2012年06月16日

「星々へ届く歌」

「星々へ届く歌」 いつも、地面を見ている。

 歩く時、また、立ち止まる時。

 そこに足があるから。 

 足が、地面を踏みしめているから。

 いつも、うつむいている。

 背を丸め、首を前へ折り、

 肩をすぼめ、足元を見ている。

 でも時には、上を見たい。空を見上げたい。

 青空を、流れる雲を、高処を飛ぶ鳥を、

 眺めたい。背を伸ばして。顔を上げて。

 胸を張って。星を月を太陽を、見つめたい。



    The Song of Wind (223) 

 野生動物は、本能で、火を恐れる。

 ルテシア軍は、寒冷地で動けぬトカゲを、火で脅して、

敵にけしかける作戦に出たのだ。この点、ファウヌス将軍は、

まだ良心的であったと、言わざるを得ない。

 動かねば、踏み越えるとは言ったが、森に火を放ってまで、

動かそうとは思わなかっただろう。

 第一、貴重な森林を焼くなど、とんでもない自滅行為である。

 アルフィーニは、一刻を惜しんで、天馬に変わり、

 「ミラン!早まるなよ!!」

 と、いい置くと、ガラノデルムへ、飛び立って行った。

 上空から見ると、秋枯れた森の下草が、一気に燃え上がり、

ほぼ、三方から、とかげどもの群れを、包み込む様に、

広がって来ている。逃げ惑ったトカゲ共の行く先は、

 ・・・将軍旗本隊・・・

 そこには、ドリスがいる。

 アルフィーニは、奥歯を噛み鳴らして、大神殿へ飛んだ。

 既に、火責めに気付いた留守居隊が、事態の打開に動こうと、

右往左往、し始めている所だった。

 
 「司令!どうしますか?このまま、待ちますか?」

 迷った表情のミランを見て、部下達が、畳み掛けて

訊ねてきた。度々の大軍の通行に、鳥も獣も、とっくに逃げ、

辺りには、それらの声も無い。

 ・・・ドリスは?・・・

 ユーディスと、まだ、大神殿にいるのだろうか。

 もしユーディスと一緒にドリスが来るなら、それまでに

少しでも、戦況を有利にしておきたい気もする。

 しかし、秋の森で、火責めにこの人数は、心もとない。

 ・・・待つか・・・進むか・・・

 その時、ミランは、気付いた。

 アルフィーニは、「ドリスに伝えて来る」とは言わなかった。

 ・・・ドリスは、麓にいるんじゃ、ないだろうか・・・

 だとすると・・・

 ・・・ドリスが危ない!・・・

 「行こう!!命令違反の罪は、オレが一人で被る。

 ファウヌス将軍の隊に、合流するんだ!!」

 後から、また数騎が、ひっそりと追いつき、三十騎に届いた、

ミランと、腹心の部下達は、一気に麓へと、馳せ下って行った。

 
 大神殿に、留守部隊としてぎりぎりの、百人程を置き、

ユーディスが、山道を下り始めた頃、ミランは、将軍旗本隊の

背後に到着した。

 燃え広がる炎に、怯えたオオシロトカゲ達が、普段に見る、

のっそりした動きからは、想像できぬ俊敏さで、次々と、

バルツァード兵に、襲い掛かっている。

 ルテシア軍は、巨大な松明で、地面を擦るように、トカゲ共を

追い立てていた。立てては使えぬ、奇妙な代物だ。

この為に、わざわざ、その様な形の松明を、作ったらしい。

 火の熱気で、体の動きを取り戻し、更にその恐怖で逃げ惑う

オオシロトカゲ達は、その扱いを熟知した、ルテシア側には、

この上ない武器だった。

 森の一部は、すでに、山火事の様相を呈している。

 森を焼き払っても、他国の領地の事、後は、どうなろうと、

与り知らぬと言うのだろう。そうでなければ、こんな戦法は、

使えない。だが、森を焼かれた国は・・・

 ・・・ルテシアは、狂ったのか・・・

 狂っているのは、ファーゴ一人なのか。

 ネレイド王も共に、狂わされているのか。

 バルツァード兵の誰もが、疑念を抱いた。

 オオシロトカゲの毒ある牙は、軽甲冑の歩兵を、

殲滅し尽くす勢いだった。馬も、脚鎧のない下級騎士の馬では、

噛まれて、危険だった。後方の救護隊に、呼び集められた、

薬使い達は、懸命に、解毒剤を投与したが、苦しむ兵士達の姿は、

士気を著しく低下させていた。

 「私が行く!歩兵を下がらせよ!

  ファウヌス旗本隊の、恐ろしさを、思い知らせてやる!!」

 ついに、重甲冑隊が動いた。ドリスも、共に随っている。

              続く


 「戦乱編」どこで、終わろうか、迷ってます。kao_4

 もしかすると、三王女救出で、終わっておくべきだったかも。icon10

 長すぎる。「戦乱編その一」「その二」とか・・・

 大体、戦のシーン、好きじゃないし、上手じゃないし。kao_15

 絶対書きたくないのは、民衆大虐殺kao_12。回想シーンで書いたから、もうやだ。

 早々と、第四章のタイトル決めました。「星々に届く歌」iconN07

 この場合の「歌」は、声に出した歌だけじゃなく、人々の情緒から頭脳の

 働きまで、全部ひっくるめての、「思い」って言う意味です。

 だって「嵐」って、歌手でしょ?misonoも西野カナも、歌手でしょ?黒木メイサも、CD出てるよね。

 ついでだけど、さあも、クラッシックの声楽、10年習ってました。kao12kao_01kao12

  第五章は「大団円」です。単純iconN04

  では、また次回。音符iconN07楽譜iconN07音符今日も、お越し下さって、ありがとうございました。



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
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