ぶるんねん文庫

　・・・すみません。私じゃありません。

娘のカメラから、借用しました。

こういう感覚って、天性なのでしょうか

私、真似できません。

一体、どこのだれが、捨てるだけの蜜柑の皮で、

ネコを作ろうと、思いつくのか、いっぺん、娘の頭の中、

開けて見て見たいものです。



　　　　　　　　　　碧氷窟の双生児　　　　（３３）


　ふたりにとっては、眠れぬ、長い夜が明けた。

だれかが、『全部、間違いだったよ』と言って、助け出しては

くれまいかと、虚しい期待を、抱こうともしたが、

深い絶望は、そのような夢想さえ、させてくれなかった。


　暗い牢獄の、小さな天窓から、真冬の冷たい青空が

望めるころ、ついに刑場の準備が、整ったという知らせが来た。

兵士達は、ふたりを後ろ手に縛り上げると、

突然、サフィールの長い白髪を、肩のあたりで、切り落とした。

ダクリー婆さんは、少しでも、年がいって見えるように

ジルの髪は、いつも短く刈り込み、サフィールは、

長くして、娘らしく結い上げてやっていた。

それを、何の説明もなく、突然切られ、

サフィールは、悲鳴のような声を上げて、泣き出した。

　「縄に髪が絡まぬよう、女は髪を切ることに、なっている。

　　知らんのか」

　理屈はそうでも、理不尽な死を、迎えようとする

ふたりには、何の慰めにもならなかった。


　ジルは、もつれて崩れそうな足に

あらん限りの力を込めて、慎重に歩いた。

つまずいて倒れても、だれも起こしてくれないばかりか、

自力で起き上がる間を、与えられることなく、

刑場まで、引きずられることが、分かっていたからだ。

　サフィールは、ずっと泣き続けていた。

泣くことでしか、自我を保つことが、できなかった。

もしだれかが、強い口調で、泣くなと命じたら、

恐らくサフィールは、発狂していたに違いない。


　刑場は、湖の岸近くに、設けられていた。

仮拵えの、荒い柵で囲った、人の肩位の高さの

壇の上に、絞首台が立てられ、その横に、

火刑用の薪が積まれている。

　もしふたりが、本当に化け物の類で、

縛り首で、死なない場合、そのまますぐに、

火刑にする、その用意であるらしかった。

　・・・もう、助かりようはない・・・

　壇の上に、引き上げられたふたりは、

一瞬、わが身の在り様を忘れた。

　湖が、凍らぬはずの、暖かなはずの湖が

岸に沿って、白く凍りつき、低い冬の陽をはじいて、

銀色に輝いていたのだ。
　
　　　　　　　　　　　続く
　

　むちゃくちゃ、重いです。お読みになる時、

相当、力　入れていただかねば・・・って

最後に書いちゃ、間に合わないですね。

　多分、次か、その次で、終われます。

　　お越しくださって、ありがとうございました。