ぶるんねん文庫

　春が来ました。

　パート先のスーパーで、

　早くもチューリップやスウィートピーが。

　このキャンディピンクに、★★★

　どうも弱い。見ると欲しくなる。

　お正月花の残りの、紫菊に足して。

　・・・菊は強いね。

　どんどん蕾が咲く。枯れないの。

　これだけじゃ、寂しいからね。

　ピンクや黄色で、春らしくなった？　


　　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（３０４）

　マヤリスは、夢を見ていた。

　ここは、ルテシアの都、ヘリアンタ。太陽宮の奥、女宮の一角。

　大怪我を負って、聖域から戻った王妃を気遣って、

　女宮は、完全に日頃の政務から切り離され、ただ、王妃の

養生の為のみに動いている。

　宴もなく、ほんの時折、ひそやかな琴の音や、緩やかな歌声が、

寝たきり病人の無聊の慰めらしく、聞こえる事があるばかり。

　冬空に鳥も歌わず、しんとした宮殿は、女官のひそめた足音のみ。

　夜更けともなれば、生き物の気配すら、失せたかと思わせる。

　そのような静寂の中で、マヤリスは、ひたすら夢の中を

彷徨っていた。灰色の靄の中を、満天に煌く星の海を、

炎揺らめく灼熱地獄を、または、純白の空間に、宝玉が、

贅沢に、ちりばめられた不思議な世界を、繰り返し繰り返し、

巡り続けているのだ。

　幾度、それらを巡った事だろう。星空の中で、マヤリスは、

違和感を覚えた。それまで、いかに、恐ろしげな所を訪れようと

美しい空間に入り込もうと、マヤリス自身は、透き通った殻の中に、

閉じ込められているかのように、何も感じなかったのに、突然、五体が、

別々の方向へ、勝手に行きたがるような、異常な感覚に襲われたのだ。

　・・・どうしたのだろう・・・

　突然、マヤリスの両手両足には、バラバラな方向目指して、

ちぎれて飛び散り、首と胴体までもが離れて、星の海を漂いだした。

　マヤリスは慌てた。

　急いで、自分の手足の行方を追い、それらを拾い集めた。

　首だけが見つからなかった。

　星空の中を、一つの流星が横切った。

　・・・見つけた・・・

　マヤリスは、流星を追った。

　いつしか、場所は、ネレイド王の修行部屋に変わっていた。
　
　岩を刳り貫いたように作られた、書棚の一つに、長い

ブルネットの髪を垂らした首が、後ろ向きに乗っている。

　・・・やっと見つけた・・・

　手を伸べると、首は自分でぐらりと傾ぎ、こちらを向いた。

　美しい、美しすぎる女の、だが、それは、死に顔だった。

　マヤリスは叫んだ。喉が張裂けんばかりの、声を上げた。

　
　マヤリスは、自分の叫び声で、目を覚ました。

　実際は、叫びも、唸りもしていなかったらしい。

　まだ幼い侍女見習いが、不寝番の椅子から、滑り落ちそうな姿勢で、

眠りこけている。その浅い眠りすら、妨げた様子はない。

　マヤリスは、そっと上体を起した。侍女は目覚めぬ。
　
　・・・あれは、何を示す夢だったのだろう・・・

　死んだ女。命を失った女。・・・魔力を失った女・・・

　魔力を取り戻したいと、自分は思っているのだろうか。

　それとも、魔力が必要になる事態が、迫っていると言うのだろうか。

　・・・我が父の送りし書物に、我を人と為す呪文が記されていた・・・

　では、万一の必要に迫られた折、魔力を戻す呪文も・・・

　・・・あるのだろうか・・・そんなものが・・・

　魔力を、取り戻したい訳ではない。

　怪我も、普通の人並みに、回復して来た。

　だが、己の父の真意を、知りたいと言う欲求が、衝動となった。

　マヤリスは、枕頭台に並ぶ、数多い薬瓶の中から、

特に小さい緑色の一本を手に、寝台を滑り降りた。

　侍女はまだ眠っている。が、さすがに、傍らにマヤリス妃が立つと、

　はっとなって、姿勢を正した。その顔に、薬瓶を近づける。

　侍女は、再び眠りに落ちた。

　マヤリス妃は、白天鵞絨のガウンを羽織ると、寝室を出た。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く

　すみません。何のこっちゃですよね。

　でも、こんな夢、見た事、ありません

　マヤリス妃の正体が、明らかになります。物思う石。魔力ある石の正体

　物語の中で、この人、まるで実在の人物のように、突然、思いがけない登場をする。
　
　このお話、１００％フィクションだし、完全オリジナルの筈なんだけど、

　なんだか、何者かに、書かされている気がする。

　・・・いや、グイン・サーガの神様が、書かせて下さってるんだとは、思ってるけど・・・

　　　では、また次回。今日も、お越し下さって、ありがとうございました。