ぶるんねん文庫

　チャリティー個展　：　佐和山小学校の御向かいの「しる万」さんに於て

　森先生の力作です。

　昨年の、芸大説明会に出されていた絵は、これなんです。

　あまりに美しくて、衝撃的で、もう、会う人毎に、

　「森先生の、絵がね・・・」と、吹聴して回ってたら、

　意外にも、お家は、キッチンハウス先生のお家の、すぐ近く。

　キッチンハウス先生も、凄く気に入られてます。　　

　なにより地元だし、実力あるし。

　とにかく、みなさん、一度、ご覧になってください。　

　絶対、「きれいな絵」だと、思って頂ける、自信があります。


　　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（３８）

　人一人分の幅しかない、葬祭殿の、地下からの通路を、

明かりの小炎を灯す、ケルビンを先頭に、ラミアとオリザ姫が

続いて歩き、ジャドゥビスは、最後尾の用心を怠らない。

　ラミアは、妖怪に襲われ、操られ、体内に取り込まれる恐怖を、

歩きながら、ぽつぽつと語った。

　「ある夜の事、黒い靄のような物が、部屋中に立ち込めて、

　　その中から現れた、あの怪物が、こう名乗ったのです。

　　『我は、メルタノスの王、ペンテウス。毒飼いにて暗殺されしが、

　　　死に切らず、生きながら葬られし者なり。

　　　棺より出でて、水妖共の王となりしかど、今の世に、

　　　我が心安らわず、騒がしき者、退治んと出でたり。』

　そうして、私達を操り、この国を妖怪の巣にしようと、

　企んだのです。」

　オリザ姫は、この話に震え上がった。

　「恐ろしい・・・生きながら葬られるなんて・・・

　　どれほど怖い思いをなさった事か・・・」

　「棺の大きさからすると、ペンテウスという王、

　　尋常の体格ではあるまい。毒が足りずに、

　　仮死状態で葬られ、その後蘇ったが、誰も助けず、

　　恨みを呑んで、死霊と成り果てた。その辺だろう。」

　ケルビンは、淡々としている。こういう話に感情移入すると、

危険である事を、熟知しているからだ。だが、ジャドゥビスは、

奇妙な違和感を覚えた。何かが、噛み合っていない気がする。

　それを解明する前に、一行は、さらに狭い螺旋階段に

差し掛かった。一段ずつが高く、オリザ姫は、引き上げて

もらわなくては、上がれない程だった。

　「ここは、大灯台の真下です。もう少しで地上です。」

　その、ラミアの言葉通り、階段は、やがて粗末な、

木製の扉に行き着いた。ケルビンが、扉の向こうの気配を窺う。

　「ドリスとセヴィリスの波動を感じる。が、強さの割りに遠い。

　　何者かが、彼等の波動を、増幅している。やはり囮だ。

　　何か、罠があるに違いない。」

　ケルビンは、皆に注意を与えると、扉を開いた。

　大灯台の最下層である。隣接する兵舎との境目に

渡り廊下があり、その列柱装飾の一箇所が、

隠し扉になっていたのだ。

　大灯台の内側は、このような事態でないならば、

ゆっくりと、見物したくなるような、造りであった。

　所々に、最上階までの吹き抜けがあり、

灯台を灯す時に使う、大量の薪を引き上げる為の、

大きな滑車と、ロープの束が下がっている。

　外見は四角錐だが、中央に円柱が立ち、その周囲を、

螺旋階段が取り巻いて、ずっと上まで続いている。

　中央の円柱は、下部は薪の倉庫に使われているが、

上部は、余程でないと使わぬ、ほぼ不用品めいた物を、

放り込んである、ただの物置らしい。

　ごく一部が、不寝番の控え室に使われていて、

そこだけが、きちんと片付いている。

　その螺旋階段を、どれほどか登った所で、とうとうオリザ姫が、

座り込んでしまった。無理もなかった。深窓の姫君の身で、

昨夜から、ほとんど休めず、この島に着いてからも、歩き詰めである。

　「ごめんなさい・・・少しだけ座らせて・・・」

　ジャドゥビスは、気遣わしげに、明り採りの窓を見た。

　一日目の日が、暮れようとしている。カインとティムが、

首尾よく船に戻れておれば、明後日の朝には、船が出る。

　サイカスまで海路二日。さらに、首都ノビリアまで陸路三日、

いや、緊急事態だと、カインが早馬で駆ければ、一日半かも知れぬ。

　時間がない。あと四、五日の内に、全てを片付けて、

城を、水妖魔王の支配から、解き放っていなければ、

モーズロードン王が、代理統治の使節を送って来た場合、

妖怪対モーズロードン軍の、目も当てられぬ戦になろう。
　
　西日の赤が、色濃くなり始めた。ジャドゥビスは、

じりじりする気持ちを抑えて、オリザ姫に手を差し伸べた。

　「急ぎましょう。灯台に火を入れる為に、兵士が来る。」

　しかし、オリザ姫を立ち上がらせたのは、そのような

物優しい言い草ではなかった。

　突然、激しい喚き声と共に、どこから現れたのか、

地下にいた黒いトカゲ頭の、無数の水妖と、

尋常ではない態度の、兵士の一団が、一緒になって、

螺旋階段を駆け上がり、一行に襲い掛かったのだ。

　　　　　　　　　続く
　　　
　二日空いちゃったかな？

　本当に、お待ち下さってる方が、いらっしゃるなら、

申し訳ありませんでした。

　別に、書くのに詰まった訳ではなく、

卒業式で、帰りに雨に濡れまして、疲れちゃったの。

　自転車で行ったから。娘の高校の卒業式。　　

　何とか、午前中保つかな～と、淡い期待をしてたのですが、

見事に裏切られました。びっしょびしょ

　ちょうど、ストックも切れて、お休み状態になりました。

　多分、３月１０日から、しばらく休むので、それまでに

もうちょっと先の、区切りまでは、行きたいと思ってます。

　シシィの、「父を尋ねて三千里」の結末とか・・・ね　　　　　

　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。