ぶるんねん文庫

　「しる万」さんの、「寺子屋力石」のチャリティー用に、展示している、
　
　その中の、小さな作品。

　「春の訪れ」

　作者は、森純子先生。我が愚娘の、絵の先生。

　昨年春、芸術系大学入試説明会で、初めて森先生の大作を見て、

本気で、欲しいと思ったけど、お金の準備もなく、諦めてました。

　その時、観光客らしい人達が、ちょっと間違えて、入って来てしまいました。

　すぐに、その人達は間違いに気付いて、出て行こうとしたけど、

森先生の絵を見て、「これだけは見せてもらおう」と言う感じで、

しばし、絵の前にたたずんで、鑑賞なさってから、出て行かれました。

　それくらい、人の心を惹きつけるものを持った、絵を描く人なんです。

　ご本人は、小柄で優しげで、ちょうど、日向に咲く、アルメリアの花のよう。　　

　どこから、あんな魅力のある絵を描く力が、出てくるのか不思議なくらい。

　一度、お時間ありましたら、ご覧になって頂きたいです。大きい絵もあります。

　彦根市立佐和山小学校正門前の、お料理屋さん「しる万」で開催中。

　よろしく


　　　　　Ｔｈｅ　　Ｓｏｎｇ　　ｏｆ　　Ｗｉｎｄ　　（３３）

　ルナンシアからアルテミシアへ、山間部を旅していた、

ソルダム、シシィ、ミランの三人は、ようやく、

険しい峠から峠の、道のりを終えようとしていた。
　
　ミランの怪我も良くなり、シシィと二人、喋らしておけば、

いつまでも、半ば口喧嘩の会話をやっている。

　そのシシィの口数が、目に見えて減ってきた。

　ソルダムには、そのわけが分かっていた。

　旅費が、心もとなくなって来たのだろう。

　ミランの治療費を、立て替えたせいもあるし、

もともと、コパロスとベルバビーノの、往復分しか

持っていなかったのだから、仕方がない。

　だが、生来の勝気さで、ソルダムに、頼むと言えないのだ。　

　ミランは、と言えば、間違いなく一文無しである。

　アルテミシアまでの、案内人の名目が付いているから、

ソルダムの世話に、なりっ放しで、平気な顔をしている。

　シシィは、このお調子男と、同等になりたくないと、

内心、思い詰めているのに、違いなかった。

　アルテミシアが近づき、街道の人通りが、増えてきた頃、

ある宿場街で、突然、ソルダムは、行きずりの店に入り、

一台の、中古のシタールを買い求め、シシィに、

伴奏してやるから、歌を歌えと言い出したのだ。

　「歌えるだろう？いつか、良い声で、歌ってくれたではないか。」

　シシィは、戸惑った。よもやこんな所で、大道芸人の

真似事をする羽目になるとは、考えた事も無かったのだろう。

　だが、日々軽くなる一方の、財布の中身を考えると、

今すぐ引き返すか、羞恥を棚に上げて、人前で歌うか、

二つに一つである。　

　「歌は、・・・歌えるけど、お金になるんかなぁ」

　「分からぬが、中々の達者だと思ったのでな。」

　シタールは、六弦の楽器である。それを、器用に調弦して、

ソルダムは、簡単な和音を、幾つか弾いて見せた。

　「子守唄・・・よう覚えてたね。いっぺんしか歌とてへんのに」

　「耳に残る、旋律だったからな。」

　まだ、夕食には早い料理屋の、テラスの席で、

シシィは歌い出した。小柄な体の、どこから出るかと思う

豊かな声量で、かなり遠くを行く人までが、おや、と、

振り返るほどであった。


　　ねむれ　ねむれ
　　　　
　　　　よい子でねむれ
　
　　　　おそらをながれる　ほうきの星が

　　　　もうすぐ　あなたを　つれに来る

　　　　あなたをつれて　ゆめのくにへと

　　　　たのしいたびを　するために　

　　
　　　　ねむれ　ねむれ

　　　　よい子でねむれ

　　　　なみにゆらゆら　つきのふね

　　　　きらきら　金のすなはまふんで

　　　　あかいゆうやけ　おひさまこえて

　　　　かがやくくもの　むこうまで　


　「お嬢さん、歌うのかい？」

　料理屋の主人が近寄って来て、声をかけて来た。

　話は、とんとん拍子にまとまり、主人は、店の奥に、

テーブルを寄せて、急遽舞台を設えてくれた。

　「あ、オレ、剣舞やろうかな」

　ミランがまたしゃしゃり出たが、シシィが一喝した。

　「いらん！食べるとこで、物騒なもん、せんとって。

　　第一あんたのん、剣舞でも何でもあらへんわ。へったくそで。

　　ソルダムに、正統派の剣術でも、習ろぅたらええねん。」

　痛い所を衝かれ、ミランは、うなだれた。魔戦士を名乗ってはいるが、

剣術が我流なのだ。それを、剣とは縁もゆかりも無い、女の子に、

悉皆見抜かれていたのだから、ショックが大きい。

　「暇を見て、教えてやろう。体が動くのだから、

　　基本ができれば、すぐ強くなれる。」

　「でもさ、オレ、謝礼金とか払えないよ」

　「ほな、呼び込み、したらええやん。」

　ソルダムが、楽しそうに笑った。いつも眉根を、悩ましげに

寄せているので、シシィは、ソルダムが朗らかそうにすると

ほっとするのだった。

　　　　　　続く

　なんで、「風の歌」　なんだろ、って

思ってくださってた方、少し題名に近付きました。

　もともと、「星まで届く風の歌」だったんですが、

次男が、「長ぇよ、そんなん」　なんて言うから、

　「じゃあ、どんなのがいい？」って聞いたら、

　「Ｓｉｍｐｌｅ　ｉｓ　ｔｈｅ　Ｂｅｓｔ！！　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　で

　　いいんじゃない」

と、いうので、その通りにしました。　　　　

　だから、このファンタジーの名付け親は、次男です。　
　　
　　　　　今日も、お越し下さって、ありがとうございます