ぶるんねん文庫

　見て

　この悪者そうな顔

　　　　　

　前世、人間

　それも、かなりヤンチャ者

　・・・みたいな、表情では、

　ありませんか

　おお、こわ～～～っ

　　　　



　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（９８）　　

　「そんな・・・アナトス師匠が、謀反人だなんて・・・

　　うそだ・・・あり得ない！！」

　ケルビンの取り乱しようは、妻シェレーネの死を、

知らされた時より、ひどかった。

　がっくりと膝をつき、立ち上がることも、ままならぬ。

　娘のシシィでさえ、その様子に驚き、近寄る事ができない。

　コンヴァラリア男爵は、魔術師の現れ方に、多少は、

心構えがあったと見えて、あまり驚きもせず、一行を、

自分の屋敷に招き入れた。今日はもう、開門の見込みは無いが、

日没までは、政務を執るらしい。家人に皆を託し、

ごゆっくり休憩をと言うと、そそくさと、関所に戻って行く。

　ケルビンのショックも、甚だしかったが、もう一人、

ひどいショックを、受けている者がいた。セヴィリスである。

　セヴィリスは、マヤリス王妃が、生き別れた、

姉ではないかと、疑っていたから、王妃の実父の、

存在が出て来て、ひどく、気落ちしてしまったのだ。

　だが、その夜、男爵とケルビンの話を、

併せ聞いたセヴィリスは、一縷の望みを、辛うじて、

繋ぐ事が出来たようだった。

　「もう、十二、三年前になりますか・・・

　　懇意の占い師が、娘を後宮に、上げたがっていると、

　　伯母が、訪ねて来たのです。

　　当時、私は王宮の評議会の、末席に名を連ねて

　　居りましたから、伝手も、無くは無かったので、

　　引き受けてしまいました。

　　占い師は、アナトス・リグストラム。

　　後に知った所によると、世紀の大魔術師だとかで、

　　その時は、あまり見栄えもせぬ、ただの老人のようで、

　　十歳ほどの、少女を連れて来ていました。

　　侍女見習いでも、何でも良い、後宮に入れてやってくれ、

　　と、こう言うもので、それなら、簡単だと、安易に

　　養女にしたのが、運の尽きでした。

　　翌年、青天の霹靂の如く、少女は王の妃となりました。

　　私は、王妃の養父として、高待遇に具され、太陽宮近くに、

　　壮麗な屋敷を賜り、全てのものが、私になびいたのです。

　　しかし、それもつかの間。さらに翌年、突然、今度は、

　　謀反人と連座させられ、処罰される羽目に、なったのです。

　　アナトスが、よこしまな者共を集め、太陽宮に

　　討ち入ろうとしたとか。馬鹿なことです。

　　出来ぬ事は、始めから分かっていた筈だ。

　　ファーゴ参謀長が、すでに重用されていましたから。

　　あの者の目を、誤魔化す事など、出来る筈は無いのです。

　　アナトスは処刑されましたが、私は、家柄が幸いして、

　　関所の番人頭に、落とされるだけで、すみました。

　　哀れなのは、マヤリス王妃です。ルテシア王家の決まりで、

　　離婚も叶わず、まだ十四歳の幼さで、王妃のまま、

　　生涯幽閉の処罰を、受けたのです。

　　網乗り物で、虜囚宮へ送られる、王妃を見た時は、

　　アナトスの真意を、疑いました。一体、何が目的だったのかと。」

　男爵の、長い語りが終わった。

　ケルビンが、記憶を辿りつつ、ゆっくりと口を開いた。

　「アナトス・リグストラムは、世紀の大魔術師と

　　言うだけではない。約四百年前、彼が、それまで、

　　渾然としていた、魔術と、法術を、完全に分離し、

　　それぞれを、体系づけた。それ以降、生来の魔力あるものは、

　　魔術師に、無くとも、修行で力を得た者は、

　　法術師になるように、定められたのだ。

　　彼は、最後の、両術を極めた者となり、

　　以降、そのような者は、存在しない。

　　私は、彼の元で修行し、離れて後も、研鑽を積み、

　　闇の魔人と、称されるまでになったが、アナトス師匠は、

　　かつて、魔術のいろはも、分からず、己の力の扱いに

　　苦慮していた頃の私を、導いてくれた大恩師だ。

　　師匠の力は、絶大だった。光の届かぬ深海の奥底から、

　　星々の彼方の世界まで、感知できる人だった。

　　謀反なんて、在り得ない。

　　あれほどの人が、なぜ太陽宮ごときに、討ち入らねば

　　ならないと思ったのか・・・全く理解できない。」

　「マヤリス王妃・・・本当に、アナトスの娘なのかな・・・」

　セヴィリスは、諦めきれないようだった。

　「マヤリス妃は今、二十四歳。私が最後に、

　　師匠を訪ねたのは、十九年前。シシィの生まれる、少し前だ。

　　だが、あの時、師匠の許に、子供など、いなかった。

　　他所に預けても、波動は残る。感知できないはずはない。

　　マヤリス妃の、出自は、やはり不明だ。」

　「姉の、ヴィオリアである可能性は、残る・・・と？」

　だが、ケルビンも男爵も、セヴィリスの、切実な期待に、

どう答えたものか、分からずにいた。

　　　　　　　　　　続く

　　　　　

　実は、上のと並べて、

　無邪気～～な寝顔を・・・

　と、思って、ケータイを

　近づけたら・・・

　これが、敏感なんだな。

　パッと起きて、

　「撮った？寝てるの撮った？」

　と、言わんばかり・・・

　撮れへんかったワイ

　　　　　では、また、次回　

　　　　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました