2013年04月07日

花の写真達

花の写真達花の写真達

 いそいで、写真だけ。梅に、水仙。先月撮影。


    The Song of Wind (327)

 冬の、遅い朝日が昇る。

 ユリシアは、水際を、北へと辿る。

 道は、殆ど無いに等しい。

 あてどもなく、道しるべもなく、ただ、足の進む方向へと、

白い姿は、進み続ける。

 少し山へ入れば、村から村への間道や、木こり道などもある。

 湖に沿って歩こうと思うのなら、方向を確認しながら、

それらの道を歩けば、少しは安全なのだが、ユリシアの頭には、

そう言う事は、浮かばないようだった。

 ただ、水際のぎりぎりを、歩き続ける。

 岩場があれば、岩伝いに、根を水に浸した茂みがあれば、

それを掻き分け、まるで、何者かに取り疲れたかのように、

ひたすら、水際を歩き続ける。

 幾度かは足を滑らせ、水に落ち、華奢な靴は濡れ、

細いかかとは欠け落ちた。

 長い服のすそは、濡れ、裂け、泥に汚れた。

 それでも、ユリシアは歩き続ける。

 日は昇っても、冬の雲は厚く、寒風を暖めてはくれぬ。

 濡れた足は、容赦なく冷やされ、体温を奪う。

 日は高くなったが、ユリシアは、次第に歯をがちがちと鳴らし、

寒さに凍え始めた。だが、人としての感覚に慣れないユリシアは、

それが、命の危険に繋がる兆候だと、気付く事が出来ない。

 震えながら、ただ、前へ、前へ、歩き続ける。

 が、限界が来た。

 岩場で躓き、屈み込んだ後、立ち上がる事は、最早出来なかった。

 雪がちらつき始めていた。

 背を丸め、両腕を抱え込んで、うずくまったユリシアは、

次第に遠のく意識の中で、唯一つの事を、思い続けていた。

 ・・・シシィ!歌って!私の歌を、私の為に、歌って!!・・・


 波に濡れた岩にもたれて、倒れこんだ白い体に、湖から、

一艘の釣り船が、近付いて来ていた。

 雪の合間を見て、湖に漁に出た、サフィール湖の漁師であった。

 不凍湖サフィール。それは、火山の熱によるものであった。

 まだ、山頂は噴煙を上げている。

 が、雷鳴轟き、石の降るような噴火は、暫く起こっていない。

 漁師達は、やむなく危険を冒して、日々の暮らしの為に、

漁を再開していた。その内の一艘が、ユリシアを見つけたのだ。

 白い小さな体は、岩場から、船に引き上げられた。

 雪が、激しくなって来た。

 漁師は、急ぎ岩場を離れ、仮拵えの船着場へ向けて、

櫓を押し始めた。遠く行く手に、仲間の船が見える。

 桟橋は、もうすぐ、そこであった。

               続く


 では、また次回。今日もお越し下さって、ありがとうございました。


同じカテゴリー(ファンタジー)の記事画像
脱・0円ファン宣言!!!
大好きなのは、タロットカードの話
なんだかへんだな・・・
あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!!
鍵の掛かった部屋SP!?!
風の歌 410 ・・・最終回、そして次にやる事・・・
同じカテゴリー(ファンタジー)の記事
 脱・0円ファン宣言!!! (2017-07-16 13:33)
 大好きなのは、タロットカードの話 (2016-09-05 01:58)
 なんだかへんだな・・・ (2015-12-07 11:58)
 付け足し・・・Quarandolleってなんだ? (2015-09-09 09:21)
 ふしぎちゃん女子 (2014-02-19 00:01)
 あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!! (2014-01-18 00:00)

Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。