ぶるんねん文庫

　息子が、「着物の作り方、載せればいいじゃん。」と、簡単に申します。　　　

　が、上等の和服と言うのは、大量生産品ではないので、

お客様の物を、勝手に載せる訳には、参りません。　　

　そこで娘の着物を、載せる事にしました。

　うちは、そんな上等の一品物、買ってやれないし、

　特に、これは長襦袢。つまりアンダードレス。

　これ全体が、人目に触れる事は、多分ない。

　だから安心、と、言う訳で、始めます。

　まず、反物を裁ちます。・・・違った・・・この前に地直しをします。

　ひたすら、高温のアイロンで、焦げないように満遍なく、

長～い反物、全部当てます。結構大変で、退屈で、絵にならない。

　それから、２mくらいの長～い机で、寸法計って、ちょきん　　　

　（浴衣以外で、自分で裁ったの、初めてです。１０年以上習ってんのにね）


　　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（４４）

　店の奥が騒がしいので、ジャドゥビス達は、入り口付近の、

席に着いて、向後策の話に入った。

　と言っても、やはり喋るのは、ダルトンとケルビンばかりだ。

　城内の隠し通路の、複雑な仕掛けとか、セヴィリスが、

捕われていそうな、場所の心当たりとか、必要事項は

多いのだが、どの道、今すぐの解決には、繋がらない。

　オリザ姫は、時々ふと後ろから流れる音楽に、

心を奪われているらしかった。

　観衆の手拍子や拍手も、昼間だけに礼儀正しく、

時折はっきりと、歌声が響いてくる。

　　　窓辺に花を届けよう

　　　私の想いがどれほど咲いたか

　　　あなたに見て欲しい

　　　花びらの一つ一つに　ほら

　　　書き記してある

　　　愛してる　愛してる　愛してる　と

　　　・・・・・　　

　「姫、気になるかの？」

　ダルトンに気付かれて、オリザ姫は、慌てて皆に向き直った。

　「いえ、あの・・・ラゥオールフィアの、古い恋歌だったので・・・」

　ゆっくりしたテンポながら、手拍子が起こり、声は遠のいた。

　が、歌詩が進むと、急に手拍子は乱れた。

　歌の調子が、変わった様だ。

　　　あなたの窓辺に海鳴りを聞きに行こう

　　　波に風に打ち明けよう

　　　私の心に吹きすさぶ想いの嵐が

　　　どれほど激しいかを・・・

　　　・・・・・　
　
　速くなったリズムに、またしてもオリザ姫は、

心惹かれて、つぶやいた。

　「四番だわ・・・知ってる人、ほとんどないのに・・・」

　その言葉より早く、ケルビンが立ち上がっていた。

　伸び上がって店の奥を窺う。が、人垣に埋もれて、

肝心の歌手の姿は見えない。かなり小柄なようだ。

　そのまま話を放って、ステージに近づく。と、歌い手も、

その人物に気付いたらしく、旋律は急に途切れた。

　「パパ！！」

　「シシィ？！！」

　そこにいた全ての人物が、振り返った。

　魔術師のローブを翻して、ステージに駆け寄るケルビンに、

泣きながらシシィが飛びつく。ケルビンは、若作りを忘れて、

その髪には白髪が混じり、頬には皺が現れているから、

十八歳のシシィの父親で、全く違和感がなくなっている。

　「どうした、シシィ、何をしてる？なぜこんなところに・・・」

　「だって・・・だって、ママが、急に死んでしもてん。

　　急な病気で・・・」

　「シェレーネが・・・死んだ？」

　「パパに知らせよ、思てんけど、手紙書いても、中々来はらんし、

　　待ちきれんと、ベルバビーノのうちまで行ってん。

　　せやけど、会えへんかったから、とうとうここまで・・・

　　遠かった・・・」

　「シシィ、ここでは込み入った話が出来ないだろう。

　　宿へ帰って、部屋で話しなさい。

　　ここの店主には、私が話しておくから。」

　ソルダムが、そっと気遣いながら声を掛けた。

　「あなたは・・・？」

　顔を上げたケルビンを見て、ソルダムは目を見張った。

見る見るその顔から、皺と白髪が消えて、

ソルダムと変わらぬ年ほどに、若返ってゆく。

　しかしソルダムは、それ以上驚いた様子を見せず、

　握手の手を差し出して、名乗った。

　「お初にお目にかかる。ソルダム・オヴィディオと申す。

　　シシィには、ひとかどならずお世話になり、ご恩返しに

　　お父上探しを、手伝わせて頂いたが・・・」

　「魔術師、ケルビン・ナルキサス。娘が世話になったようだ。」

　二人は手を握り合った。背後のテーブルでは、ダルトンが、

複雑な笑みを浮かべている。

　　　　　　　　　続く

　・・・・・と、いう、トリックが、隠されていたわけです。

　あちこちに、ヒントはばら撒いてあったんですが、

　お気づきの方、いらしたでしょうか。

　　　　　　　　　　　　

　ラゥオールフィアの恋歌・・・書くの、恥ずかしかったです。

　だって、滋賀咲くの中には、本物の詩人の方もおられる訳だし。　　　　

　本当は、１番から４番まで、全部あります。

　長いんで、割愛しましたが、４番に、このお話全体について

　あるトリックのヒントがあります。

　とっくにお気づきの方も、おいでかも知れませんが、

　誰も、○○でしょうって言ってくれないんだもん。

　　　　　では、また次回　　　　　　

　　　　　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございました