ぶるんねん文庫

　金沢で最後に歩いた、

　茶屋町。歩いただけ。

　どこも入らず。

　オヤジと行くと、いつもそう。

　黙々と、歩くだけ。

　情緒はあるけど、

　折角行ったのに・・・ねぇ


　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（１６１）

　小男の魔術師と言っても、ニグに、それ以外、特に人相に、

特徴がある訳ではない。ソルダムは、説明に詰まった。

　ナタレンス公は、魔術師の事なら、神官の領域だと、

単純に割り切り、丘陵地の小さな神殿へ、案内してくれた。

　　幸いな事に、雨は、本格的に止んだようだ。

　ナタレンス公の仮陣営の上は、抜けるような青空である。

　洪水も、早や、引き始めたかに見える。

　城と同じく、白い石造りの神殿は、秋の青空に映え、

キラキラと輝いている。列柱や開口部に象嵌された、

紅玉や碧玉が、花の様に白亜を彩っている。

　ドリスは、その美しさに、暫し、ぼんやり見惚れていたが、

対照的に、気懸かりに心奪われたソルダムは、

足元に目を落としたまま、せわしなく、建物へ入っていく。

　案内の神官は、気乗りのしない様子で、こちらが聖堂、

ここは書庫、と、通り一辺倒に、説明をするだけであった。

　ドリスは、何人が所属しているか、とか、ソルダムの言う、

背の低い者は、該当者がいるか、等と、質問をしている。

　それを、背中で聞いているのか、ソルダムは、

どこでも、神殿は大抵、同じような造りであるから、

勝手の分かる通路を、一人で、どんどん進んで行く。

　そして時折、目に付いた扉を、開けて見る。

　ノックもしない。声も掛けぬ。相当に苛立っている様子だ。

　通路の先に、下りの階段がある。

　丘の斜面に沿って、建てられているので、入り口のある一階が、

奥の方では、二階になっている。だから、階段を降り切っても、

外光が入り、白い石の壁に反射して、明るい。

　ソルダムは、ここでも同じように、扉の開け閉めを、繰り返した。

　やがて、地下に当たる所に、差し掛かると、急に、通路は暗くなった。

　案内の神官が、「明かりをどうぞ」と、言う声が聞こえる。

　背後に、蝋燭の明かりを受けて、ソルダムは、行き止まりの

扉を開けた。他の扉と、さして変わった様子は、なかった。

　しかし、その中は・・・

　・・・黒い石造りの部屋・・・サフィール神殿と同じ・・・

　そして中央の、黒い石の、四角な台座・・・

　いや、幼かった頃のソルダムが、台座だと思っただけで、

その表面には、びっしりと、浅く細い線で、何かの模様が、

描かれている。もしかすると、文字なのかも知れぬ。

　と、思った時、背後の扉が、閉まる音がした。

　「ドリス？」

　振り返ったソルダムの顔が、驚愕の余り、凍りついた。

　そこにいたのは、ここの神官の、お仕着せローブを纏った、

ニグ・エウビュコスだった。

　　　　　　　　　　　続く

　ニグの、実体三次元モデルの、俳優さんは、カメレオン俳優と呼ばれているそうで、

　「古畑任三郎」なんて言う、ドラマでは、毎回違う役で、出て来たりしてた。

と思ったら、「怪物くん」で、ソルダムのおおちゃんと、共演してるし。・・・そう、彼は、「ヤッシー」です。

　カメレオンの彼には、もう一つ、トリックを背負って貰ってます。どんなのかな？

　読み込んで下されば、「こう言う事？」って、分かる筈なんだけど。

　ＴＶＣＭとのかぶりは、やっぱり無視します。最終シーンの方が、大事だから。

　　では、また次回。今日も、お越し下さって、ありがとうございました。