2011年09月24日

風の歌 118

風の歌 118 萩のピンクの点々の間に、

 野生化してしまった

 ニラの花が咲いてます。

 八百屋さんにある、あのニラです。

 庭に植えても、生えないくせに、

 なんで、ゴミ捨て場の横ばかり、

 なんでも元気に生えるんだろう。

 除草剤、撒く人もいるのにね。

 ピンクと白。

 毎年、初秋のお花見です。
 


   The  Song  of  Wind  (118)  

 黒尽くめの一団に、黒塗りの馬車に押し込められ、気付くと、

その内部もまた、真っ黒であり、小窓も、黒布で貼られて、外を窺えぬ。

 アルナス后は、重いため息をついた。

 ファーゴの狙いは、マヤリス妃の手紙であろう。

 だが手紙は、ミリカに渡してしまった。

 目当ての物を持たぬ老女を、ファーゴはどう扱うのか。

 よもや、いきなり切り捨てはしまい。

 だが、保護の名の下に、幽閉、投獄はあり得る。

 アルナス后は、思いを巡らせた。

 ユーディスに連れられて、タンベルディに行ったのは、

間違いではなかったのか。あのまま、サフィールに留まり、

王の代理として、国政を見るべきではなかったか。

 否、と、アルナス后は思った。

 それは、今だから言える事。

 靴すら一人で履けぬ女が、周りに、何を言えただろう。

 先王時代、国政に口出しした事はある。

 だがそれは、病がちとはいえ、王が存在し、世継ぎの王子が

元気に育っていたからこそ。

 先王なく、現王の行方も知れぬ今、誰が一未亡人を、重んじよう。

 馬車は、アルナス后の思いとは裏腹に、通用門から、女宮へと

庭園を抜けて、直接向かって行く。

 外が見えなくとも、生まれ育った宮殿の内。

 そんな事は、轍の音で、充分わかる。

 どうせ、今の身なりでは、王宮を歩かせられぬとか、

ファーゴ奴が、詰まらぬ気を回したのだろう。

 余計なお世話だ、と、アルナス后は歯噛みした。

 確かに、下級貴族か小地主程度の、身なりではあった。

 が、それがどうした、と言う気構えは、馬車から降ろされ、

湯殿、更衣場と連れ回される内に、脆くも崩れた。

 その身なりは、下級侍女より、遥かに粗末であったのだ。

 仕方なく、用意された銀鼠色の繻子のドレスに、袖を通す。

 手伝おうと、居並んだ侍女や女官達は、目を見張った。

 アルナス后は、一人で服を着、靴を履き、髪を結い上げたのだ。

 そして、一番上級と思われる女官に向かい、穏やかに、

しかし、有無を言わさぬ口調で命じた。

 「支度は整った。ダトゥーラ・ファーゴとやらが、

  会いたいとか、申しておったな。

  苦しゅうない。会うてやるゆえ、居間に通すがよい。」

 そして、自らは、案内も立たせず、勝手知ったる女宮を

どんどん進み、元の自分の居間に、入ろうとした。

 誰も慌てぬ。ファーゴが、手入れを命じておいたのだろう。

 苛立ちを隠して、扉を開ける。明かりと言う明かりは、

すべて灯され、夜半過ぎと言うのに、眩しいほどである。

 壁に、バルツァード先王の肖像画が、掛けられている。

 ・・・この前で、わらわと会おうと?馬鹿にするにも、程がある。

  決して、決して、どんな企みにも、諾わぬぞ。

  この方の前で、謀り事に加担など、させられてたまるものか・・・

 いきり立つ、アルナス后の後ろで、ひそやかに扉が開いた。

 振り返ると、白い長衣に、十二節の長杖を持った小男が、

部屋に入ろうと、している所だった。

 「ファーゴか。」

 唐突に声を掛けられ、ファーゴは慌てた。

 「さ・・・左様でございます。セシル・アルナス殿下。」

 そこへ、飲み物を捧げた女官が、入って来た。

 ファーゴは、それへ向かって、人払いを命じた。

 アルナス后は、きりりと眉を上げた。

 「一つものを尋ねるが、」

 女官は、アルナス后を見ずに、畏まって下がって行く。

 「はい、なんなりと。」

 ファーゴは、慇懃に答えた。

 「ここの主は、誰なのじゃ?」

 ファーゴの面に、狼狽の色が走った。

 「本来の主は、マヤリス王妃であろう。

  しかし、不幸にも逝去され、その後にわらわが、戻り来たれば、

  仮にせよ、先々王第一王女たる、わらわが主ではないのか。

  それを、たかだか参謀長ふぜいが、主を差し置いて、

  人払いを命じるとは。

  ものを知った、法術師のやりようとは、到底思えぬ。」

 「いや・・・これは、失礼致しました。

  女宮は、長く留守でありました故、つい習慣で・・・

  改めて、ご挨拶申し上げます。ダトゥーラ・ファーゴと、

  申しまする。陛下の御命により、参謀長を務めております。」

 その言葉の間に、アルナス后はつかつかと、ファーゴに歩み寄り、

ふと、四、五歩の距離を置いて、立ち止まった。

 「以降、よろしく、お見知り置き、お引き立ての程を。」

 そう言いながら、ファーゴは握手のため、右手を差し出しながら、

距離を縮めようと、二、三歩、進んだ。が、アルナス后は、

その右手を取らず、じっと、凝視した。そして、低い声で言った。

 「そなた、何者じゃ。」

 「は?」

 ファーゴの、取り繕った笑顔が、凍てついた。

 「わらわを誰と心得る。昨日今日に、名乗り合うた者の、

  見分けもつかぬ、ざれ者と見くびってか。

  そなたが入って来てより、この部屋に漂い出した薬臭さ。

  近寄るほどに、それが強うなり、つい先日、嗅いだ臭いじゃと

  思い出して、よくよく掌を見れば、やっぱりじゃ。

  いかに、変装しても、手の相までは変えられぬ。

  小男など、幾らもいようが、この臭い、その手相。

  忘れたとは言わさぬ。離宮の居間で、わらわはその手と、

  確かに、握手を交わした。

  そなたは、過日、マヤリス妃に、仮死の薬を渡した、

  宮廷医師、ボニウスであろう!!」

           続く


 ここまでは、分かるように、書いてあったはずです。iconN36kao_8icon12icon12

 ミランが、ルナンシア近くの生まれと言いながら、

かなり遠くの、アルテミシア周辺を、知ってたり、

ファーゴが、部屋にいなかったり、やたら忙しそうだったり、してましたよねiconN05

 まだまだ、トリックは、隠されてます。どこでしょう。

 よ~く、読み返してくださいicon22kao_22。では、また次回。

          iconN33音符iconN07icon12iconN08icon12iconN07音符iconN33

    今日も、お越し下さって、ありがとうございました。
   



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
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