ぶるんねん文庫

　ちょうど３年前、高校入試の、勉強に苦労していた

娘のために、作ったお守り袋です。

　中は、小さい水晶玉。

別に、何でもよかったんだけど、持ってみて、

　「あ、何か入ってる」って分かる方が、励みになるかなって

思ったので、入れました。天神様とか、多賀大社とかも、

もちろん持たせて。でも、これは、親の想い・・・

　どのように、受け止めてくれてるのか、いま一つ、

はっきりしませんが、高校へは、入ってはくれました。

こんどは、卒業してくれれば、O.K.なのですが・・・




　　　　　　　　　　　　碧氷窟の双生児　　　　　（２４）


　幾年かが過ぎた。

　ダクリー婆さんは年ごとに衰えていった。

それと引き換えるように、ふたりは、

薬草の扱いに長けていった。

　そして、足腰の弱った婆さんが、ふたりだけで、

町へ行かせても、きちんと、値の駆け引きもして、

薬の取引を、してくるまでになった。

　それを見届けると、婆さんの衰えは、年ごとから、

月ごとに、目に見えるようになり、やがて、

日ごとに体の動きを、失っていった。

　ついに、起き上がれない日が来た。

婆さんは、寝床からふたりに、指図をしていたが、

冬が近づいたある朝、激しく呼吸を乱して、ふたりを呼んだ。

　「いいかい？よくお聞き。もう、二度とは言えない。

　　そんな時間はないからね。

　　あたしの息と脈が止まって、丸一日たったら、

　　前に印をした、畑の隅に埋めるんだよ。

　　一尋ほどの深さに、穴を掘って。

　　棺は要らない。隠れ里のしきたりだからね。」

　婆さんは、動けなくなる前に、自分を埋葬する場所を、

ふたりに言い置いてあった。代々の薬使いが眠る墓地だ。

　「緑のくぼ地のことは、跡取りに決めた者にしか、

　　教えちゃならない。むやみに知らせると、

　　欲張り共が、荒らしに来るからね。

　　それから、今年の冬は厳しいから、くぼ地の薬草で、

　　特に寒さに弱いものは、土が凍てつく前に、

　　鉢に移して、家にいれるんだ。前に教えたね？」


　ふたりには、もう、「死」が、理解できていた。

だから、ダクリー婆さんの言葉に、いちいちうなずきながら、

あふれて来る涙を、止めることができなかった。

　「あたしは、あんたたちに、謝らなきゃならない。

　　最初に、あんたたちを見つけたとき、

　　あたしゃ、てっきり捨て子だと思って、家に入れたが、

　　どうやら、間違いだったらしい。

　　あんたたちは、多分、人じゃないんだ。

　　山の神様の、親戚かなにか、そんなものに違いない。

　　その証拠に、あんたたちは、いつまでたっても、

　　大人にならない。」

　苦しげな息で、ダクリー婆さんが告白するのを、

ジルとサフィールは、衝撃の思いで聞き入った。

　　　　　　　　　　　　続く


　ついに、やっと、後半突入です。

１５～６回でって思ったんですが、多分、３０回超えます。

　会話が増えると、長くなるし、説明文だと短くできるけど、

それじゃ、レポートか、論文ですよね。

　　　　　　　　　　　　　

　お時間割いて、読んで下さって、

感謝いたしておりますありがとうございました。

　次回をお楽しみに