ぶるんねん文庫

　ネルンブ村・・・原型はＮｅｌｕｍｂｏ。これも、ある植物の学名です。

　語感が良いように、ちょっと変えました。

　浪江町へのエールも込めて、“Ｎ”をつけようと決めてたんですが、

　偶然、もう一つ暗号が、入りました。英語で“Ｌｏｔｕｓ”です。

　そんなタイトルの歌謡曲、ありますよね・・・


　これは、睡蓮です。

　蓮の花が、近所になかった

　キッチンハウス先生の

　お庭でパチリ　　　








　・・・・・パズルって、解いてもらって、ナンボなんだけど、

　この５人の、実体モデルについての、パズルを含んだこのファンタジー、

　これだけヒントを撒き散らかして、書き込みゼロってことは・・・

　やっぱり、読者もゼロなのかなぁ



　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（８５）

　「全員禁足？無理です！

　　この館の手勢は、そんなにおりません。

　　ダルトン殿だけでも、他の方々の抵抗に遭ったら、

　　難しいと思っていたのに・・・

　　第一、オヴィディオ陛下の剣技を、あなたはご存じない。

　　あの方が、本気で動けば、我々は間違いなく、

　　返り討ちに、遭いましょうぞ。」

　「手勢は用意した。お前は、ダルトンにだけ与えるよう

　　先日渡した薬を、全員に、飲ませるだけでよい。」

　シドは、机の上のインク瓶の間に、さりげなく隠し置かれた、

小さな薬瓶を、恐ろしげに、慎重な手つきで取り上げた。

　「こんな、味も香りもきつい物を、どうやって・・・」

　「お茶やスープに、混ぜては駄目だ。

　　味の濃い物入れるか、騙して服用させよ。」

　そして、ファーゴは、小声で命じていたのを、さらに

ひそめて、こう付け加えた。

　「わかっておろうな。ヘリアンタにおわす、祖父母殿。

　　今日もお元気で、機嫌よくおわしたぞ。」

　シドは、両手で顔を覆った。この世に、これほど

恐ろしい、恫喝の方法が、あっただろうか。

　大都ヘリアンタと、この片田舎を、一刻ほどで往復できる

法術師に、老人達の命運を、握られている。

　それが、参謀長なのだ。君主にその非道を

訴え出ることも、出来ない。

　シドは、まんじりとも出来ずに、朝を待って、

迎えの準備に取り掛かった。馬や輿、それを牽く員数、

病気と言うオリザ姫の為に、医師や女中の手配・・・

　目の回る忙しさの中、シドは、こっそり台所に入り込み、

縁起物の焼き菓子に使う、匂いの強い香料に、

例の薬を混ぜ込んだ。

　本来、夏には食べぬ菓子だが、病気の姫の厄払いと

言い訳して、作るよう命じてある。これなら家の者が

間違って食べる心配はない。残りの香料は、本来の季節、

晩秋の頃までに、捨てればいいのだ。

　
　シドの、行き届いた、出迎えのおかげで、ソルダム達は、

最後の峠を、難なく越え、館での第一夜は、熱の高い

オリザ姫以外、全く、安心と平穏に、満ちたものとなった。

　いかに皆が疲れきり、寝床での眠りを、欲していたかは

翌日、館の一角が、昼近くまで、廃墟のように

静かだった事でも、良く分かる。

　熱のあったオリザ姫も、医師の薬で解熱すると、深く眠り、

シドの妻と母に、特に世話を、掛ける事も無かった。

　だから、昼餐に出て来た者は、余り眠らぬケルビンと、

空腹が、睡魔に打ち勝った、若者達ばかりだった。

　シドは、焼き菓子を、晩餐のデザートに回させた。

　全員に間違いなく、食べさせられないのなら、

出すわけにいかない。

　ファーゴ参謀長は、全員を、捕らえる心算らしいが、

主たる目的が、ダルトンなのは、変わらぬはずだ。

　下手をして、ダルトンだけを、逃がしたとなったら、

ヘリアンタで監視されている、人質達が危ない。

　シドは、はらはらしながら、日暮れを待った。

　ソルダムが格別に、挨拶をと書斎を訪れても、

気もそぞろであった。


　「これはこれは・・・私から、出向かねばならない

　　御方から、お出で頂くとは・・・お疲れかと、

　　遠慮申したのが、いけませんでしたな。」

　ソルダムは、慌てた様子のシドを、訝しんだりは、

全く、していない様子だった。

　「いや・・・母を頼んでいるのに、さらに迷惑を

　　かけてしまった。本当に申し訳ない。」

　ソルダムとシドは、互いに、これまでの経緯を話した。

　シドの話は、おおよそ世間の噂話と同じだったが、

ソルダムが話す内容は、世評とも、シドの想像とも、

全く違っていて、驚きの連続だった。

　特に、諸国を襲っている天変地異が、何者かの意図に

よるかも知れぬ、と言うくだりは、日々、非常人に

精神を、掻き乱されているシドには、妙に

納得のいく事だった。

　「そういえば、ルテシアでは、取り立てて

　　酷い災害は、起こっていませんな。

　　度を越えた大雨も、旱魃も。」

　「何よりではないか。事は、無い方が良い。」

　そして、本題の通行証の依頼に、

　「お安い御用です。すぐに、お一人に一通ずつ、

　　作成致しましょう。」と、請合ってくれたのだ。

　そこへ、シドの妻が現れ、オリザ姫が目覚めたと

知らせに来た。夕食には、出られそうだと言う。

　シドの全身に、にわかに緊張が走った。

　　　　　　　　　　続く

















　一つ、重大な部分を、跳ばしてました。

　折り縫いです。あらかじめ、片側を折ってから、縫います。

　縫い目を割る時、普通は、きせがかからないので、曲がると拙いのですが、

　これだと、きせがかかるので、きれいにできます。

　着物では、裏地の脇縫い、袖付けに使います。

　原則、縫い糸を見せない、和裁特有の縫い方だと思います。

　　　では、また、次回　　　　　

　　　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。