ぶるんねん文庫

　おかきの箱一杯の、色糸。

　あと、絹手縫い糸もあるから、色数はすごい。

　それでも、丁度の色が無くて、また別の色を買ったり・・・

　手芸専門の方なら、もっとお持ちでしょうけど、

　趣味にしては、多すぎるのかな？


　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（６６）

　「ジャドゥビス、父上に、手紙を書いてくれないか。

　　ラゥオール城は、水妖魔王の支配から、

　　脱したと思われる。

　　代理統治の必要性について、ご再考頂きたいと。」

　「わかった。・・・それで？」

　「それを、シシィに届けさせる。使いの者だと、

　　身分を、証し立てる物が要るな・・・」

　「ちょっと、待ってぇな！」

　シシィが喚いた。

　「ジャドゥビスのパパは、御座船に戻るって、

　　言うたはったでぇ。ほしたら、ウチが、

　　港まで行って来る間に、皆、何してるん？」

　「どの道、アルフィーニには、二人しか乗れない。

　　墓陵島へ行くのに、誰かが残らねばならないんだ。

　　シシィは、モンティエ公のもとで、待機してなさい。

　　何なら、お帰りになる時、一緒に連れ行って貰うといい。

　　公都フェティエまで、連れて帰って貰えば、

　　コパロスまでが、近くなるからな。」

　「じゃあ、そう書き添えて・・・」

　ケルビンとジャドゥビスが、勝手に自分の帰国を、

検討しているのである。シシィは、真っ赤になって怒り出した。

　「冗談や無いわ！王女様達が、三つ首犬になったんを、

　　元に戻すのに、ウチが歌を、歌わんならんのやろ？

　　せやのに、ウチをのけモンにして、どないする気なん？

　　断っとくけど、この人、音痴やでぇ」

　シシィの指は、真っ直ぐにミランを指している。

　「音痴じゃないわい！あんまり高い声とか、低い声とかが

　　出ないだけだわい！！」

　「それかて、音痴の一種やわ。

　　大体、手紙なんか、まだるこしい。

　　ジャドゥビスが、自分で行って、言うたらええやん。

　　その顔やもん。証明なんか要らんわ。

　　どこでも『顔パス』やん。」

　「だよね。シシィじゃ、追っ払われちゃうかも。

　　小っちゃい子の来る所じゃない、とか言われて。」

　言われたい放題のミランが、やっと、一矢を報いた。

　「それにさぁ、自分トコの船、あるんでしょ。

　　大っきいやつ。だから、船で来なよ。

　　そしたら、帰り、オリザ姫も、王様とかドリスも、

　　乗せて、帰れるじゃん。」

　妙案だった。

　最終決戦場所は、ここ地下の洞窟墓地と、踏んでいたため、

オリザ姫は、島からこの地下通路で、城に戻る計画だったのだ。

　しかし本当に、水妖魔王が、死ぬか消えるかしたなら、

足弱な王女に、暗闇の通路を、歩かせる必要はない。

　ケルビンが、仕方なさそうにうなずいた。

　数刻後、モンティエ公の船は、出港準備を始め、

上空には、曇天の雲をついて飛ぶ、ケルビンと、

ミランとシシィを乗せた、ドラゴンのアルフィーニがいた。

　今までと打って変わって、黙って前方を見つめるシシィを、

ミランは、堪えきれずにからかった。

　「よかったね。これで、ちょっとでも早く、

　　ソルダムに会えるよ。」

　シシィは、キッとなって、ミランに向き直った。

　「なにそれ。恋人みたいに言わんとって。」

　「でも、会いたかったんだろ？

　　島へ、連れてかないって、言われた時、

　　必死に、食い下がってたじゃん。

　　このまま会えずに、家へ送り返されるって、

　　思って、さ。」

　シシィの頬に、血が昇って来た。しかし幸い、暗くて、

誰にも見えそうにない。

　・・・ええ人やけど、ウチには偉過ぎるわ。王様なんて・・・

　「シシィ？どう？うれしい？」

　「アホ！ちょっと黙っとって！！

　　三つ首犬に、どんな歌、歌うか考えてんねん。」

　墓陵島は、もう眼下に迫って来ていた。

　　　　　　　　　続く

　前回、気付いたら、滅茶苦茶長くなってました。

　だから、やや短くしました。それでも、長いけど。

　本気で読んで下さってる方が、もしいらしたら、

　「長くて読めない」のは、申し訳ないと、思います。

　「いいよ。誰も読まなくても、フン」って、思うのは、簡単だけど、

それじゃ、「ノート小説」を、書いてた時と、一緒だし。

　だらだらさせないのも、テクニックだと思います。

　初回より、巧くなってるならいいけど、文の質が落ちて、

文体がブレるのは、いけないと思うし。

　　　　　では、また次回。　　　　　

　　　　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。