ぶるんねん文庫

　キッチンハウス先生が、ご覧になって、

　「ウトウトしてる人に、『ねてた？』って聞くと、

　　こう言うよね。でも、絶対寝てたのに。」

　ですって。

　ウチの場合は、娘本人。

　高校時代、いや、中学校、小学校、幼稚園・・・

　ず～～っとだったな。朝、起こしに行くと、

　「うっさい！起きてる！動いてるやんか！！」

　で、結局、寝てる。それで、遅刻する。

　時計で、時刻は読めても、時間の経過を、

　読み取れないとわかるまでが、大変でした。それを自覚させて、自分で解決策を、見つけるのもね。


　　　Ｔｈｅ　Ｓｏｎｇ　ｏｆ　Ｗｉｎｄ　（１４２）　　　

　ソルダム達が、アルテミシアから、客船に乗り込むまでは、

どうにか曇り空で、保っていたのが、「真白き三日月」を

西へ進むにつれ、雨が降り出し、徐々にひどい豪雨となった。

　湖を行く客船は、川船より大型である。

　目的地のルナンシアへは、途中の航路の幅が狭く、

大雨で、視界が利かなくなると、客船は進めない。

　水上行を三日と踏んで、細かく日程を組んでいた、

ソルダムとユーディスは、四日目の夕刻に、

これ以上は、危険で進めぬと、船乗り達に言われ、

予定外の港町で、下船する事になってしまった。

　モーズロードン北西部、ナタレンスの公都、グロリオーサ。

　町の西の高台が、辛うじて大水を、免れてはいるものの、

見下ろす低地は、まるで、水に家を浮かべたようで、

やや小高い丘に、建っている筈のグロリオーサ城も、

周囲の城壁が、いやに低く、水から頭を出している。

　城も、浸水しているのだ。

　ジャドゥビスの、父親からの便りに、そう書かれて

いたのを、二人は思い出した。

　便りを貰ってから、十日以上。しかし、水は、

少しも引いていない。大変な洪水である。

　湖沿いの、幾つかの港のうち、船の着けられるのは、

ここ一箇所だけとあって、桟橋は順番の制限がかけられ、

客船は、降りる者を降ろすと、すぐに、桟橋を離れると言う。

　中には、出水を見て、そのまま、引き返す客もいる。

　二人は、慌しく下船を決断し、土砂降りの雨を突いて、

上陸したものの、町の有様には、途方に暮れてしまった。

　「とにかく、北へ向かう道を、探しましょう。」

　「いや、この雨の中、夜道は危険だ。

　　出発は、明日でよい。町で情報を集めよう。

　　安全な道を、知っている者が、いるかも知れぬ。」

　浪々の旅も、無駄では無かったようだ。

　決まったルートを、従者つきで、往復するばかりだった

ユーディスに比べ、底抜けの脳天気と、女性を連れ、

途中からは、足弱の姫君まで抱えて、旅を繰り返した

ソルダムは、時折、ユーディスより、世慣れた一面を

見せる様になっている。

　小都で唯一、浸水を免れている、この地域は、

避難民と、足止めを食った旅人で、凄まじい混雑に

見舞われていたが、日が暮れると、人々は、どうにか、

屋根のある所へ納まり、混雑は徐々に絶えて行った。

　二人は、路銀に物を言わせて、上宿を取り、

船旅の疲れを、揺れぬ寝床で癒した。

　しかし、旅路は困難なものに、なりそうだった。

　自由国境地帯の、集落毎には、ルテシア軍が駐留し、

それまで、租税もさして掛からぬ事から、

いちいち、人の頭数など、届ける必要も、無かったのが、

急に、あれこれと締め付けられ、人々は戦々恐々と、

し始めていると言う。

　そこを、急ぎ旅で、通り抜けねばならぬ。

　面倒を起こさず、やり過ごす手段が、思いつけず、

二人は、浅い眠りと物思いを、繰り返していた。

　その時、窓の外で夜警団が、騒ぎ出した。

　「化けもんだぁっ！！

　　お城の上に、ドラゴンが飛んでるぞぉっ！！」

　深夜の雨中に、わらわらと、人々が飛び出す。

　ソルダムとユーディスも、飛び起き、窓から外を見た。

　水面に、漂うかの様な城の上空を、金色のドラゴンが、

巨体をのたうたせ、浮かんでいる。

　　　　　　　　　　続く

　タイの洪水とは、無関係です。だって、ジャドゥビスのお父さんからの、お手紙の件、

　９月２８日、１２０回だもん。まだ、あんな大洪水は、起こっていませんでした。

　起こりそうな、気配くらいは、あったかも知れないけど。

　金輪際、災害なんかテーマにしない。

　劇的で分かりやすいけど、被災者の方々に、申し訳ないから。

　次が、もしあったら、違うテーマにします。

　　では、また次回。今日も御越し下さって、ありがとうございました。