2013年04月10日

風の歌 328

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 詰まらん事、書かずに、

 桜の事でも書けばいいのにね。

 いつも、急いでいる。

 今年の桜のように、

 それ咲け!それ散れ!

 あまりに急ぎすぎて、

 入学式が葉桜だった所も、

 あるそうな・・・

 彦根は、間に合ったみたい。
風の歌 328 
 
 いつも同じ桜

 あまりに芸が無いので、

 違う角度から

 よその家が写るな・・・

 この程度なら、大丈夫か・・・

 この近くの人は、お花見、タダ

 でも、夏は毛虫、秋は落ち葉

 それなりに大変iconN04iconN04


    The Song of Wind (328)

 湖畔の苫屋で、ユリシアの冷たい体は、漁師の女房に預けられた。

 北国であるから、苫屋でも、石積みの壁は、漆喰が塗られ、

寝床の下には、炉が設けられている。

 体に張り付いた、濡れた衣服は、ごわごわの荒布の物に換えられ、

裂けた柔らかなコートの代わりに、つぎはぎの毛皮が掛けられた。

 乾き切らぬ薪のいぶる煙で、ユリシアは目覚めた。

 「気ぃがついたのかい?おひぃさん・・・

  あんたさん、貴族のひぃ(姫)さんだろ?

  着てるモンで分かるよ。

  良いとこのひぃさんが、あんなとこで、何してなすったんだい?

  水際で倒れてたって、ウチのダンナが、言ってたけど?」

 風除けに、きつく閉め切った板窓の隙間から、差し込む外光が、

まだ昼間である事を示しているが、明かりは、かまどの焚口だけ。

 一間っきり、ガラスの窓などない、暗い屋内である。

 「おまえ、そんなにべちゃべちゃ喋ったら、

  おひぃさんが、びっくりしなさる。ちぃと黙らっしゃい。」

 暗い部屋の片隅から、もごもごした声が聞こえた。

 「おひぃさんは、そがいに喋らんもんだ。そこらの女共みてぇに、

  べらべらと身の上を喋ったり、しねぇわ。」

 「そら、あたしら、おっ母ぁみてぇに、奥勤めした事ねぇから、

  わかんねぇわ。おひぃさんが、どんなもんだか。」

 火をたく女房と、その母親の老女が、室内にいるらしかった。

 「ウチのダンナ」と言うのは、不在らしい。

 ユリシアは、頭を巡らし、周りを見回した。

 以前、石化が起こった時の様に、体が強張り、動かし難い。

 その時、女房が急に、あわただしく動いた。

 「ちょいと待ってな!急に開けんな。雪が吹き込むから。」

 老女も、座を、僅かに動いたようだ。

 板戸が軋んで開き、二人の男が、雪混じりの風と共に、入って来た。

 「いや、分からん。この辺のひぃさんじゃ、ないみてぇだ。

  ええ拾いもんだと思ぅたのに。」

 「オヤジ!ひぃさん、起きてなさるよ!」

  へんな事、言うなよ!!」

 どうやら父と息子は、ユリシアを、近くの屋敷から抜け出した、

姫君だと思い、消息を知らせて、礼金にあり付こうとしたらしかった。

 だが吹雪で、遠くの屋敷までは、当たれなかったらしい。
 
 「目ぇ覚ましてなさるなら、聞いた方が早いよ。

  直接、聞きなよ。」

 息子は、父親の背を押して、ユリシアの方へ突き出すようにした。

 さして、大男ではないが、がっしりした漁夫である。

 ユリシアは、戸惑った。それは、貧しい一家にも伝わったようだ。

 老女が、ずりずりといざって、ユリシアに近付いた。

 「どうも、礼儀の分からぬ者達で、申し訳ありませぬ。

  おひぃさま。あなた様は、どこのおひぃさまで、

  いらっしゃいまするか、息子と孫が、お出迎えに来て貰わんと、

  近くのお屋敷を当たり申しましたが、分からんかったようで・・・

  どこからお出でたのか、お教え下さりませぬでしょうか?」

 奥勤めと言っても、下女中だったらしく、その敬語は怪しかったが、

何とか、礼を尽くそうとする意図は、汲み取れた。

 だが、ユリシアは答えられなかった。

 ユリシアは、ポルトル村の名を、知らなかったのである。

 ガラノデルムからテッセリムへ、更に、馬に乗せられて、

ソルダム達に連れて来られた村の、地名になど、関心を

払わなかったのだ。

 女房が、また喋りだした。どうも、黙っていられない性質らしい。

 「一体、あの雪ン中、何してなすったんだか。

  どっか行くんでなきゃ、攫われて、捨てられたんか・・・」

 ふと、ユリシアは顔を上げた。

 ・・・どこかへ・・・どこへ?・・・

 「サフィールへ・・・」

 微かな声だったが、女房が黙るのには、充分だった。

 「サフィールへ?」

 一家は、顔を見合わせた。

 その視線は、一様に、板窓の外へ向けられている。

 そこには、火山の溶岩に埋まり、更にデルム川が、地震で

堰き止められた為に、不気味に広がったサフィール湖に

飲み込まれた、千年の古都の姿が、望める筈であった。

               続く


 あやたちゃん、あんたは、どこへ行こうとしてるのiconN05

 ままっちは、心配で、いてもたってもいられない。

 もう一回、学校で話そう。でも、ままっちも、ホントは、「ママ」を休みたいのかも。

 何だか、疲れがドッと来てる。とにかく、大津へ。

  ではまた次回。今日も、お越し下さって、ありがとうございました。
  



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
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