ぶるんねん文庫

　百合は白。ですよね。やっぱり。

　白百合って言う言葉はあるけど、

　赤百合とか黄百合って、無いよね。

　やたらと目に付いたのは、クリーム色。

　花弁の真ん中に、小豆色のぼかし入り。

　まるねこの命名、

　「イチジク色」　うん、そうだ。

　イチジクの断面に似てる。

　でも、絵になりにくい色。

　百合らしくない色だった。　


　　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（３８４）

　ソルダムは、灰色の階段を、ただ、降り続けていた。

　所々に踊り場があり、方向を変えて、階段は続く。

　時に、暫く、平らな廊下が続く事もあり、行き止まりまで、

駆けて行き着くと、やはりそこから、階段が下っている。

　暗くは無いが、光源がない。

　強いて言えば、天井が白く輝いている。

　・・・何だ、ここは・・・

　曲がりくねってはいるが、迷う箇所の無い、一本道。

　行けども行けども、昇る事の無い、下り階段ばかり。

　・・・このまま進んで、大丈夫か？・・・

　・・・引き返した方が、良いのだろうか？・・・

　後ろを向けば、当然、上り階段である。

　その時、階段の下方から、微かな足音が聞こえた。

　コト、コト、コト、・・・・・

　規則正しい、人の足音。誰かが、自分の前を歩いている。

　ソルダムは、階段を駆け下りた。

　次の踊り場から伸びた、平らな廊下が、暫く先で、

ほぼ直角に曲がっていた。ソルダムは、迷う事無く、

廊下を曲がった。廊下は、ずっと続いている。

　前を行く者が、遥か、向こうに見えた。

　焦って、せわしない足音が、広からぬ廊下に響いた。

　前を行く者も、ソルダムの足音に、気付いたらしい。

　立ち止まり、僅かに振り返っている。

　毛皮と金糸で縁取った、濃紫の絹長衣を着ている。

　背は、ソルダムよりやや低い。

　純白の短髪を、金の編み紐で、二重に留めている。

　相手が立ち止まっている事が分かると、ソルダムは、

速度を緩めた。警戒心が先に立った。

　が、警戒心は、余りにあり得ない光景に、消し飛び、

逆に、畏怖の念が、その歩みを止めさせた。

　その白髪の人は・・・

　「ジルコニアス！！」

　ジルコニアスは、薄い灰色の瞳で、じっとソルダムを見た。

　「後の王か。」

　ソルダムは思い出した。ジルコニアスは、魔術のみならず、

更に法術も修め、アナトス・リグストラムをすら、恐れさせる、

希代の魔法使いになった事を。

　ソルダムの心の表を読むくらい、何の造作もないのだろう。

　「ここは・・・どこなのだ？

　　あなたは、オリザ姫に憎悪を解かれて、

　　昇天したのではなかったのか？」

　「憎悪・・・？何の事だ？」

　「九峯聖堂で・・・黒い霧の・・・」

　ソルダムは焦った。言葉が、上手く繋がらなかった。

　ジルコニアスは、青白い頬に微かな笑みを浮かべると、

更に、何かを言い募ろうとする、ソルダムを制した。

　「ここへ、他人が入る事があろうとは、思わなかった。

　　ここは、我が記憶の回廊。

　　そなた、今、私が死んだと言ったな。

　　そうか・・・死んだか。

　　では、ここが消えるのも、時間の問題。」

　この場所が消えてなくなると聞き、ソルダムは慌てた。

　ジルコニアスは笑った。

　「すぐ、ではない。

　　死者の記憶といえど、注がれた想いの濃さで、

　　記憶は、強く残るもの。付いて来るがいい。後の王よ。

　　我が記憶に、意味無く来はしまい。

　　そなたの内に、憂いが見える。

　　この回廊の先に、答えがあるのやも知れぬ。」

　ジルコニアスは、再び歩き始めた。

　ソルダムは、ただ黙って、その後ろに従って歩く。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く

　前回分、書き終わったのは木曜日。お盆真っ最中、８月１５日。

　お盆の忙しいのが終わって、１８日、日曜夜のニュース。

　「桜島が大噴火。観測史上初めての、５０００ｍ級の噴煙。」

　・・・また小説予言だ。書き直そうかと、今読み返したが、

　手の付け所がない。関西版の新聞では、事実が詳しく書いてない。

　下手に書き直して、余計、鹿児島の方々の、お気持ちに障るのも困る。

　さあは、伊豆大島での、火山学者さんのお話を基にしてます、って事で。

　・・・著者が分かんないの。講談社現代新書だったと思う・・・

　では、また次回。今日もお越し下さって、ありがとうございました。