2013年04月20日

風の歌 331

 前回、わざと、混乱を招くような、書き方をしました。kao_9

 文章表現として、これから後に、解明部分を出そうと思ったわけです。

 ところが、何だか、分かり難い回になってました。icon10

 前作、「碧氷窟の双生児」と、関連が出てきてます。

 34回の、けっこう長編ですので、お読み下さいと、簡単に言えない。kao_3

 超簡単に、ご紹介いたします。

 正体不明の男女の双子が、北の国に現れ、泥棒の濡れ衣を掛けられ、

 疑い晴れた後、女の子が死に、男の子が行方不明。

 千年後、王国を立ち上げたのは、果たして、この時の男の子かどうか・・・

 女の子の名は、サフィール。男の子はジル。

 これらを下敷きに、お読み頂いた方がよいかも、と言う事で、ご説明いたしました。

 名詞に、icon22二重の意味が含まれてたりも、あります。

 「彼」は、ファーゴでもあり、アナトスでもあり、とか・・・

 それは、ユリシアが、人間ではないという、表現でもあるのです。

 事象から受ける「念」を元に、思考している、と言う意味なのですが、

 自分で、後で読み返すと、kao_12なんのこっちゃ・・・だった。ので、補足しておきます。

 前後あわせて、一気読みして頂くと、説明なんか要らないんですが・・・kao_3

 では、本文、いっきま~~すiconN04iconN30


    The Song of Wind (331)

 ・・・黙れ!その歌を、ここで歌うな!!・・・

 激しい水音の、轟から迸る想念が、ユリシアの思考を揺さぶる。

 一瞬、ユリシアは、たじろいだ。

 あまりに深い、怒り、憎しみ、悪意が、そこに渦巻いていた。

 だがその奥に、微かな、一条の光に似た、気配があった。

 ・・・シシィ!・・・

 この怒りに満ちた波動と共に、シシィはいる。

 押しつぶされ、掻き消されそうになりながら、それでも、

シシィは歌っている。

 ・・・シシィ!私の為に、私の為だけに、歌って!

  シシィ!お願い!!・・・

 怒りの念は凄まじい激しさで、水柱を天まで吹き上げながら、

ユリシアと、シシィの歌の間に、立ちはだかろうとする。

 漁師や湖岸の住民等は、神々の怒りの顕現かと恐れ慄き、

夕暮れを幸いとばかりに、各家に引き籠ってしまっている。

 ユリシアの人ならぬ感性の、冷めた片隅が、怒りの主を見た。

 ・・・男の人・・・若い・・・否、老いぬ魂の・・・

 ・・・止めろ!!触れるな!!・・・

 怒りが増幅した。が、逡巡が生じた。

 その隙から、シシィの想念が溢れ出た。

 ・・・ユリシア!・・・

 ユリシアの両足が、地を離れた。

 白髪の少女は、吸い寄せられるように宙を漂い、水柱に近付いた。

 ・・・シシィ!・・・

 ・・・寄るなーーーッ!!!・・・

 突然、水柱が崩れた。

 拒絶の念は、想念の域を越え、北の湖上を揺るがせた。

 叫びと水音が、水面を満たした。

 夕闇の藍色が広がる頃、湖はまた静かになっていた。

 だが、サフィール火山の麓には、ユリシアの姿は、もうなかった。

       *  *  *  *  *

 ソルダムは、純白の空間にいた。

 窓の外には、星空が広がっている。

 かつて、ニグに送り込まれた迷路を抜け、辿り着いた謎の部屋。

 窓の下の、せり出した部分には、大きな、涙形の窪みがある。

 今は、何も入っていない。

 ・・・サフィールの涙は、ここに・・・

 ソルダムは、上着の隠しを抑えた。

 そこには確かに、薄青い巨大な涙形の宝石が、しまわれている。

 ・・・サフィールの涙・・・武器となる宝石・・・

 部屋は、一面に、ただ白い。

 だが以前と違い、自分とは別の色彩があった。

 黒地に金糸を縫い取ったマント。錦織の上着に、数多の宝玉を

飾ったベルト。白髪に戴く、金銀に碧玉を埋め込んだ略王冠。

 ・・・ジルコニアス初代王!!・・・

 だが、その姿は、晩年の肖像画とされるそれより、若く、殆ど、

ソルダムと変わらぬほどの年齢に見える。

 ・・・どういう事だ?これは、夢なのか?・・・

 ソルダムは、夢に違いない、と思った。

 ジルコニアスは、自分の上着の隠しから、もう一つサフィールの涙を

取り出して、窪みに嵌め込み、窓の外に星空に、光条を迸らせたのだ。

 ・・・!!!・・・

 驚きの余り、声を失ったソルダムを、振り返る事無く、ジルコニアスは、

話し始めた。

 「見よ、後の王。全てを焼き尽くす、激しい熱線の行方を。」

 ・・・夢だ!夢で、あの部屋を見ているのだ!!・・・

 「夢ではない。」

 ジルコニアスは、ゆっくりと振り返った。

 短く刈り込んだ真っ白な髪。狭い肩幅。少年めいた表情。
 
 歴史学者が、神話から換算し、有り得るとした、初代王の寿命は、

百六十六歳であった。肖像画も、七十歳代の老人のような姿を、

最後の絵姿としている。

 だが、今、目の前にいるのは、ソルダムより若いかも知れぬ、

少年王の姿をしたジルコニアスだった。

               続く


 風の歌 331 散り際の桜

 真下から見上げたから、ちょっと暗い。

 花の少ない枝には、もう、緑の葉っぱが・・・

    iconN10 iconN12 iconN10 iconN12 iconN10

 水曜日、穴開けました。ごめんなさい。

 休日に外出すると、疲れちゃって・・・

 苛々ハラハラが積もって、文が書けなかった。

 もう大丈夫・・・とも言えない。

 とりあえず、また次回。

 今日もお越し下さって、ありがとうございました。
 



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
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