ぶるんねん文庫

　
　こごまは、ウチのオヤジの

　毛布がお気に入りらしく、

　茶色の毛布をもふもふして、

　遊ぶんだそうな。

　もふもふシーンを、撮りに言ったら、

　いいトコだったのに、とばかりの

　迷惑顔・・・やってりゃいいのに。

　それにしても、茶色毛布上の茶斑猫。

　保護色だね。　


　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（１２７）

　十重二十重の城壁に取り巻かれた、巨城、太陽宮。
　
　ある所は同心円状に、また、ある所は螺旋状に、

城壁同士は、接近し、また離れて空間を作る。

　そこに人々は、日々、暮らしを立てている。

　一見、否、住民達でさえこれらは、無秩序、無計画に、

歴代の王侯が、気の向くままに作らせた物と、信じて

疑いもしないのだが、いざ、太陽宮に侵入しようと企む者は、

この城壁が、存外、綿密な計画性と、堅固な目的を持って、

築かれている事を、思い知るのであった。

　それほど、近づき難い城ではあるが、今回の標的は、

城郭の占拠でも、国王その人でもない。

　中の丸に居する、参謀長、ダトゥーラ・ファーゴ唯一人。

　目的のためには、老人や子供にも容赦ない。

　王も王妃も、踏み台とする、その狡猾さ。

　誰もが、今度こそ許すまじと、息巻いていた。


　その夜の空は、薄く靄って、僅かな星が、いつもより

赤味がかった眼差しを、地上に投げかけている。

　その中を悠々と、黄金の鱗を煌めかせて、ドラゴンが飛翔する。

城壁の外輪近い、未明まで人出の絶えぬ、繁華街から、

騒ぎの声が、徐々に、水紋の如く広がって行く。

　アルフィーニは、太陽宮の遥か上空を、揺蕩う様に、

飛び続ける。その胴体に、ぴったりと寄り添うように、

ケルビンが飛行している。勿論、気配は、魔法で消している。

　アルフィーニも、城の櫓から、ボウガンで狙われるほど、

低くは飛ばぬ。実は既に、天馬で気配を消し、女宮の中庭に、

ジャドゥビスを、降ろして来ているのである。

　ジャドゥビスは、中庭中に点在する彫刻伝いに、

建物に近づいた。常夜灯の灯る部屋があった。

　耳を澄ますと、かなり苛立った男の声がする。

　大国の女宮にもかかわらず、である。

　「何故、見つからぬ！本当によく探したのか！？」

　「はい。衣類全て。裏も、縫い目も調べました。

　　髪も、梳いてやると言って、調べましたが、

　　何も、ございませぬ。」

　「体は？」

　「湯浴みさせました。異常ござりませぬ。」

　どうやら、ミリカが、マヤリス妃の手紙を出さぬので、

ファーゴが、侍女に命じて、湯浴みや着替えと称して、

身体検査をさせたらしい。が、手紙は無いと言う。

　・・・どこかへ落としたのかな？・・・

　どのみち、既に読み解き、それに従って、立てた計画の下、

ジャドゥビス達は、動き始めているのだ。

　手紙本体の有無は、最早、重要でなくなっている。

　バン、と言う、激しいドアの音と共に、部屋は暗くなった。

　ジャドゥビスは、夜中でも人の出入りがあると、

サーヴェンが教えてくれた、下女達の出入り口へ向かった。

　サーヴェンが、女宮の内部に詳しい事を、ファーゴは

把握していないらしい。

　罠かと思うほど、ドアは、開けっ広げである。

　下働きの女中の溜まり場は、夜中と言うのに、

煌々と灯がつき、姦しい喋り声が、響き回っている。

　宿直（とのい）の女官の用や、不寝番の夜食など、

それなりの仕事があるのだろう。

　おかげで、ジャドゥビスは、何の苦労も無く、

建物内に、侵入を果たしたのであった。

　
　一方、地上を歩くオリザ姫とシシィより、一足早く、

離宮に着いたセヴィリスは、落雷で焼け落ちた、

屋根の破れ目から、易々と、建物内部に潜入した。

　守備兵は、城門を守るばかりで、王妃の棺が、

置かれたままの建物を、気味悪がって、顧みようとはしない。

　何とか棺を運び出そうと、幾度か、役人や人足が訪れたが、

その度に、また雷雲が湧き上がったり、棺の重さが増して、

持ち上がらなくなったり、運び手が急病に倒れたりして、

　未だに、そのままになっているのだ。

　今夜も、時ならぬ濃霧が、離宮の周辺を包み込み始めた。

　守備兵は加勢を頼んだり、灯を増やしたりと、

立ち騒ぐに違いない。

　その隙をついて、オリザ姫達が、城門を突破する筈であった。

　急がねばならない。セヴィリスは、動き始めた。

　濃霧は、ユリシアの仕業であったのだ。

　　　　　　　　　　続く

　意外と、ファーゴは、短気ですね。この短気が、決戦にどう響くか・・・

　　　　　　　　　　　　

　では、また次回。（今日は、これだけ）今日も、お越し下さって、ありがとうございました。