ぶるんねん文庫

　
　意外と、強い花です。

　１３輪・・・全開


　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（６２）

　夜の深まりと共に、見張りは、明らかにだらけて来た。

　墓陵島は、もともと無人島である。かつては、海賊等も

いたのだが、本島からも、大陸からも近すぎたため、

掃討されて久しい。

　今は、外洋への備えの、拠点になっている。

　そこを、王達の墓所にしたのは、王たるものは、

死しても、国防の要であるべきとの、考え方らしい。

　実際は、墓守の名目で、多数の駐留兵を置く、

口実になっている。

　だが、いかに大灯台が、重要な場所であったにせよ、

もはや残骸としか、言いようの無い物の、見張りである。　

　石材泥棒とて、この孤島からでは、何程も持ち出せまい。

　配置された二名は、うつらうつらと、居眠りをしている。

　ソルダムは、オリザ姫とドリスを、瓦礫の陰に隠して、

一人、残骸の中央部、地下のありそうな箇所へ、入って見た。

　相当な高さの、建造物を支えるために、強固な大石が

土台に埋め込まれている。それに沿って、分厚い石材を

組み合わせた石室が、左右へ、下へと、続いている。

　まるで、子供の積み木遊びのような、不規則さだ。

　あの、大崩壊のせいで、どの部屋も、天井や壁が崩れ、

ソルダムが入り込んで、調べるのには、好都合だったが、

今一つ、用途不明の空間ばかりである。

　それも、やがて行き止った。もう、下へも横へも、

道は無いようだった。

　ソルダムは、ふと振り返った。

　小さなカンテラの明かりに、瓦礫の影が揺れる。

　その影を、一つ一つ、目で追って確かめて行く。

　今確かに、誰かがいた。背後、間近に気配があった。

一瞬だったが、敵意を剥き出した気配だ。

　殺気と言っていい。

　それが、消えた。今は無い。ソルダムは迷った。

　この瓦礫のどこかにいる、敵を探すべきだろうか。

　しかし、ソルダムは、すぐに瓦礫の山を、登り始めた。

　この限られた空間で、気配しか残さぬのは、常人ではない。

　怪異なら、オリザ姫とドリスに、合流した方がいい。

　最小限の音しか立てぬよう、気をつけて登り、何とか

空を望める所に来ると、早や初夏の夜は、白みかかっている。

　闇が、夜明けに返上されて行く。瞬間、我を忘れて

見入ったソルダムは、急に声を掛けられ、肝を冷やした。

　「ソルダム様、大変です。モーズロードン水軍が、

　　墓陵島に向かっているそうです。私は視認していませんが、

　　兵舎の最上階から、見張りが発見したと言って、

　　大灯台跡地は、兵士が、臨戦態勢に入っています。

　　私達は、いる所がなくなって・・・」

　ドリスの、手短かな報告の間も、オリザ姫は、落ちつかな気に、

後ろを、頻りと気にして、振り返る。

　「姫様は、ソルダム様と離れてから、急に、

　　後ろに誰かいる、見張られている、と仰って・・・

　　ここは、墓場ですから、私も気味悪くなって・・・」

　何かの気配を感じたのは、ソルダム一人ではなかったのだ。

　その時、わあっと、鬨の声をあげて、大人数が駆け出す

地響きが、地下を揺るがした。

　夜明けを待たずに、戦を始めるのか。

　ソルダム達は、大灯台の地下から、出られない。

　遥か上空では、アルフィーニがケルビンからの

知らせを渡すべく、ソルダム達を探して、飛び回っていた。

　　　　　　　　　　続く

　この、２、３年、お風呂で寝ちゃう癖がついて、

　危ないんだけど、つい、うとうと・・・

　今朝は、はっと目覚めたら、夜が明けてました。

　お湯は冷めてるし、指先はふやけてるし。

　今までの最長記録更新。４時間

　でも、本当に危ないから、やめようと思う。

　物語は、やっと動き出しましたね。

　戦争シーンは、いやなんだけど・・・　　

　　　　では、また自戒・・・じゃなくて次回。（頭の悪いパソコンだね！）

　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。