ぶるんねん文庫

　まだ、夏です。

　晩夏とも言えない

　眩しい朝

　萩が咲きました。

　ススキもまだ開かないけど

　ミンミンゼミも喧しいけど

　萩が咲きました。

　秋は夏の後ろに

　ひっそりと隠れて

　目覚めを待っているのです。
　

　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（１０８）

　アルナス后は、駆け寄り、抱きついていたミリカを下ろし、

後ろに庇いながら、毅然と言い放った。

　「何と無礼な！屋敷の当主を、目前にして、

　　無言で踏み込むとは。誰の手の者か。誰に、何用か。」

　「これはどうも・・・」

　隊長が、慇懃に腰を折って見せた。

　「ダトゥーラ・ファーゴ参謀長より、仰せつかって参りました。

　　王太后様が、火事で難儀なさったゆえ、一刻も早く、

　　お里である太陽宮に、保護して差し上げよと。」

　「ファーゴ・・・六年前には、顔も出さなんだ癖に・・・」

　アルナス后は、苦々しい顔を、隠さなかった。

　「タンベルド伯爵様も、よろしければ、ご一緒に・・・」

　言葉は、柔らかいが、有無を言わさず、連行する気でいるのが、

見え見えである。ミリカが、怯えて震えるのが、伝わってくる。

　「無用じゃ！！ファーゴの用あるのは、わらわ一人のはず。

　　他の者に、指一本触れる事、この、先々王第一王女、

　　セシル・アルナスが、一切許さぬ。

　　わらわ一人を、連れて参るがよい。

　　そして、ファーゴに言うのじゃ。以降一切、ジュノス夫妻と、

　　その客人等に、手出し無用とな！！」

　そして、アルナス后は、ミリカをユーディスに押し付け、

　僅かに振り返って、一瞥すると、差し回しの、

一見豪華だが、黒尽くめの馬車に、自ら乗り込み、

連行されていった。ミリカが、泣き喚いた。

　「おばあさま！おばあさま！！」

　無常なわだちの音が、去って行く。ミリカの必死の呼び声は、

空しく、ただ、夕闇に吸い込まれた。

　呆然としていたサーヴェンが、やっと、我を取り戻した時だった。

　通りの向こうから、蹄の音が近づいて来た。

　一同が、驚いて闇に目を凝らす中、馬上に光り輝くような、

美少女を乗せた一行が、近づいて来た。

　「王様！！」

　ミリカが叫ぶまでも無かった。

　ユーディスが、転がるように門を飛び出し、馬前に跪く。

　「陛下！ご無事で！・・・ご無事で・・・」

　大厄災の、翌朝以来であった。

　ユーディスは、涙に暮れて、最早、声も出ない。

　ソルダムは、手綱をジャドゥビスに渡して、

ユーディスの手を取り、立たせた。

　「ユーディス・・・なぜ、ここにいるのだ？

　　ヘリアンタに、何用があったのだ？

　　それに、母上は、どうされた？

　　何より、なぜ、盗賊の一味扱いなど、されているのだ？」

　「それは・・・すべて、ルテシア参謀長、

　　ダトゥーラ・ファーゴの企みにて・・・

　　あっ！」

　急にユーディスは、通りの真ん中に飛び出し、周囲を見回した。

　「どうした、ユーディス？」

　オリザ姫は、丁度ジャドゥビスに、馬から下ろして貰っていた。

　「たった今、母上様が、ファーゴに連れ去られ・・・

　　いや、我等を庇って、ご自分から、奴等と共に・・・」

　「なんだって！？」

　ソルダムは、ジャドゥビスから、手綱をひったくった。

　「ユーディス！どっちだ！？」

　「あちら・・・右の方へ・・・」

　その応えは無かった。素早く、騎乗したソルダムは、

母の馬車の消えた方へ、一散に駆け出して行った。

　闇は夜の漆黒となり、もう、人の目鼻も見分けられぬ。

　サーヴェンは、庭に居並んだ人々を、一先ず、

屋敷に招き入れた。　暫くして、ファーゴの手の者に、

追い付けなかった、ソルダムが、戻って来た。

　「だめだ・・・何より、道がわからぬ。

　　太陽宮へ、連れて行かれたのだろうか。」

　「恐らく、な。もし、母御の持ち物があれば、

　　波動を追える。方角くらいは、すぐ分かるが？」

　ケルビンは、オリザ姫を客用寝室に休ませ、

厳重な結界を張り終えて、一息ついた所だった。

　しかし、アルナス后の持ち物など、誰も持っていない。

　そう、皆が思った所だった。ミリカが、手にしていた物を、

皆の前に差し出した。

　「これじゃ、だめ？おばあさまが、手に握ってた物だけど。」

　　　　　　　　続く

　　（萩の話の続き）

　ただ、この花の実は、厄介なひっつき虫です。

　年末の、町内会の草取りで、皆さん、ひどいことになります。

　服という服に付き、去年は、セーターを一着、駄目にした方もでました。

　草取りに、毛糸のセーターなんか、着て来ちゃダメだよ～～～　

　　　では、また、次回。

　　　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。