ぶるんねん文庫

　
ブルーベリー・シフォンケーキ

　with　コーヒー

　実は、初めてお金払って、ここで飲食しました。

　確か、初めて来た時は、紙コップだったような、

　記憶がある。

　２００８年夏。まだ、志望固まらぬ娘を連れて、

　美大めぐりすること、４校。

　落ち着いた環境に惹かれて、ここに決め・・・

　もしかして、ケーキに釣られた


　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（１４９）

　翌日、床屋でさっぱりと、男のような髪型にしてしまった、

ドリスをつれて、再び上空に、舞い上がったアルフィーニは、

ローブの切れ端から繋がる、アネッサの波動を

新たに追い始めた。

　ベルバビーノに、アネッサが、表向きに構えている家や、

かつて、アルフィーニとアネッサが戦った、今は無国籍地帯の、

山間部などに、わざとらしい足跡は残されているが、

アネッサ本人は、杳として、行方を眩ましている。

　ドリス達は、ルテシア軍との遭遇を、慎重に避けながら、

調査を続けた。ファーゴの企みは潰えても、ネレイド王に、

矛を収める気がないのでは、迂闊に、ルテシア軍と行き会えば、

斥候部隊と斬り合った、女武者だと追われかねないからだ。

　不思議と、ルテシア軍との遭遇は無い。

　だが、アネッサの思惑通りに、進まされている感が否めない。

　なにもかも、アネッサの画策の様な気が、してくる中、

二人は、旧コーブリオン帝国の、南端国境に辿り着いた。

　この先は、峻厳な高山地帯である。

　ドリスには、「真白き三日月」を渡る、水路の方が

楽なのだが、湖岸の小さな港町は、ルテシア軍に

押さえられ、近付く事ができない。

　アルフィーニならば、どこでも天馬で、一っ飛びだが、

ルテシア軍の上空は、飛びたくなかった。

　黒い霧を操る者が、どこにいるか、分からないからだ。

　だが、高山を飛び越すなら、ドリスは、空気の薄さと低温を、

覚悟せねばならない。

　「大丈夫よ。一時の事でしょう？」

　故郷を旅立つのが、晩春の頃だったから、きちんとした、

防寒具を持っていないのだ。

　アルフィーニに注意され、人里で毛皮など手に入れるのに、

半日掛かってしまい、山越えは、気温の高い翌昼に、と、

またしても、野宿になった晩の事だった。

　ドリスは、焚き火に枯れ枝をくべながら、この数日、

考えていた事を、話し始めた。

　「ねえ、アルフィーニ。山を越えると、モーズロードンの、

　　ナタレンス地方だけど、私、思い出したの。

　　アネッサが私を、催眠にかけようとして、言った言葉。

　　『翡翠の城に住まわせ』って。それから、

　　『南の城』に、ミランがいるような事も、言ってた。

　　ナタレンス公爵の城は、グロリオーサ城と言って、

　　翡翠で出来てる訳じゃないけど、豊かな田園と、

　　湖水とに恵まれて、いい季節には、白い城の壁に、

　　緑が映って、翡翠色に見えるというの。

　　それに、『翡翠の間』と言うのが、城内にあるらしい。

　　方向も、確かに南だし。ミランは、グロリオーサ城に、

　　連れて行かれたんじゃ、ないかしら。」

　「そうか・・・そう言えば、そんな事も言ってたな。」

　「だから、山越えしたら、まず、ナタレンスに

　　向かって欲しい。私は、モーズロードンに入れば、

　　土地勘がある。案内できるから。」

　「わかった。行き先の目星が付いて、安心した。

　　とにかく休もう。いつもの様に、結界を張るから、

　　よく眠っておいて。」

　どんよりと、雲の低い夜だった。

　夜中に、一雨来るかも知れぬと、黒馬と少女は、

早めに眠り、翌朝、雨に遭わずに済んだ、と、

目覚めたのは、アルフィーニ一人だった。

　「ドリス！！どこへ行った！！」

　慌てて探し回る、アルフィーニが見つけたのは、

一抱えほどの枯れ枝を、撒き散らしたような跡だった。

　結界の外である。常人のドリスが、どうやって、

魔法の結界から出られたのか。アルフィーニは、ドリスと

出会った時の事を、思い出した。

　・・・あの時、ドリスとジャドゥビスは、

　　ケルビンの結界を、破って入ってきた。

　　ドリス達には、魔法の結界がきかないんだ・・・

　焚き火の薪を足そうと、ドリスは、アルフィーニの結界を

出てしまい、待ち構えていた、アネッサに攫われたのだ。

　「アネッサめ！！」

　黒馬は、瞬く間に翼ある天馬となり、上空へと飛び立った。

　高山地帯は、濃い雲に覆われ、時折、雷鳴が煌めいている。

　　　　　　　　　　続く

　ああ、よかった。繋がった。一時どうなるかと・・・　

　雨のナタレンス。洪水に遭ったグロリオーサ城。水の漬いた石牢にいるのは・・・

　いい予告編でしょ？忘れた？そんな可哀想な・・・１０月２日１２２回で、ちゃんと出てます。

　　では、また次回。今日もお越しくださって、ありがとうございました。