2011年05月21日

こごま便り3

こごま便り3
 face04いびきおひるねっiconN04いびき

 このあと、この座布団は、自分のだと思ったらしく、ねこ

 オヤジが座った事に、抗議のマーキングをしてくれました。ねこ

 もちろん、おしおきっiconN04kao_23iconN04


    The  Song  of  Wind  (65)

 水妖魔王のだぶついた腹の中には、両軍の兵士が、

生きた者も、死んだ者も、そのまま飲み込まれて、

それが、透けて見えている。

 その、余りのむごたらしさに、オリザ姫は、絹を裂くような

悲鳴を上げて、石室の奥へ逃げ込もうとした。

 その目前に、うろこ状の皮膚に覆われた、鉤爪の足が

立ちはだかった。大ふくろうが、降りてきたのだ。

 ふくろうは、黄色い眼球をぎらつかせて、オリザ姫に、

巨大な頭を寄せて来た。鋭いくちばしが、姫の服に、

今にも掛かるかと思われた。

 が、ふくろうは、それ切り頭を上げ、オリザ姫を足下に跨ぐと、

慌てて、姫に駆け寄ろうとする、ソルダムとドリスをも

無視して跨ぎ、水妖魔王に相対した。

 水妖魔王は、明らかに怯えて、後ずさっていた。

 小水妖が、親玉の危機を察して、鉤爪の足に取り付き、

かみついたり、引っ掻いたりしたが、その硬い皮膚には、

応えぬ様らしい。

 どしっ、どしっ、と、石室を揺るがして、大ふくろうは、

水妖魔王に迫り、のたのたと逃げ出す、半透明の肉塊を、

ついにその爪に、捕らえてしまった。

 獣じみた、いや、生き物とは思えぬ、濁った物音の様な 

悲鳴が上がった。

 ふくろうは、形ばかりの短い手足を、ばたつかせて、

かなわぬ抵抗を試みる、水妖魔王を、己の眼前にかざした。

 まるで、不思議な物を、観察するかのようである。

 怯えた水妖魔王は、ついに奥の手を出した。

 体表の、青いまだらを、飛ばしたのである。

 さすがの硬い皮膚も、びりびりとした痛みを、感じたのだろう。

 大ふくろうは、怒りに羽を逆立てると、鉤爪の足に、

外から見て分かるほど、力を込め、肉の塊を握りつぶそうとした。

 オリザ姫が、叫んだ。

 「やめて!!セヴィリス、殺してはダメ!!」

 しかし、遅かった。

 ふくろうの足の中で、水妖魔王は、信じられぬほど脆く、

まるで、火傷の水泡かのように、あっけなく潰れて、

濁り水の一溜まりに、帰してしまったのだった。


 ふわりと、風が起こった。

 黒い水溜りから、立ち上った一塊の黒い霧が、

その風に吹き散らされ、石室の上へ抜けて行く。

 ぎこちない動きで、戦っていた兵士達が、

ある者は、気を失って倒れ、ある者は、夢から覚めた様に、

瞬間、動きを止めた。

 小水妖たちも、全て黒い水溜りに、戻ってしまっている。

 何より、両軍の肝を拉いだのは、瓦礫の上にいる、

黄金色のドラゴンだった。

 雨雲の切れ間から射した、夕日の最後の一照が、

いやが上にも、その威容を際立たせている。

 両軍は、急いで隊列を組みなおし、正常な動きを始めた。

 水兵達は、自分達が船を降りている事に、驚き慌てて、

一旦、帰船するべく、退却し始めた。

 アルフィーニは、無意味な戦いが、どうにか終結したのを

見定めると、威厳を崩さぬように、瓦礫の山を降りた。

 そして、木々の間を、ロバの姿で抜け、人気の無い所で、

天馬になって、ラゥオールトン目指して飛び立った。

 長い一日が、暮れようとしていた。


 地下の石室では、累々と横たわる、兵士達の死体の中で

オリザ姫の言葉に、ソルダムとドリスが、凍り付いていた。

 この、アルフィーニより巨大な、お化けふくろうが、

セヴィリスだと言うのか。

 しかし、それは、事実らしかった。

 ふくろうは、己の名を聞き分けると、その姿を恥じるように

うなだれ、オリザ姫達を、振り返らぬようにしながら、

のっし、のっしと、さらに奥の石室へ、入って行こうとする。

 「待って!セヴィリス!どうしてそんな姿に・・・」

 答える声も言葉も、もう持たぬのかも知れなかった。

 セヴィリスと呼ばれた、ふくろうの姿は、

暗い闇に塗り込められ、見えなくなって行った。


 ケルビン達は、地下墓地を抜け、歩きにくい地下通路に

差し掛かった所だった。

 突如、その広からぬ空間一杯に、黒いつむじ風が

巻き起こり、四人に襲いかかったのだ。

 石つぶてが飛び、小柄なシシィは、吹き飛ばされそうになった。

ケルビンが、必死にその体を捕らえ、四人は、岩壁の、

僅かな窪みに、一塊に身を寄せて、このあり得ない強風から、

互いを守ろうとした。

 やがて、旋風は起こったときより、唐突に止んだ。

 地下は、また静かになり、ただ暗く、底知れなかった。

 しかし、ケルビンは事態の変化を、察知していた。

 巨大石棺の所に駆け戻ると、上の空井戸に向かって、

呼びかけた。もう、日没を過ぎ、外は暗い。

 「アルフィーニ!何があった?

  オリザ姫達はどうした?」

 微かないななきと、蹄の音が聞こえた。

 アルフィーニが戻って来ていたのだ。

 ミランが傍に来て、アルフィーニの言葉を通訳した。

 「水妖魔王をやっつけたって。でも、セヴィリスが、

  なんか、大変な事になっちゃったんだって。」

 「セヴィリスが、どうしたって?」

 「私よりでっかい、ふくろうの化け物に、

  なっちゃったって、言ってる。ホントだよ」

 ジャドゥビスが、疑いの眼差しを向けたので、

ミランは、むきになって言い足した。

 が、ケルビンは納得している。

 「ふくろう・・・なるほど・・・」

 その時、アルフィーニが鋭くいなないた。

 その声は、地下にも届いた。

 「なんか、後ろにいたって。

  見張られてるみたいだったって。」

 アルフィーニは、闇に強い獣の目で、周りを見回した。

 しかし、その時には、もう怪しげなものは、

何もなくなっていた。

       続く


 一難去って、また一難。kao_16

 すんなり終わらせたら、詰まらないじゃないですか。kao_13

 化けふくろうは、セヴィ君なんだって。kao12 kao07 kao12

 なんで、ふくろうなのかは、作中で説明しますが、

カバラに知識のある方なら、お分かりかも知れません。iconN08 iconN08 iconN08

 そういうバックボーン、通してあります。iconN36kao_11icon12

   では、また、次回。iconN12 iconN10 ねこ iconN10 iconN12

       今日も、お越し下さって、ありがとうございました。
 

 

  


 



 





 





 



 



 








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Posted by さあちゃん at 00:00│Comments(0)ファンタジー
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