2013年10月06日

風の歌 401



    The Song of Wind (401)

 「モーズロードンかぁ・・・」

 ミランにすれば、アネッサ・リーに捕らわれ、グロリオーサ城に

監禁された、唯、それだけの土地勘しかない。

 地図の上で、一応、方角を確認した事はあったが、

ピンと来ない・・・そんな表情である。

 「そんな・・・登用試験を受けて入ったら、

  平兵士からじゃないか。

  将軍まで務めた者が、一兵卒だなんて、

  もったいない・・・と言うより、そんな待遇に、

  ミランが辛抱できるか?」

 ジャドゥビスは、内情を知っているだけに、頑強に反対した。

 「狭い宿舎の大部屋住まいで、毎日、訓練に明け暮れ・・・

  剣術や組み合いじゃないぞ。整列や、駆け足や・・・

  入隊当初は、そんな基本ばかりだ。

  我慢が足りずに、逃げ出す者だっているらしい。

  上に昇ろうとしても、身分制が厳しいから、

  平民出身では、中隊長が精々で・・・

  万人単位を指揮した将軍が、そんな・・・」

 「それで結構だよ!」

 ミランの目は、皆の意に反して、輝いていた。

 「万人単位なんて、実際の所、やった事ないよ。

  オレのいた時って、秋から冬じゃん。そんな時期に、

  農民兵の徴集なんか、出来ないし、山いくさばかりで、

  そんな大人数、動かせないし・・・

  第一、実際やってたの、ユーディスだもん。

  しょっちゅう、オレ、ユーディスに叱られてさ。

  将軍が、前線に出てはなりません!とか、

  特定の者達に、目をかけてはなりません!とか・・・

  飛び鎌、習いたい奴等が来たら、やっぱ、喋るじゃん。

  それだけなのにさ・・・
  
  大部屋だって、平気さ。浮浪児やってた時なんか、

  屋根さえあれば、オンの字だったよ。

  ガラノデルムで、将軍様のお部屋でございますって、

  通された時、ぶっ倒れかけたぜ、マジで。

  実家の、オレの部屋くらいある、馬鹿でかいベッドに、

  二重にカーテン掛かってんの。」

 怒涛のようにミランは、喋り続けた。

 どうにかして、皆に、自分は将軍向きでないと、

分かって欲しいらしかったが、そもそも、無理であった事は、

誰にでも、最初から、解り切っていた事だった。

 ミランは、その日の内に、ユーディスとソルダムに、

話をつけ、引き継ぎだの、挨拶だのと騒ぐユーディスに、

引き摺られる様にして、ガラノデルムへ戻って行った。

 大部屋については、決着がついていた。

 家族持ちの兵は、一定期間の訓練の後は、

戦が始まらぬ限り、自宅からの通いが、認められていた。

 「家族持ち・・・?」

 ミランの怪訝そうな表情は、ドリスと目が合うや否や、

一変し、真っ赤に、火がついたようになった。

 同じく、ドリスも真っ赤である。

 誰も、もう、何も言う事は、なかった。

 二人は、ノビリアでの再会を約束して、一旦別れた。

 ドリスには、オリザ姫とジャドゥビスを、無事に

帰国させるという、重大な任務が残っていたのである。

               続く


  すみません!!出勤前、大急ぎの本文のみ。

 では、パン屋へ行ってまいります!!!
   


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Posted by さあちゃん at 11:56│Comments(0)ファンタジー
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