ぶるんねん文庫

　月へ行くのは、うさぎじゃなかろうか？

　まあ、いいけどね。で、月は？って訊くと、

　描かないのが、ミソなんだそうな。

　そう言うもんかね

　　　　

　こんな程度の、イラストを描く人は、

　さぞかし、いっぱいいるんだろうな。

　これで、食って行くのは、大変だよ。

　分かってるかい娘よ

　（『まるねこ』シリーズは、一まず終わります。）　


　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（１４３）

　ドリスは、アルフィーニの案内で、分かる限り、

一番近くの人家に、貸し馬を預けると、夜の明けぬうちにと、

急ぐ天馬の背に乗って、空の高処へと舞い上がった。

　目指すは西、と言っても、西の何処か、分からない。

　アルフィーニは、コーブリオンの赤い魔女、

アネッサ・リーの波動を探って、飛んでいるのだ。

　かつてのコーブリオン帝国は、現在のクレーベスタより、

更に広範囲を統べていた。だが、魔法使い共の、

群れ住まう所は、その頃から、首都ベルバビーノの南部から、

「真白き三日月」の外側の、山間部であった。

　天馬は風を裂き、宙を切り、夜明けにはルナンシア上空に

到達していた。この辺りは、つい数日前、散々ミランを

探し回った所である。

　だが、アルフィーニは、術師三人がかりで、探した時には、

見つけられなかった異常を、感じ取っていた。

　「見つけた！アネッサ本人だ。間違いない！」

　ドリスは、驚いて下を見た。山間に、ルテシア軍の黒い幟が、

無数にはためいてはいるが、他に変わった事は、何も無い。

　谷あいに、小さな集落が見えた。ミランの最後の

足跡のあった所だ。ここから、南の離れ里へ行くと言って、

ミランは消えてしまった。

　その近くで、アネッサ・リーの波動が確認された、

と言う事は・・・

　「ねえ、もしかして、ミランがいなくなった事と、

　　アネッサ・リーが、動き出した事って、

　　関係あるんじゃない？」

　「あるかも知れぬ。見えるか、あの荒地の廃屋。」

　アルフィーニは、僅かに体を傾け、ドリスに下を見せた。

　まるで、よく描かれた、絵巻物の景色のように、

小さな集落から、森の細道沿いに、番小屋の屋根、

離れ里の数軒と、薬草畑が続いている。

　が、森のはずれの荒地に、背の高い枯れ萱に埋もれるほど、

小さな廃屋が、確かにある。

　「あの時は、ルテシア軍を警戒して、あまり高度を、

　　下げられなかったから、見過ごしたかも知れぬ。

　　それとも、アネッサが、魔法で隠していたか・・・」

　「薬使いの離れ里へ、行こうとして、ミランは間違えて、

　　あそこへ、行っちゃったのかしら。」

　「間違えたか、導かれたか・・・

　　ともかく、あそこへ行ってみよう。

　　ミランの手懸りが、見つかるかも知れぬ。」

　夜が明けきって、人々の動き出す時刻ではあったが、

人目を憚っている事態ではない。

　天馬のまま、着地したアルフィーニは、それでもすぐに

黒馬に姿を変えると、枯れ萱を掻き分け、廃屋に近付いた。

　漆喰壁は落ち、茅葺き屋根も抜け、人の住める姿を、

もはや留めておらぬ、恐らく、翌春には自然の中に、

飲み込まれてしまうであろう、荒れ果てた小屋。

　しかし、黒馬のアルフィーニは、突然口角を釣り上げ、

嘶き、人語で叫んだ。

　「出て来い！！アネッサ！！

　　貴様の手下の蜘蛛使いは、私が殺した！！

　　今、また貴様を、ここまで追い詰めた！！

　　もはや逃さぬ！出て来て、今一度、勝負しろ！！」

　ガハハハ、と大笑いする声が、荒地から空一杯に、

響き渡った。と、同時に、雑草だらけの荒地は、見る間に

巨大な城郭が建ち上がり、二人をその内部に、取り込めて

しまったのだった。

　　　　　　　　　続く

　ついに、第三部らしい所が、出てきました。

　前回分と、どう繋ぐか、また、これが苦労なんだけどな・・・

　時間的に入れ子にすると、ホント、大変なんです。また、時間割表書かなきゃ・・・

　実体モデル君達も、お仕事、一人だったり、５人だったり

　スケジュール調整って、大変なんだろうな。★★★★★（この意味分かる）

　　では、また次回。『まるねこ』シリーズは、気まぐれ娘のアイディアと、空き時間次第。

　出来上がったら、載せます。お気に召したら、褒めてやってください。コメントで。

　　　　　　今日もお越し下さって、ありがとうございました。