ぶるんねん文庫

　やれやれ、何とか午前中にできそうだ。

　午前０時にお待ちかね下さった方、

　ごめんなさい。午後０時にどうぞ。

　今の所、ストックないです。

　にもかかわらず、

　京都へ、行ってまいります。

　何って・・・

　娘の展覧会ですよ。

　愚娘、絵だけ預けて、別の課題に追われて、

　自分は行かないって。


　　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（３１９）

　北大塔は、大扉から、異国の兵士を、続々と吐き出し続ける。

　ケルビンは、思わず、兵士の間に飛び込み、その狂気を、

止めようとした。しかし、兵士は、黒い霧の中を移動する間に、

文字通り、狂ってしまっている。

　「やめろ！！ここは神殿だ！！
　
　　戦場ではない！やめろと言うのに！！」

　だが、一人二人を止めても、きりが無い。

　・・・指揮官は誰だ？・・・

　上空から見回しても、上級士官は見当たらない。

　ヘリアンタやナタレンスでは、指揮官も操って送り込み、

現場指揮を取らせていたようだが、それがいない。

　・・・神殿を、混乱に陥れるだけが、目的と言う事か・・・　

　コーブリオン攻略は、グラウコスの招聘が目的だったし、

ナタレンスでは、グロリオーサ城で、蜘蛛使いの赤い魔女、

アネッサ・リーを倒すと言う計画があった。

　だが、ここ、エリオルムでは・・・

　・・・トルトバイトに、取り分は無いと言う事だ・・・

　温暖な地方の服装で、急に北国に送られ、正気を逸しながらも、

寒さに気付き、兵士の動きは鈍い。だが、打ち物に慣れぬ

神官達も、上手に戦っているとは、到底、言い難い。

　戦のための指揮命令系統が、全く整っていない。

　神官達は、切りかかってくる狂兵から、己の命を守るために、

仕方なく剣を取っている。逃げ隠れする先があれば、

誰も戦わぬに違いない。

　それでも、神殿の敷地内に、暫く、大軍を足止めするだけの、

功はあった。その間に、郊外に置かれていた駐留軍が、

神殿の近くまで、たどり着いたのだ。

　住民に触れを回し、とりあえず身一つででも、逃げるように、

促す時間も、稼げたのである。

　それでも、逃げ遅れた者達もいる。

　神殿周辺は、住民を巻き込んだ、凄惨な市街戦となった。

　エリオルム駐留軍の一部は、住民の保護と避難誘導に当たり、

ミランは先鋭部隊を率いて、トルトバイト軍の真っ只中に、

突入した。極力殺すなと、ソルダムに言われたが、致し方ない。

　ミランは意識の目を閉じ、剣を振るった。

　黒い霧に取り憑かれた者の、心を解くのは、容易ではない。

　ガラノデルムでは、ルテシア捕虜から情報を得る為、

その影響を取り除く努力を、続けていたが、上級兵士ほど、

深く心を蝕まれ、無理に読心を繰り返すと、廃人と化す恐れもあり、

思うに任せぬ状態だった。

　今ここで、トルトバイト軍を捕虜にしても、狂気に犯された兵士を、

このまま、遠い西国へ送り返す方策は、立てられぬ。

　・・・生かしておいてやれぬ・・・こんな死なせ方、したくは無い・・・

　ミランの心は、無明の中でちぎれ、血を吐く想いがのたうった。

　「散開して、包囲！！特に、東！街道へ逃すな！

　　神殿内へ押し戻せ！！」

　「ミラン！！」

　突然、上空から声が降った。ケルビンだった。

　「ケルビン！！どっか、行っちゃったんじゃ、なかったの？」

　「黒い霧を通って、戻って来た！兵士を切るな。

　　黒い霧の中へ戻せば、コパロスへ帰せる！」

　お互い、戦いながらの、怒鳴り合いの会話だ。

　「黒い霧の中へ？どこだよ、それ！？

　　それに、どうやって？この人数を！？」

　動きの止まったミランの背後に、剣を振りかぶった敵兵が、

突如現れた。ケルビンの眉間から、電撃が飛ぶ。

　敵兵は、気絶して倒れた。

　「私がやる・・・しかない。

　　ミラン、味方を退去させろ。巻き添えを食う。

　　あそこの大きい建物の陰まで、下がらせろ。

　　（それは、エリオルムの役所だった）

　　十、数える間だ。急げ！！」

　伝令が飛んだ。呼子が吹かれた。

　疾風が吹き払うように、エリオルム軍が退却した。

　瞬間、上空から無数の火花が、地上に降り注いだ。

　訳も分からず、街路に取り残されたトルトバイト軍は、

落雷に等しい衝撃に、一兵残さず打ち倒されてしまった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　続く

　ホント、急いでます。報告は、また後日。

　ではまた次回。今日も、お越し下さって、ありがとうございました。