2012年12月02日

灯(ともしび)達の、瞬きの歌・・・異次元宇宙へようこそ!

灯(ともしび)達の、瞬きの歌・・・異次元宇宙へようこそ! ギャラリー寺子屋「灯」

 娘以外は、第一線のプロ

 葛原順子さんの、陶人形。

  「ほのぼの、うふふ」

 この表情、他に表現できない。

 こんな可愛い桃太郎。

 鬼さん達は、きっとにっこりして、
 
 改心したのでしょうね。 


    The Song of Wind (289)

 ジャドゥビスが現れたのは、選りにも選って、ネレイド王の、

法術修行用の、ニセ洞窟の部屋だった。

 ジャドゥビスは、初め、どこかの地下かと思ったが、

事態を把握するより早く、掃除道具を担いだ女中に見つかり、

逃げ隠れする間もなく、衛兵に、捕まってしまったのだ。

 その衛兵の制服や、梯子段から、引き摺り下ろされる様子を、

遠巻きに見守る、近習等のお仕着せに、見覚えがある。

 ・・・ヘリアンタの太陽宮・・・それも、本丸ではないか?・・・

 いかにジャドゥビスが、貴族然とした風貌とて、不審者には違いない。

 余人の踏み込む事を、厳しく禁じ、下働きの者は、出入りの度に、

身体検査がある程、警備の厳重なエリアに、単身、文字通り、

降って湧くように、現れたのだ。

 当初の乱暴な扱いは、仕方がなかった。

 その内、衛兵隊長や警備長官といった、上役が出て来よう。

 ・・・それまでの辛抱だ・・・

 ジャドゥビスは諦めて、唯々諾々と従った。

 ルテシアと母国モーズロードンは、直接、敵対していないし、

ファーゴの造反を挫き、ディールヴァ城の危機を、救ってもいる。

 今回も、身元を明かし、ファーゴの仕業で、と、言えば、

決して、悪い扱いは、受けまいと思っている。

 だが、いつまでたっても、上役に、話が通じる様子がない。

 ジャドゥビスは、城内の不心得者を禁足する、仮牢に放り込まれ、

そのまま、忘れ去られているかのように、何事も起こらなかった。

 鉄格子の窓から、かろうじて、外は見える。二日、三日と、

 日が過ぎるのが分かる。だが、ポルトル村からヘリアンタまで、

何日掛かったのかが、分からない。

 下郎共の牢ではないから、一応、寝台も手洗いもある。

 食事や明かりは、壁の小さな戸口から、差し入れられた。

 しかし、その壁は石。扉は鉄製。窓の外は、すぐ石の塀である。

 誰とも出会わぬように、謀られているとしか、思えなかった。

 ・・・ファーゴめ!!・・・

 シーツに火でも着ければ、人が来るかとも思ったが、

万一、捨てて置かれたら、焼死は免れぬ。

 ファーゴ自身は、謀反人として、表向きの地位を失っている。

 それでも、これ程に、人心を掌握し続けるとは、生半な事ではない。

 恐らく、黒い霧の作用で、城の者達全ては、自覚のないまま、

軽い催眠状態に、あるのだろう。

 何処からともな、く聞こえて来る指図に、何故かは分からず、

黙々と従うよう、行動を操られているのだ。

 ・・・どうすればいいんだ・・・!!・・・

 ジャドゥビスは、苛々と、鉄の扉を拳で叩いた。

 がんがんと言う音が、響き渡った。

 が、看守が、駆け付けて来る事もない。

 余韻は虚しく、石の壁に、吸い込まれて行くばかりだった。


 そのヘリアンタから、南へ二日。商都ラムゼー。

 荷馬車が引っ切り無しに行き交い、商品を取引する声が、

かまびすしい街角に、場違いな、武人装束の若者が、

ぼんやりと、立ち尽くしていた。

 ・・・何?ここ、ラムゼーじゃん・・・何で、こんなトコに?・・・

 前もって、ソルダムの奇怪な話を、聞いていなかったら、

 『ここは、どこか』と言う、疑問を持つ事も、出来なかっただろう。

 ・・・黒い霧に、ラムゼーに運ばれたんだ。昔みたいに・・・

 それは遠い昔。赤い魔女に攫われて、今のように、

大通りに立ち尽くしていた事が、確かにあった。

 あの時は、記憶を失い、なすすべもなかった。が、今は違う。

 ・・・オレは、バルツァードの将軍。ガラノデルムへ帰らなきゃ・・・

 ミランは、キラリと、ハシバミ色の瞳を輝かせると、

たちまち行動を起した。すなわち、裏通りに駆け込むや否や、

薄汚れた姿の、七、八歳の子供を捕まえ、懐の小銭入れを

出して見せ、指図したのである。

 「コワがんなくていいよ。ほら、一シーグルやるから、

  オレを、カシラんとこ、連れて行きな。

  そうだ、バル・ファンとこへ、連れて行けるなら、三シーグルやる。

  もう奴も、きっと、いいカオに、なってるだろうから。」

 その日の日没前に、もう、ミランの姿は、北へ向かう、

街道上にあった。足は、鹿毛の駿馬。懐には、たっぷりの路銀。

 全て、かつての「ダチ」からの、借金ではあった。

 だが、昔、「カシラ」として、世話してやった恩もある。

 多少の交換条件はあったが、皆、喜んで用立ててくれた。

 ガラノデルムまで、八日。ミランの心は、逸り切っていた。

                  続く


 灯(ともしび)達の、瞬きの歌・・・異次元宇宙へようこそ! 
 勿論、森先生の絵もあります。kao_21

 iconN08寺子屋さんの2階は、今、

 光と幻想の、異次元宇宙です。iconN07

 iconN08モダンと、クラッシックの融合。

 iconN09様々な色の光と、影。

 iconN08暗闇と、煌き。

 どうぞ一度、見に行って下さい。kao_10

 2階ですよiconN04

 (まるねこの絵は、1階です)

 ではまた次回iconN11りんごiconN11

 今日も、お越し下さって、ありがとうございました。



同じカテゴリー(ファンタジー)の記事画像
脱・0円ファン宣言!!!
大好きなのは、タロットカードの話
なんだかへんだな・・・
あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!!
鍵の掛かった部屋SP!?!
風の歌 410 ・・・最終回、そして次にやる事・・・
同じカテゴリー(ファンタジー)の記事
 脱・0円ファン宣言!!! (2017-07-16 13:33)
 大好きなのは、タロットカードの話 (2016-09-05 01:58)
 なんだかへんだな・・・ (2015-12-07 11:58)
 付け足し・・・Quarandolleってなんだ? (2015-09-09 09:21)
 ふしぎちゃん女子 (2014-02-19 00:01)
 あ・・・あ・・・あたしじゃないーーーっ!!!!! (2014-01-18 00:00)

Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。