ぶるんねん文庫

　枯れ菊。

　秋深き短日の中に、

　命の全てを花に託し、

　次世を夢見て、立ち枯れて行く。

　種子を残す為の、自然の摂理。

　でも、まだ、生きてる。

　そう、タイトルは、「生きる」


　　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（３１２）

　エリオルムへ入る為の、街道の分岐点に、小高い丘がある。

　その中腹に、エリオルム駐留軍の拠点がある。

　かなり大規模な砦である。異変の知らせは、とっくに届いていた。

　隊列は、今しも出発する所だった。

　だがソルダムは、丘の登りがけに、異様なものを見てしまった。

　街道の彼方が、暗く霞んでいる。

　幾ら、雪の、途切れ間の無い冬でも、

　吹雪の白魔で無いことは、余りに明らかだった。

　ソルダムは、目を凝らした。

　黒い霧を背負って、黒い隊列が、街道に姿を現した。

　明らかに、エリオルムに向かって来ている。

　隊列の先頭が掲げる旗は、サフィール市旗。

　あの、地震と火山噴火で、首都水没の混乱の中、

ナウリス・ハズリックが、市庁舎から持ち出した物である。

　ソルダムは、聖域出兵の際、テッセリム義勇軍に、

それを掲げる事を、確かに許した。

　だが、今、それを掲げる先頭は、黒甲冑の長身の異国人。

　「マチアス・メイガン！！」

　エリオルム駐留軍に、明らかな動揺が巻き起こった。

　救援に駆けつけた訳で無い事は、その殺気で、明らかであった。

　先触れも無い。エリオルムに、攻め込む為に来た軍なのだ。

　だが、自国軍には違いない。

　もし、ソルダムがいなければ、エリオルムは激しい混乱の内に、

トルトバイト軍、エリオルム軍、テッセリム軍の、三つ巴の戦となり、

三軍共倒れで、玉砕していたかも知れぬ。

　「ニグ！・・・よくもここまで！！」

　ソルダムは、ジャドゥビスを市内に戻し、オリザ姫を呼び出させ、

ミランにエリオルム軍を率いさせて、トルトバイト軍に当たらせ、

自分は、一人、空っぽの砦に立ち残った。

　マチアスが、黒い霧をマントの様にたなびかせ、黒い霧に操られ、

正体をなくした義勇兵を率いて、街道を、エリオルムに近付いた。

　ソルダムは剣を抜いて、街道の真ん中に、一人立ちはだかった。

　「そこをどけ！！踏み躙られたくなければな！！」

　マチアスは、ソルダムの事を、覚えていないかのようであった。

　あれほど激しく、切り結んだ相手であるのに、だ。

　ソルダムは、黙って、その背後の、義勇兵達の様子を探った。

　誰も、ソルダムに気付かない。

　ソルダムが見知った顔の者さえ、目を宙に据え、上から糸で

吊るされた様な、立ち振りである。

　「もう一度だけ言うぞ！どけっ！！」

　マチアスが喚くのと、ソルダムが剣の鞘で、馬の前足を

払うのが同時だった。馬はいなないて膝を折り、背の上の

　大男を振り落とした。

　「このやろう！！」

　マチアスが喚いて立ち上がるのと、その後ろから、数名が

躍り出して、ソルダムに飛び掛るのと、さらにその後ろで、

　「ドラゴンが出たぁ！！」

　と言う、騒ぎ声が起こるのが、ほぼ同時だった。

　エリオルム上空に、金鱗を煌かせた巨体が浮かび、

街道目掛けて、一気に飛行して来た。

　その姿が近付くと、背に乗っていた一人が、更に上空へ飛翔した。

　十二節の長杖を手にした、白長髭の法術師。

　大隠者、ジョルジオ・ダルトン。

　その杖の先端が、鉛色の雲に、虹を描いた。

　「出て来い！！ダトゥールよ！！」

　雲が切れ、灰色のローブを纏った、ニグ・エウビュコスが、

その、小柄な姿を現した。

　アルフィーニは、ソルダムとマチアスの間に着地し、

その背からは、光り輝くような、神々しい姿が、滑り降りた。

　オリザ姫である。

　それを、そうと認めた時、マチアスの後ろの黒い霧が、突然、

人型に凝った。マチアスが分裂したかと、誰もが思った。

　だが、違った。その人物を見るや、オリザ姫は悲鳴を上げて、

ソルダムの陰に隠れた。

　いきり立つマチアスの後ろで、不敵な笑みを浮かべるのは、

オリザ姫を手懸けにし損ね、グレイアムに食糧庫に閉じ込められた、

コリン・デュオニスであった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く

　エリオルム大決戦。悪夢の時代の再来となるか？そも、４００年前の「悪夢の時代」とは

　６００年生きた、アナトス・リグストラムの記録に残されてないのに、

　５００年続いた、バルツァード王家の、創成神話にはある時代。

　初代建国王、ジルコニアスは、前作のジルとサフィールに、関係あり

　昨夜、がんばって、ＳＦ設定決定版ノートを、作りましたよ。

　・・・世の中のファンタジー系のストーリーって、似たような設定になるのかなあ

　検索すると、「あ、これ、似てる・・・これも、似たシーンある・・・えぇっ？そっくりな設定？」

　って、事になる。それが嫌で、ファンタジーを、読まないようにしてたんだが、

　まるねこちゃんが検索したのを、横から読んでしまった。

　クトゥルフ神話・・・だっけ？さあは、あんなに気色悪くは、して無いと思うが・・・

　だって、美男美女ばっかり出してるし。一番酷いので、水妖魔王でしょ？

　あれの実態モデル？Ｍ・デラックスとか言う人。

　まあ、さあ的には、イヴェルト・ペトロスが、一番の化け物だが・・・

　「黒い霧」は、ずーっと前に、ＮＨＫで「宇宙」って特集番組やってて、

　そこに、科学者が考えた、地球外生命体のコーナーでやってた。

　塵のような粒子が、電気的に結合して、活動し、信号をやり取りして会話し、

周囲の塵を取り込んで、増殖する。・・・これも、生命と言っていいだろう、って。

　さあは、この粒子の表面に、ミクロの高次元時空軸が存在し、粒子が

電気結合すると、時空軸を意識的に活用し、物質の瞬間移動や、

体細胞質の変格や、三次元生命体の脳波（これも電波のはず）の操作が

出来るようになる、って、設定したわけ。・・・これ、合ってるのかなぁ

　　では、また次回。今日も、お越し下さって、ありがとうございました。