ぶるんねん文庫

干物・・・ではなく、紐、の、です。（＾。＾）／

梅の袋の紐の先かざり・・・結び目を花芯にして、作りました。

作り方通りにしなくてもいいんだと、分かってきた頃です。




　　　　　　　　　　　　碧氷窟の双生児　　　　　（２１）


　「ねえ、ジル、あたしたちが、前にいたところ、

　　おぼえてる？」

　サフィールは、鶏小屋掃除の手を止めて、

ジルにたずねた。ジルは、洗いかけの餌箱を、

置きっ放して、鳥小屋から出て行った。

サフィールは、後を追って、しつこく聞いてくる。

　「ねえってば、ジル、聞いてる？前に・・・」

　「うるさいな、もう、そのことは、しゃべんなよ」

　「どうしてさ？」

　ジルは黙ったが、ずっと黙っていると、サフィールが、

よけいにしつこいので、なんとか、返事しようとした。

　「言ったって、しょうがないからさ。」

　「どうして、しょうがないの？」

　また、言葉につまった。が、どうしても、あのことは言えない。

　・・・・・朽ちて干からび果てた、自分を見たと・・・・・

　サフィールは、ジルの様子には、お構いなしだ。

　「もう、帰れない、って思ってるからでしょ？

　　でも、あたし、聞いちゃったの、あの、大きい湖で、

　　船が沈んだ時、水の中を見た人が、言ってたのを。

　　湖の中に、でっかい洞窟があって、中が、青かったって。

　　ねえ、あたしたちが前にいたところ、何もかも、

　　青かったじゃない。青いって、思ってもいなかったけど。

　　きっと、あの湖の中に、あたしたちの帰り道が、

　　あるのよ。そう、思わない？」

　ジルは、あきれた。ノーザンハイランドの山のどこかには、

もしかしたら、前にいた世界に通じる、帰り道があるかも・・・

とは考えたが、水の中とは・・・第一、息が続くまい。

　それに、ジルには、たとえ帰れる道があったとしても、

自分は帰ることが、できないのではないかという、

疑問があった。

　・・・・・サフィールだけは、帰れるのかな・・・・・

　サフィールが、しつこく帰り道に固執するのは

本当は、この世界に来るべきでなかったのに、

何かの間違いで、ジルといっしょに、ここに

来てしまったからかも、知れなかった。


　「ジル！サフィール！」

　ダクリー婆さんの、大声が轟いた。

　「鶏小屋開けっ放して、何やってんだい？

　　鶏もヒヨコもみんな逃げちまってる。

　　遊んでないで、早く捕まえて、鶏小屋に戻すんだよ！」

　　　　　　　　　　　　　　　　続く




紐の先のコレクション・・・「ばらの咲きかけ風」のが多いですね。

最近は、二色のちりめん玉かな？

　もうちょっと、レパートリーあるかと思ったんですけど・・・

　きょうも、お越しくださって、ありがとうございました。