2013年10月02日

風の歌 399

風の歌 399 
 ニラです。自生してるの。

 食用種です。

 ここだけじゃなく、公園も、

 花壇も、道端も、家々の庭も。

 すごい勢いです。

 食べてもいいけど、

 収穫の手間と、人目が・・・ 


    The Song of Wind (399)
 
 「おとうさまは、おばあさまの亡霊が、度々、月の夜に

  現れたと、話して下さったわ。

  おばあさまは、生きて、会いに来て下さってたのね。」

 セヴィリスは、オリザ姫とは違う感慨を持っていた。

 「変だと思ったんだ。いくら、希代の魔術師でも、どうして

  あんなにラゥオール城内を、詳しく知ってるのか。

  前にも、姫攫いをやったなんて、意外すぎるよ。」

 ジャドゥビスも、以前からの疑念が、晴れたようだった。

 「故郷に置き去った息子が、異変に見舞われていると

  知った妻が嘆けば、ケルビンが力を尽くそうとするのは、

  理解できる。故郷でもない国の異変に、なぜ首を

  突っ込むかと、思っていたが。」

 ミランは、唖然と皆の話を聴いていたが、

 やっと気付いて、口を挟んだ。

 「じゃ、さぁ、あの・・・シシィは、もしかして、王女様の娘?

  シシィも、王女様なの?」

 アルフィーニが、腕組みを解かずに、答えた。

 「王女、とは、認められないだろうが、現王の、

  異父妹であると、認めて貰う事は、できるだろう。

  南海洋に一大勢力のある、ラゥオールフィア国王の妹。

  ・・・バルツァード王家に、輿入れするのには、

  十分な肩書きだと思うが・・・」

 「えっ?」

 シシィが、泣き腫れた瞼を上げた。

 黒目がちな大きな瞳が、きらきらと輝いている。

 「ケルビン、娘の幸せを、どう考える?

  王妃になる・・・とは、苦労を背負いに

  行くような物ではあるが・・・」

 歯切れの悪いアルフィーニとは、対照的な者もいた。

 ドリスは、バンッ、と椅子の向きを変え、ケルビンに向かい、

長いブーツの足を突き出して、大仰に組んだ。

 「人の恋路を邪魔する奴は・・・って、言うものねぇ?」

 オリザ姫は、もっと積極的だった。

 「私、すぐに、お父様にお手紙を書くわ。

  お父様は、ご自分のお母様の事を、本当に、

  いつも気にかけていらしたの。でも、おじいさまが、

  ああいう方だったから、噂は本当かも知れないって、

  諦めてしまって・・・その・・・なんていうか・・・

  闇から闇に、葬ったんじゃないかって、

  恐ろしい噂があったので・・・」

 黙って、セヴィリスが、じいっ、と、テーブル越しに、

きつい視線を投げかけた。

 「ケルビン?」

 例の如く、こう言う話の苦手なミランは、なんとか、

事態が動かないかと、ケルビンの顔を覗き込んだ。

 その純真な、体格の割りに無垢な瞳に、何を感じたのか、

ケルビンは大きく溜め息を吐くと、ついに決意を口にした。

 「私は、罪を告白する。

  三十六年前、私は、ラゥオール城の奥殿から、

  シェレーネ・ジェンティーナ・ラゥオール王妃を、誘拐した。

  その二年前、当時、第四位王位継承権を持っていた、

  シェレーネ王女が、同じく第十一位だった、デビリス王子と

  結婚した。だが、デビリス・セフィオロスは、野心家だった。

  その、王位への執念は、異常といっていい。

  王女に婿入りする形で、傍流から這い上がり、妻から夫へ

  王位継承権を譲渡させた後、上位の三名を暗殺、

  自身が王座についたのだ。

  兄、弟と、叔父を殺され、父王を王宮から追われ、

  母妃を、失意の自害に追い込んだ夫に、シェレーネは、

  不幸のどん底で、無理矢理、一子を産まされた。

  その子も、乳母の手に渡させられ、彼女は、奥殿で

  人という鉄格子に囲まれた、囚人となっていた。

  私は、シェレーネを牢獄から攫った。

  温暖なコパロスに家を設け、満月の夜には、王子に

  会わせに連れて行った。・・・グレイアムが生きておれば、

  証言してくれただろう。・・・グレイアムは、ずっと、

  シェレーネを、女神のように崇敬していた・・・

  ・・・八年が過ぎ、スコルド王子は王太子となった。

  シェレーネが、私の求愛を受け入れてくれたのは、

  それから後の事だ。

  ・・・私は、人として、恥じる事をしてはいない。

  それだけは断言する。私の罪は、幼い王子から、

  母親を遠くに引き離してしまった、その一点だけだ。」

                        続く


 まあ、昔の王様なんて、それくらいの事、やりたい放題で・・・

 近世だって、エカテリーナ2世なんか、もともと、ドイツの貧乏貴族の娘で、

 天然痘で醜くなった王太子に、身分高く、美しい姫は望むべくもないと、

 白羽の矢を立てられた人ですから、王女でも、ロシア人でもなかった訳で・・・

 それが、女王様になったんだから、デビリス・セフィオロスなんか、

 まだまだ・・・なんてね。では次回、400回iconN04iconN04いつまで続くねん・・・ってiconN05kao_4
 
   とりあえず、 今日も、お越し下さって、ありがとうございました。
  


同じカテゴリー(ファンタジー)の記事画像
脱・0円ファン宣言!!!
大好きなのは、タロットカードの話
なんだかへんだな・・・
あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!!
鍵の掛かった部屋SP!?!
風の歌 410 ・・・最終回、そして次にやる事・・・
同じカテゴリー(ファンタジー)の記事
 脱・0円ファン宣言!!! (2017-07-16 13:33)
 大好きなのは、タロットカードの話 (2016-09-05 01:58)
 なんだかへんだな・・・ (2015-12-07 11:58)
 付け足し・・・Quarandolleってなんだ? (2015-09-09 09:21)
 ふしぎちゃん女子 (2014-02-19 00:01)
 あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!! (2014-01-18 00:00)

Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。