2013年04月13日

風の歌 329

風の歌 329 
 成安造形大学

 スクールバス停留所横の枝垂桜。

 ソメイヨシノより、濃いピンク

 風が強かったんですが、

 青空が出たので、急いで撮りました。

 もう、帰りのバスが来てたし、

 一瞬前まで曇ってて、急に日が射したら、

 半分影が、かぶってたりして。

 動揺してたのかな。

 後ろは鉄塔が入ってるし・・・

 さくらさくら
 汝(な)が咲く春に 悲しみが訪れた
 薄紅の花を 涙で見上げた
 
 さくらさくら
 花影に 早や 青葉の兆し
 汝が命も うつろう無常

  風すさび 花は舞い散る
  さくらばな 何処に落ち行く
  いずれ末には 道の泥に まみれて朽ちる

 さくらさくら
 花散る後には 赤茶の新芽 汝は新芽 
 今より萌ゆる 重き花を散らし 陽(ひ)の季節を待ちて萌え出す

 さくらさくら
 涙を止めよう 汝は青葉 今より出ずる
 伸び 茂り 照りて輝き 黄金(こがね)と燃え上がる

 さくらさくら
 薄紅の花々に 涙うずめて
 歩み行く汝(なれ)を見守る それでも悲し この春のさくら



    The Song of Wind (329)

 二日の後に、吹雪は止んだ。

 夜明けから、晴れの兆しが、空にあった。

 漁師は、ユリシアを乗せて、小船を漕ぎ出した。

 近隣の貴族の娘でもなく、どこの誰とも知れぬ者を、家に置いて、

厄介事に巻き込まれるのは、御免だと言う思いが強かった。

 女房は口軽く、村人等は口さがない。

 政情不安定な折に、家族を守るには、余計な関わりを作らぬに

越した事は無い。漁師の行動を責める事は、誰にもできない。

 それに、サフィールへ行きたいと言ったのは、ユリシア自身だ。

 ・・・しかたねぇ・・・皆に、知れてねぇうちに・・・

 舳先が、黒い岩場に近付いた。漁師は、慣れた手つきで縄を投げ、

ごつごつした岩の一つに掛けると、船を岩場に横付けした。

 夏から後、やっと溶岩が冷え、幾度か船を近付け、

上陸できそうな場所に、目星を着けてはいたのだ。

 しかし、火山の近くは魚も少なく、まだ煙を吹く山に、

わざわざ危険を冒して、近付く必要もなかった為、

漁師にとっては、おっかなびっくりの行動である。

 「着いたよ。降りな。」

 漁師は、縄をしっかり結び直すと、先に降りて手を伸べ、促した。

 ユリシアは、素直に下船した。

 漁師は、ユリシアを置き去りにして、岩場を離れた。

 黒い溶岩は、まだ、幾らか熱を持っているのか、

雪が積もった様子もなく、むしろ、早くも、青草の芽が見えている。

 風に散った種が、芽吹いたのだろう。

 だが、それで、危険が軽減するわけではない。

 漁師は、櫓を押しつつ、火山を振り返って見た。

 女房が火にかざして乾かした、白いコートが、溶岩の間を、

見え隠れしている。夏の間に、役人達と、物好きな若者が数人、

上陸したきりであるから、道など無い。

 ユリシアが、上陸地点から、移動する可能性は、限りなく低い。

 ・・・明日、また来て見るべ。町で、それとなく尋ねて見るし・・・

 漁師は、仕掛けの網を引き上げに、漁場へと急いだ。


 ユリシアは、歩き難い岩場を、躓き転びながら、それでも、

少しずつ登って行った。

 正確に言うなら、ここはサフィールではない。

 バルツァードの都、サフィールは湖の底である。

 この火山の向こうへ回れば、サフィールのあった所が見えると、

漁師が教えてくれた。だが、そこへは、船が着けられない。

 春から夏にかけて、激しく噴火した為、火山灰や瓦礫は、

風に流されて、西側に多く降り、湖に浅瀬を形作っていた。

 船は近づけない。反対側は、溶岩で陸続きになり、

火山は、陸から湖に突き出した、半島になってしまっている。

 半島の付け根には、漁師の村が、水に追われて移転していた。

 人目を避けては、陸伝いにも行けない。

 だがユリシアは、不都合な場所に下ろされたとも、置き去られて、

どうしようとも、その動き難い感情を、揺さぶった様子はなかった。

 無表情に、岩場を登る。

 時折、目を上げて、足場を確認する。

 少しずつ、蟻か蛞蝓ほどの速度で、ユリシアは進んで行く。

 どこへ行こうと言うのか。

 本当のユリシアの力ならば、こんな山など、何ほどの事も無い。

 しかし今は、黒光りする溶岩に、白い手をつき、灯火に寄る

羽虫のように、どこかを目指して、山を登っていく。

 ・・・シシィ!私を呼んで!・・・シシィ!!・・・

 湖は、冬麗の日差しに、眩しく煌めいている。

                    続く


 上の詩は、「すしやのおやじさん」の写真の、コメントに書き込んだ詩ですが、

 こちらにも、載せてしまいました。

 すしやのおやじさんは、ウチの狂乱オヤジと違って、芸術性に溢れた方なので、

 詩情に溢れる写真に、いつも癒され、触発されて、

 時々コメント詩を、書き込ませて貰ってます。

 悲しい時、落ち込んだ時には、可愛い花の写真を、

 苛々する時には、滝の流れを撮影技術でぼかした、夢のような写真を、

 昼にしか咲かない蓮の花を、クラッシックの歌曲のように、

 月光の下に咲いているかのごとく、また、満月を、まるでSFの世界のように、

 八芒星形に撮って見せて下さる、魔法の『詩写真家』(造語!)なんです。

 iconN04iconN04『詩写真家』iconN04iconN04

 いい響きだと思いませんかiconN05
 
  詩情ある写真って、難しい。少なくとも、さあは撮れない・・・おやじさん、いつもありがとうiconN04


 では、また次回。今日も、お越し下さって、有難うございました。


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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(2)ファンタジー
この記事へのコメント
ども・・・
「詩写真家」ですか・・・
良い響きです
おやじの稚拙な写真で詩が浮かんでくるさあちゃんの方がすごいです
見たまま、感じたままの写真ですが・・・・ご覧いただきありがとうございます
Posted by すし屋のおやじすし屋のおやじ at 2013年04月13日 06:16
Dear  おやじさん

 さあの詩こそ、稚拙です。誰にも認められたこと、無いですから。
下手な詩が、コメント欄を汚して、申し訳ないとは思うのですが、書かずにいられない時もあって・・・
 でも、「詩」の材料は、やはり、詩的でないと、書けないです。
 最近、ある展覧会で、はっきりしました。おやじさんの滝の写真と、同じ構図の、滝の絵。
絵としては、きれいでしたけど、おやじさんの写真には、巡り行く水の命の輪廻が写し出されていました。
 おやじさんって、すごいって、改めて思いました。

  これからも、娘の紆余曲折に振り回されるでしょうけど、おやじさんの写真に、励ましてもらって、頑張ります。
 これからも、詩情溢れる写真を、お願い致します。

 最後になってすみません。いつも、お読みいただき、ありがとうございます。
足あと欄に、あやじさんがいてくださると、ほっとします。
 
Posted by さあちゃんさあちゃん at 2013年04月13日 10:33
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