ぶるんねん文庫

久しぶりの、北海道便りです。羅臼川かな測量棒、持ってるな。仕事らしい。

　長男は、土木工学なんかやってるけど、本当は生物系大好きで、

　海洋生物学者に、なりたかったんだそうな。中学の自由研究、クラゲだった。

　ペンギンが好きでね。南極でペンギンが見たいって。
　
　それで、北見工大へ行ったのに、河川防災へ進んじゃって、南極行きは

　パア～～～・・・まあ、今は、旅行でも行けるからね。　


　　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（２６８）

　「『古来、氷雪の民が恐れる、黒入道が、エリオルムの、

　　金鉱山に現れ、鉱夫達を多数、食い殺してしまった。』と、あるが？」

　「その話は、知っている。前に読んだ。

　　地下の鉱道に、毒のある気体が溜まり、大勢が死んだ。

　　生き残った者も、幻覚を見るようになり、その証言から

　　描かれた絵だ。私の見た、黒い霧とは違う。」

　梯子の上から、ケルビンが言った。

　アルフィーニは、次々と示される、本の見出しを、読み上げた。

　「『エリオルム神殿の成り立ち』・・・『歴代神殿長一覧』・・・

　　『鉱物資源について』・・・『氷窟の精霊』・・・」

　「何だって？」

　「『氷窟の精霊』と・・・

　　『青い光射す氷窟に、青い肌の、小人の姿の、精霊が現れる。

　　　これを捕らえ、帰り道を追跡すると、宝石の鉱山が見つかる。

　　　バルツァード初代王、ジルコニアスは、この方法で、

　　　鉱山開発に、成功したと、言い伝えられる。』

　　青い肌の、小人の精霊・・・どう思う？」

　ケルビンが、梯子段から下りて来て、本を覗き込んだ。

　「黒い霧と、関係無いかも、知れないが・・・

　　エリオルムは、クァランドールの北の果てだ。

　　様々の、不思議な現象が、起こるのだな。

　　こういったものに触れて、幼少期を過ごした、魔力ある者が、

　　潜在意識に、感化を受けていても、当然だ。

　　『影の化け物』、『祟りをなす地霊』、『氷窟の精霊』・・・

　　更に、それらを操っていたと思われる、ジルコニアス王の遺功。

　　やはり、エリオルムが、謎の根源なのか？」

　コリンが、一番下にあった、巨大な古書を開いて、差し出した。

　「『エリオルム神殿に、神官達の魔力で、封じ込められた地霊は、

　　闇夜が、地に下り来たったものであり、夜の闇に巣食う悪霊全てが、

　　その中に包括されていた。』・・・これぞ、まさしく、ケルビンの言う、

　　『黒い霧』そのものの記述では、ありませんか？

　　人のみならず、死霊までも操り、邪な者に力を与え、そのものでも、

　　魔物として存在する。様々の悪霊を、内部に宿していれば、

　　そのような事も、可能でしょう。」

　ケルビンは、腕組みして、考え込んでしまった。

　「エリオルムへ行ってみよう。

　　今からなら、日暮れまでに着ける。」

　アルフィーニが、持ちかけた。

　ケルビンは、ユリシアが、「シシィは、近くにいる」と

言い続けている事が、気になって仕方なかった。

　だが、二人の飛行速度を持ってすれば、たとえ無駄足でも、

時間的に、あまり損失は、あるまいと思われた。

　ケルビンは、ようやく腕組みを解いた。

　
　アナトス邸のテラスから、その日の朝の内に、一頭のドラゴンと、

黒尽くめの魔術師が、冬空を北に指して、飛び立った。

　首を反らして、それを見送るコリンの背後に、薄い、黒い、

影のような霧が、すぅっと尾を引いて、流れているのに、

気付いた者は、誰一人いなかった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く　　

　・・・どう言う事なんでしょうね

　この人、味方じゃないの？

　人には、それぞれ固有の波動があって、

　術師は、それを感じ分ける事が出来るんです。

　コリンが、ファーゴに操られているなら、この二人が、気付かない筈が無い。

　特に、アルフィーニ。ファーゴとニグの、両方の波動を知っているはず。

　さあ、動き出しました。次回から、北国は大騒乱お楽しみに

　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。