2011年10月01日

風の歌 121

風の歌 121 早いもので、もうこんな季節・・・

 秋です。物語りも、秋に入ります。

 icon06Love Loveicon06の秋です。

 ハートスペードカップル1個、成立iconN04iconN04スペードハート

 誰と誰かってiconN06kao_16

iconN36kao_13icon12 読んで貰えばわかります。

 ちょっと長いけど・・・kao_01

 見当付いてますかkao_16iconN05

 そう言わずに、読んで下さいってクラブkao_10クラブ
 
 では、スタートiconN04iconN04icon16icon16


   The  Song  of  Wind  (121)

 確かに、三枚目には、ユーディスと共に読むようにと、

書かれていた。恐らく、シドも混乱し、途中で書き足したのだろう。

 どの道、二人共に、関わりある内容だ。 

 バルツァード国内数箇所で、国家復興のための、臨時増税に対し、

反旗を翻した民衆が、十箇所以上で同時蜂起し、内乱となっている。

 その影響が、自国に波及する事を、懸念したネレイド王が、

ルテシア西部で、徴兵した軍を、国王不在のバルツァードに送り、

これを鎮圧させる、と言うのだが、新たな部隊を率いる、

大隊長が、マチアス・メイガンだと書かれている。

 「マチアスって、・・・あのマチアス?」

 「盗賊扱いされていたのでは、無かったのか?」

 オリザ姫とユリシア、ジュノス老夫妻も加わり、

広からぬ居間は、騒然となった。

 その中で、ユーディスが、シドの便りを熟読する間、

ソルダムは、じっと頭を抱えて、椅子に蹲っていた。

 ユーディスは読み終わると、静かにソルダムに歩み寄った。

 「どうなさいますか?これから・・・」

 しばしの間があった。

 ソルダムは、頭から手を離したが、顔を上げる事はできなかった。

 しかし、そのままではあったが、はっきりと言った。

 「日没までに、ヘリアンタを出る。ユーディス、来てくれるか?」

 「畏まりました。では、準備を。」

 ジュノス夫妻が、弾かれた様に、居間を出た。

 オリザ姫は、目を見開き、言葉も無い。

 ジャドゥビスが食い下がった。

 「ここまで来て、怪異の探索から、抜けるのか?

  母上はどうする?目と鼻の先に、居られると言うのに?

  それに、セヴィリスもケルビンもいない。ドリスもだ。

  私一人では、皆に何かあったら、どうすればいいのだ?

  せめて、セヴィリスが戻るまで・・・」

 「ジャドゥビス!」

 ソルダムが、顔を上げた。非常な決意を秘めた目に、

射抜かれ、ジャドゥビスは口を噤んだ。

 「わかっている・・・わかっているんだ・・・

  できるなら、この身を裂きたい・・・

  だが、もう、逃げてはならぬ。その時が来たんだ。

  今また逃げたら、バルツァードは滅びる。」

 シシィが駆け寄り、ソルダムの膝元に取り縋った。

 「せやかて、今すぐなんて・・・明日の朝では、アカンの?」

 「だめだ。今日でも、サイスの関所が、通れるかどうか・・・」

 「ほんなら、ウチも行く!連れてって!!」

 「それもだめだ。もし止められたら、押し通る事になる。

  危険すぎる。シシィ、僕の行く先は、まったくの戦場だ。

  今までの、魔法の飛び交う、怪異相手の戦いではない。

  弓矢と刀で、戦う戦だ。それに、ユリシア・・・

  彼女は、オリザ姫の傍に、いなければならない。

  つまり君も、オリザ姫から離れる訳に、いかない。」

 ソルダムは、言葉に詰まったシシィを、そっと退かすと、

立ち上がった。居並ぶ人々の間に、小さなミリカの姿があった。

 「ミリカ、君には、本当にすまないことをしている。

  助けたとは、言葉の上だけ。人手に次々預け回して、

  私は、何も責任を果たしていない。

  今もまた、君をおいて、行かねばならなくなった。

  おじい様を助けられなかった、埋め合わせもせぬうちに・・・」

 「王様、あたしは、大丈夫。それに、おじいちゃんは、

  しかたなかったの。王様のせいじゃないのよ。

  あの時、最初の大きな地震で、家がつぶれかかったの。

  パパとママが、早く逃げようって言うのに、

  おじいちゃんは、大事な宝物を取りに、倉庫の地下に、

  みんなで止めたのに、無理に入っちゃったの。

  次の地震で、倉庫も家も壊れた時、おじいちゃんは、

  自分が悪かった、欲張ったばかりに、ひどいことになったって、

  瓦礫の中から、そう言ったわ。一人ででも、逃げなさいって。

  だから、王様のせいじゃない。王様は、悪くないのよ。」

  ソルダムは無言で、ただ、ミリカを抱きしめた。

 「あたしは、平気。ここで、王様か、おばあさまが来るまで、

  お利口にしてるから、心配しないで。」

 ミリカは、また、よく知らぬ人達と、しばらく暮らさなければ

ならない心細さで、言葉とは裏腹に、泣き声になっていた。

 春から、アルナスおばあさま、ユーディス、トニー、シドと、

他人の手から手へ、その身の保護のためとは言え、

どれほど、たらい回しにされて来た事か。

 それを思うと、手厚い親の庇護の下で育った、シシィや

ジャドゥビス、オリザ姫などは、何も言えなかった。

 「じゃあ、ミリカ、このおうちで、もうしばらく待ってて。

  シシィも・・・」

 ソルダムは、うなだれてしまっている、シシィに言った。

 「待っていてくれ。必ず戻って来るから。」

 「陛下、お支度が整いました。」

 ユーディスが、知らせに来た。

 シシィは、ソルダムに駆け寄りかけていたが、立ち止まった。

 馴染み薄い人達の前で、露わに別れを惜しむのは、

やはり恥ずかしかった。

 そのシシィに、ミリカの手を引いたまま、ソルダムの方が近付いた。

 ミリカが、気を利かせて、そっと手を離す。

 ソルダムの腕が、シシィの背に回った。

 母より力強く、今まで知る誰のものより、優しい抱擁だった。

 「戻って来る。必ず。そして、その次の時には、必ず、

  一緒に連れて帰る。バルツァードへ、一緒に・・・」

 もう、充分だった。

 「わかった。待ってる。せやから、もう行かんと・・・
 
  早よせんと、また、関所が・・・」

 シシィは、自分から離れ、ソルダムをユーディスの方へ、

押しやった。ソルダムは、振り返らなかった。

 「行こう。バルツァードへ、帰るんだ。」

            続く


 まさか、ここで、icon06告白シーンicon06が出て来るとは、作者の私も、考えてなかった。face08kao_01face08

 でも、この二人は、予定通りだったから、まあ、いいです。icon12ハートicon12

 クラブダイヤ他のカップルダイヤクラブが、予定通り行かなかったら、どうしよう・・・kao12kao_16kao12

   では、また、次回・・・iconN11iconN09iconN11今日も、お越し下さって、ありがとうございました。



同じカテゴリー(ファンタジー)の記事画像
脱・0円ファン宣言!!!
大好きなのは、タロットカードの話
なんだかへんだな・・・
あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!!
鍵の掛かった部屋SP!?!
風の歌 410 ・・・最終回、そして次にやる事・・・
同じカテゴリー(ファンタジー)の記事
 脱・0円ファン宣言!!! (2017-07-16 13:33)
 大好きなのは、タロットカードの話 (2016-09-05 01:58)
 なんだかへんだな・・・ (2015-12-07 11:58)
 付け足し・・・Quarandolleってなんだ? (2015-09-09 09:21)
 ふしぎちゃん女子 (2014-02-19 00:01)
 あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!! (2014-01-18 00:00)

Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。