅沢な調度が並んでいる。

 少女は、特にそれらを、珍しがる様子もなく、

ただ、不思議なからくりや、騙し絵でも見るような、

捉え処の無い目で、眺めるばかりであった。

 急に、少女は慌てたように、絹の布団から滑り降りた。

 何かを、突然思い出したのか、ばたばたと大股に、

部屋を横切り、ドアの方に走ろうとして、長い夜着の裾に

足を取られて転んだ。毛足の長い、絨毯の上である。

 さしたる衝撃はない筈だが、少女は、その絨毯も、

不思議そうに、掌で撫でてみている。

 何もかもが、少女には不思議であるらしい。

 暫く、柔らかい絨毯に、ぼんやりと、座り込んでいたが、

またもや、何かに憑かれた様に、立ち上がり、歩み始める。

 その進む先に、薄紗の天蓋をかけた、巨大なベッドがあった。

 誰かが、その中で、うーん、と、伸び上がりながら、

寝返りを打つのが見える。

 少女は、紗布を掻き分け、ベッドに近付いた。

 一人の青年が、深く眠りについている。

 その顔は、なぜかやつれ、赤味がかった髪も、

酷く乱れている。布団も夜着も、上等の絹物なのに、

全くそぐわない。

 何より似合わぬ事に、その白絹の袖口から出ている、

痩せた両手首に、明らかな捕縄の痕がある。

 少女は、じっと青年の寝顔を見つめた。

 その表情は、それまでの、雨の滴る窓や、

柔らかな絨毯を見る目と、さほど変わらない。

 だが、手首の傷に気付くと、余り動かす事のなかった眉を、

微かに寄せ、跪いて、その関節の目立つ手に、そっと触れた。

 手当てをしてやりたいという思いと、傷に触れる事への

恐れとが、その動きの中に、ない交ぜになっている。

 「いってぇ・・・」

 傷に触れた訳ではないのに、青年は呻き、

またしても寝返りを打つと、薄目を開けた。

 そして、驚いて手を引っ込めたまま、

自分を見つめている少女に気付くと、

 「だれ?」

 と、問いかけた。

 少女は、答えない。何を言われたのか分からぬ、或いは、

言葉と言うものの存在を、知らぬかのようにも見える。

 不思議そうに、その声を聞き、その動く唇を見つめている。

 青年は、起き上がろうと手を突きかけて、傷に気付き、

肘に体重を乗せて、上体を起こした。

 「ここ、どこ?」

 白紗の天蓋に遮られ、全てが、ぼんやりとしか分からない。

 青年は、自らベッドを降り、紗布を撥ね除けた。

 「これは・・・?」

 薄緑色の豪華な一室。一面には、巨大なガラス張りの

テラス窓があり、外には、見たことの無い、

艶やかな濃い緑の植物が、植えられている。

 だが、そこも、他の窓も、見える限りの外は、

ずっと雨模様である。

 駆け寄った窓の下は、高い石壁。周りの景色は、

水浸かりの家々と、辛うじて水を逃れている、丘陵地。

 青年は、ため息をつき、振り返った。

 部屋の真ん中には、困り、戸惑った表情の、

髪の短い少女が、じっと突っ立っている。

 「きみ、名前は?」

 少女は、大きく見張った目で、青年を見返すばかりだ。

 声の出し方も、忘れてしまっているのかも知れない。

 だが、青年には、それほどの洞察力は、無い様だった。

 「僕は、ミラン。ねえ、きみの名前、教えてよ。」

          続く


 どういうシーンiconN05って、こういうシーンです。

 結局アネッサって、私なんだろうな。精神年齢の低い所があって、お人形遊びが好きで、

 そのくせ、割と残酷でkao_12・・・kao_01でないと、創作なんかできませんが。

 死んだり別れたりの、シーン書くのも、だいぶ慣れました。icon22kao_17iconN30

 数年前には、ハムスター一匹、死んだシーンで、落ち込んでましたが。

   では、また次回。icon04iconN11icon04今日もお越し下さって、ありがとうございました。
 
 



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
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