ぶるんねん文庫

　
　　　　　

　第二章前半が、前回、終わりまして、いよいよ、中盤です。

　すっごく、うれしいお知らせが、届きました。

　ギネス記録保持者の、寺村邦子先生が、お読み下さっている事が、判明しました。

　実は、うちのこごまの、里親さんです。

　読者は、これで、ひぃふぅみぃよぅ、５人くらいか・・・まあ、こんなもんでしょ。ね


　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（８８）

　一夜明けて、館の散々たる様に、シドの気落ちは、

見る者の同情を買わずに、居れぬほどだった。

　医術の心得のある、セヴィリスや、捕縄の憂き目に

遭ったにも関わらず、一人気を吐いて頑張る、妻と、

それを健気に手伝う、少女達がいなかったら、

立ち上がることも、出来なかったのだ。

　だが、最悪の事態を防いだのは、奥方の機転と、

無力かと思われた、オリザ姫の力の、開眼であって、

シドのせいでは、全く無い。

　もしこれが、ファーゴの癇に障って、ヘリアンタの、

シドの祖父母に、何かあったとしたら、その時こそ、

ネレイド王に、直訴する口実が、出来てしまうだろう。

　ファーゴは、そこで血迷うほど、馬鹿ではない。

　シドは、自分にそう言い聞かせて、必死に不安を、押し隠した。

　幸い、死者は出ておらぬ。シドは、村人達には、

「伝説の、コーブリオンの赤い魔女」が、大隠者ダルトンを

狙って襲撃したと、言い繕う事にした。

　この魔女は、物語によると、蜘蛛使いであるから、

内容的には、うってつけであった。

　本当の事は、ソルダム達一行以外、妻にも話せぬ秘密である。

　そして、ソルダム達は、まもなく旅立つのだ。


　天馬のアルフィーニは、昨日戻って来た。

　ダルトンは、通いの弟子の、世話になっているらしい。

　短い手紙を持ち帰り、天馬はロバに変じて、

今日は、馬小屋を借りて、休んでいる。

　明日には、出かけねばならない。

　オリザ姫の、三人の叔母達を連れ去った、黒い霧と、

ファーゴが関わった、大化け蜘蛛襲撃の際に現れた、

黒い霧は、間違いなく、同一のものであった。

　敵は、大都ヘリアンタの、太陽宮を実質、牛耳っている、

参謀長ダトゥーラ・ファーゴ。

　だが、その前に、行かねばならぬ所ができた。

　・・・九峯聖堂。神と人の領域の境をなす、白亜の聖堂。

　そこに十人目の星がいる。ダルトンは、そう言い残した。

　ダルトンは、自分は、十人目でないことを、知りながら、

　そう有ろうとし、適わず、倒れた。

　必要なのは、真実の十人目。

　「では、タンベルディ村の、お母上には、

　　お会いになりに、行かれませんか。」

　シドは、気の毒そうに、眉根を寄せた。

　ここネルンブ村から、北へ一日の距離である。

　館の後片付けなど放って、出かければよかったのだが、

ソルダムは、まだ会えぬと、頑なに言う。


　「では、お気をつけて・・・」

　人知で計れぬ敵に、向かうのだ。決まり言葉も空しい。

　出発の朝が来る。黒馬のアルフィーニの背に、オリザ姫。

　後は、全員徒歩の旅路である。少し気が楽なのは、

シドが書いてくれた、一人ずつの通行証がある事だ。

　一行はまず、ダルトンの最後の言葉を守って、聖域を目指し、

険しい山並みを、南へ向かって、分け入って行った。


　村の外れまで、一行を見送ったシドは、そのまま暫く、

騎乗で、早朝の集落の様子を、見て回った。

　どの家々も、炊ぎの煙を上げ、豊かな様子が見て取れる。

　道行くものは、シドに気付くと、帽子を取り、会釈する。

　にこやかに、それに手を上げて答える、シドの馬前に、

突然、転がるように、走り出た者がある。

　タンベルディ村で、ソルダムの母と、暮らしているはずの、

ミリカ・ルーブラだった。靴も無く、巻き毛を乱し、泥まみれだ。

　「ミリカ！どうした？」

　「シドさん、助けて！！おばあさまとトニーが、

　　連れて行かれちゃったの。テオとマチアスが、怒って、

　　おうちに乗り込んで来て、二人とも縛って

　　引っ張ってっちゃったの！！」　　　　　　　　　　

　　　　　　　続く

　なんで、娘の絵を出すか

　できちゃったんです。長襦袢・・・

　時間が空いたので、それって気合入れて、

　急いでおくみ付け、袖付け、衿付け。

　あっ、と思ったら、

　シャシンを撮ってなかった。

　袷なので、できあがったら、

　もう縫い目は、外には見えません。

　そんな訳で、突然の「終わり」です。

　本当に申し訳ありません。

　　　では、また、次回・・・

　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました