ぶるんねん文庫

　どういうわけか、わからないが、チューリップというのは、

色によって、成長の度合いが、異なるようで、

同時に植えた、赤・白・黄色。いつも黄色が先に咲く。

　白が先の事もある。でも、絶対赤は最後になる。

　茎の、蕾との接点が、赤み掛かっているのは、

黄色が咲き切る頃、やおら蕾を膨らます。

　オランダのキューケンホフ・チューリップ公園は、皆、一斉に咲いていた。

　あれは、人為的に、加減して咲かせてたんだ。

　今頃気付いた。・・・でも、真似するのは、大変だから、自然に任そう。


　　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（５０）

　ケルビンは、なんとかアルフィーニをなだめて、

何度か、アルテミシア上空を旋回してみたが、

いつの間にか、ルテシア軍が多数入り込み、上空を警戒している。

　ちらっとでも、天馬の姿が見えると、あれよあれよと、

兵士等が立ち騒ぎ、ボウガンを構える。

　アルフィーニは、以前うたれてから、トラウマになっているらしい。

ボウガンを向けられると、どうしても、降下できない。

　・・・シシィは、ソルダムが連れて走ってくれた・・・

　愛娘の、逃れた姿は確認した。ならば・・・

　「このまま、コパロスへ行こう。アルフィーニ、いいかい？」

　天馬は、大きく進路を変え、まだ、落日が微かにセピア色を残している、

西に向かって、猛スピードで飛び始めた。


　脇街道沿いの寒村で、かろうじて、一時の休み場所を、

確保したソルダムは、これから先の、思案に暮れていた。

　急に、皆をまとめよと言われても、ジャドゥビスとミランとは、はぐれたし、

ケルビンと天馬も、戻って来ない。

　第一、この件には、判らない事が　多すぎる。そもそも、

セヴィリスとは誰か。ソルダムの疑問は、まず、そこからだったが、

幸い、ドリスとオリザ姫の話を聞くと、あらかたの事は飲み込めた。

　だが、王ではあっても、術師たらぬ常人のソルダムには、

セヴィリスを救う方策はたてられぬ。

　・・・ニグがいれば、な・・・

　ニグ・エウビュコス、ガラノデルム神殿長は、都にあるサフィール神殿の、

神官だった頃からの、親しい知人だった。

　この度の出奔も、国境の守りを兼ねた、ガラノデルム神殿に、

最後の名残の心算で、詣でたソルダムに、大伯父の遺品だと言って、

宝石を埋め込んだ大剣を託してくれた。

　「子孫に事のある時、渡してやって欲しいと、納められた物でした。

　　今を、時と断ぜずして、いつを断じましょう。お持ち下さい。」

　そう言って大剣を託し、大事に気付いて騒ぐ、神官たちを誤魔化し

そっと裏道から、ソルダムを落としてくれたのだった。

　いかに王とて、本街道の国境を、簡単には越えられぬ。

　ニグは、裏道から本街道への、綿密な地図を持たせてくれた。

　でなければ、北の山国。無事に抜けられるような、道ではなかった。

　それに、ダルトンの最後の言葉。

　「セヴィリスは、『白い石の玉座の間』にいる！」

　ソルダムは、その『白い石の玉座の間』に心当たりがあった。

　しかし、そこは都のサフィール神殿の一番奥。

今は水没し、湖底にあるはずの場所だった。

　　　　　　　　　続く

　ニグ・エウビュコス・・・また、発音しにくい人物名で、すみません。

　実体三次元モデルと、イニシャルをリンクさせようとして、

無理をしすぎた結果です。

　別にさせなくてもよかったんだけど、ちょっとこだわって・・・　　

　イニシャル？合わせてますよ。主要人物ほとんど・・・

　女性陣は、あまりしてないけど・・・　　

　「エウ」は、読むと「ゆ」になるから、“Y”。ってことで。

　　　そう言う、パズル的要素、好きです。だから、入れてます。

　　　　　では、また。次回・・・（アンデルセン・・・ボツでした）

　　　　　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました