ぶるんねん文庫

　この写真が、個数的に、一度に一番多く、出来た時かな？

　いっぱい植えれば、いいとは思う。

　でも、一春で、ジャムを一瓶。これも、いいんじゃない？


　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（７４）

　オリザ姫は、シシィの連れ去られる先を、知っているらしい。

　「姫、青灰の間とは、何なのですか？」

　異変に、真っ先に気付いたのは、一番近くにいた

ジャドゥビスだった。

　オリザ姫は、しばらく言葉を探して、押し黙っていたが、

やがて、皆の方を見るのを、恐れるように、目をそらしたまま、

話し始めた。

　「昔、放浪癖のある姫を、閉じ込めるために、作られたと、

　　伝えられる、ドアの無い部屋です。」

　ケルビンが、人垣を押しのけて進み出たが、言葉を失い、

無言のままだ。オリザ姫は、話し続けた。

　「私は、小さい時に、迷い込んだ事があるの。

　　入ったのだから、出入り口はあるのだけど、

　　部屋の中からは、ドアは、見つかりません。

　　丸い奇妙な部屋で、どの窓からも、同じような、お城の

　　石の壁しか見えなくて、方向が、分からなくなるの。

　　頭の中が、ぐるぐる回って、ものすごく恐ろしい

　　思いをしたわ。泣き叫んで、やっと見つけてもらえたけど、

　　部屋を、自分から出る事は、できません。」

　皆は、絶句した。仕掛けやからくりの、多い城だから、

いずれにせよ、人知を超えたものでは、ないのだろうが、

それにしても、手の込んだこしらえだ。

　「そこへ、シシィを・・・？」

　「大丈夫だよ！」

　澱みかかった空気に、居たたまれなくなって、ミランが

大声で混ぜっ返した。

　「シシィは、しっかりしてるもん。平気だよ。

　　そんな位で、目ェ、回したりしないよ。」

　そうかも知れなかった。しかし、裏庭から、奥殿の北の、

勾配の急な、屋根に張り出した、部屋の外貌を遠目に見ると、

外から連れ出す事も、難しい事がわかる。

　はからずも、娘を巻き込んでしまったケルビンは、

苦悩を深めるばかりだった。他の者達も、出立の準備中、

ジョークの一つも出せないほど、緊張をみなぎらせていた。

　・・・・・王族の救出。姫の身代わりに、囚われた仲間。

　　　大帝国を名乗り始めた、敵対国への捜索の旅。・・・・・

　さらに、セヴィリスにとっては、辛い思い出の地を、

再訪することになる。ダルトンも、複雑な思いが拭えない。


　数日後、一行の旅装が整い、港にはお忍びながらも、

王女のための、立派な客船が用意された。

　夜明けと共に出港との事で、一行は、まだ空け染めの、

薄闇の中、ひっそりと城の裏門を出た。

　見送りは、国王夫妻と、近侍数人のみである。

　オリザ姫は、表向き、モンティエ公都、フェティエに、

留学した事になり、ジャドゥビスの父、モンティエ公爵は、

その事前工作のため、前日帰国している。


　満月が、西に沈み掛かっていた。

　ケルビンが、王女誘拐を企ててから、丁度ひと月。

　今宵は、ケルビンだけでなく、一行全員の目が、

城の奥殿に注がれている。そこに残される、仲間を想って、

誰の足もが、自然と止まり、そこからは見えない、

虜囚部屋を探ろうとする。

　とうとう、オリザ姫は、両親の元へ駆け戻った。

　「・・・私、行けません。恐ろしいの、三つ首犬が。

　　昔の言い伝えのように、歌であの犬を眠らさずに、

　　どうして、叔母様たちを、お救いできるでしょう。

　　シシィがいないのは、私、とても恐ろしい・・・

　　お父様、どうか、お許し下さい。叔母様たちの

　　救出に、私を行かせないで。」

　王は、戸惑った。人質を取ってしまってから、

この期に及んで、姫の抵抗に遭うとは、思わなかったのだ。

　　　　　　　　　　続く

　すみません・・・私って、根っから日本人なので、

どうも、７４回って、切れが悪くて・・・

　それと、どうしても、書きたい件りがあって・・・

　「ドアの無い部屋」・・・元は、実在の歌詞です。

　何の歌でしょうか（２番だから、知ってる人、少ないだろうな。）

　どんな部屋かなって、想像が膨らんだものの、使い所がなくて・・・

　プロの作家なら、次作用にストックして置くでしょうが、

私の場合、年齢と状況から、次作があるかどうか・・・で、使っちゃった。

　では、次回、本当の最終回。お楽しみに。

　　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました。