2011年09月21日

一春に、ジャムを一びん

一春に、ジャムを一びん 一春に、一株の苗からiconN12いちごiconN12

 取れたイチゴでジャムを作ると、kao_10

 丁度、一びん。いちごいちごいちご

 市販ジャムの、小瓶に収まるくらい。

 国産レモンで、酸味を足して。kao_15kao_16

 出来上がり。iconN36kao_13icon12icon06









   The  Song  of  Wind  (117)

 森の夜道は、気味のいいものではない。

 小屋の外の焚き火跡で、拾った薪を松明にして、

その明かりを頼りに、ミランは、村で教わった通りの道を、

注意深く進んで行った。

 離れ里、あるいは、隠れ里と呼ばれる所に、薬使いは住んでいる。

 貴重な薬草の、生える場所や、製薬法を秘密にするため、

あるいは、万一、処方の間違いで、人々に害を与えてしまい、

怒りを買ったときの、保身のためとも言われる。

 だから、村里から遠いのは、仕方が無い。
 
 闇夜の雲は、どんよりと垂れ込め、行く手は、

薄っすらと、靄に霞んでいる。

 と、唐突に森が切れた。

 立ち木が無くなり、荒地の一本道の先に、小さな木戸がある。

 夏の雑草が、覆い尽くしているが、低い土塁が

敷地を囲っているらしい。木戸の向こうは、人家の明かりが、

唯一つ、ちらちらと、揺れているのが見える。

 土塁も木戸も、飛び越えられそうな、低さだったが、

ミランは礼儀正しく、木戸を開けて入り、アーリー婆さんの

家らしい、明かりの方へ、近づいていった。


 玄関のノッカーを叩くと、一人の老女が現れた。

 「薬使いの、アーリーお婆さんですか?

  あの、僕はミラン・アクティオンって言います。

  旅の途中で、友達が怪我をして、血が止まらないんです。

  血止めの薬を、分けてもらえませんか?

  お金はあります。だから、お願いします。血止めの・・・」

 老女は、ミランが、緊張しながら、精一杯の敬語を話すのを、

暫く聞いていたが、急にフフッと、不気味な、含み笑いを洩らした。

 そして、いかにも、無理に繕った猫なで声で、

ミランの服の裾を、捕えて言った。

 「こんな夜中に、よう森を抜けて来やった。まあ、お入り。」

 ミランは、日暮れ前でさえ、用心して、戸口横の小窓からしか

応対してくれなかった、村人達と比較して、奇妙な感じがした。

 しかし、婆さんの機嫌を、損ねない方がよいと判断して、

 誘われるままに、家の中に踏み込んでしまった。

 すると、どうだろう。

 ミランの踏む足元から、粗末な土間が、見る見る、

手の込んだ、織り出し模様の段通を、敷き詰めた床に変わり、

そこから、魔法が広がるかのように、只の漆喰壁は、

絹の掛け布で覆われ、様々の家具が現れ、侘しいランプの火は、

水晶玉を煌めかせる、シャンデリアに変わってしまった。

 「あ・・・あの・・・これは・・・」

 驚きの余り、身動きもならず、ミランは何とか、婆さんに

問いただそうと、言葉を探した。

 しかしミランは、言葉より婆さんを、探さねばならなかった。

 目の前にいたのは、古びた鼠色の服を着、皺に目口の埋まった

老女ではなかった。そこにいたのは・・・

 真紅のドレスに身を包み、渦巻く赤毛を高々と結い上げ、

考えられる限りの、金銀宝石の装身具を身に着けた、

美しい、しかし怪しげな、一人の女性だった。

 「あの・・・アーリー・・・さん?」

 婆さんとは、最早言えまいと、ミランは、用心しいしい

話しかけた。赤く装った女性は、甲高い声で笑い出した。

 「きちんと、本名を呼んで欲しいものよ。なあ、ミラン。

  我が名は、アネッサ・リー。コーブリオンの赤い魔女。

  覚えていやらぬか。無理もない。

  そなたの記憶は、私が食べてしもうたもの。

  そなたの父が重病じゃと、母が駆け込んで来て、

  何に変えても、助けて欲しいと言うから、そなたの記憶と

  引き換えてやったのじゃ。なぁに、どうせ、日が経てば、

  治る病を、大げさに騒ぐから、うるそうてな。

  ちと、懲らしめてやったのじゃ。

  その後、そなたを返す場所を、間違えたが、結構楽しげに

  しておった故、捨て置いた。

  それにしても、うれしいものよ。我が喰み痕に、出会うとは。

  いや、愉快愉快!!」

 ミランは、驚いて逃げ出そうとした。

 何が何でも、逃げねばならない。ミランの本能が、そう叫んだ。

 だが、遅かった。アネッサ・リーの両手が、まるで蛞蝓の様に

ミランの服から、腕へ胴へ、首筋へと這い登り、その指先から、

生きる活力とも言うべき、エネルギーが、吸い取られて行く。

 ついにミランは、まだ長からぬ人生で、再び魔女の毒牙にかかり、

意識を遠のかせて行ったのだった。

          続く


 ・・・・・と、言う、トリックでした。

 では、また、次回。icon23kao_13iconN08icon12

     今日も、お越し下さって、ありがとうございました。
 



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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
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