2013年04月11日

母親のできること

 大学へ行ってきました。成安造形大学。まるねこちゃんの大学。

 何しに?って?・・・休学届けを出しに。

 父親の無理解さに、心折れて、力尽きた娘。

 力の手加減無しに、必死に課題の絵を描く、まるねこちゃん。

 その状態を、なんと見るのか。

 疎外感を感じるのか。苛立ちが伝染するのか。

 子供大人の、馬鹿オヤジ。55歳過ぎての、大狂乱。

 買ったばかりの、小型テレビ、ラジカセ、LEDスタンドを、日々、次々に投げて壊した。

 ラジカセに至っては、壁に投げつけた。壁は砕け、大穴が開いた。

 天井照明もぶっ壊した。すさまじい音がした。

 部屋中、ガラスの破片だらけになった。

 やぐらこたつも壊した。その破片が手に当たり、さあは怪我をした。

 それを見て、まるねこちゃんは、泣いて家を飛び出した。夜遅く。10時過ぎてた。

 さあは、探しに行かなかった。行き先は、分かってた。

 こんな時間に、飛びこませてくれる所は、分かっている。近所の親友の所だ。

 もし駄目なら、駅前の交番。昔、長男が暴れた時、そんな話をした事があった。
 
 数字と英語は苦手でも、記憶力はいい。覚えているだろう。

 長男の時は、おチビだったから、叱り付ければすんだ。

 (身長が伸びたのは、中3後半から。伸びだすと共に、大人しくなった。)
 
 さあの反応に、オヤジは驚いたらしい。「探しに行け!!」と騒いだ。

 「家を片付けてから行く。行き先は知ってる。この荒れた所に、連れて帰れない。

  事によったら、向こうの親御さんが、送って来られるかもしれない。

  とにかく、疲れてるだろうから、帰ってきて、すぐ寝かせてやりたいから、

  布団に入れてやれるようにしてから、迎えに行く。」

 そんな話をした。さあは、むちゃくちゃ冷静だった。

 心が、氷のように冷たくなっていた。

 案の定、すぐに親友のお母様から、電話が掛かった。

 次男の友人が駆け込んできた時、さあも、同じ反応をした。

 親って、そう言う風にするものだ。分かっているが、本当に有り難かった。

 迎えに行った。帰らないと泣く娘を見た。その時、本当に困った。

 深夜に申し訳なかったが、場所をお借りして、少し話して、連れて帰った。

 それから暫く、まるねこちゃんは、体調不良を次々起こし、不登校状態になった。

 病院巡りが始まり、そこらじゅうを検査した。ドクターの中には、鋭い人もいて、

 「メンタル的な原因に、心当たりは?」と、尋ねて下さる方もいた。

 どうにか、成人式には復調し、振袖を着た。

 広くした身幅があまるほど、ぽっちゃり娘は、痩せてしまっていた。

 久々に、中学高校のお友達に会い、寺子屋さんお見立ての振袖を褒められ、

 彦根会場唯一の日本髪を、新聞記者に褒められ、

 パソコン友達も、写真をUPすると、皆、褒めちぎってくれたらしい。

 まるねこちゃんは、ちょっとずつ元気になった。でも、大学の状態は、よくなかった。

 「目いっぱい頑張れば、普通に卒業できるかも。」

 頑張れるだろうか・・・まるねこちゃんは悩んだに違いない。

 親友は、東京の会社に就職し、彦根を離れた。

 夜遅い出発を、わざわざ見送りに行ったりした。もう、駆け込む先は無い。

 オヤジが暴れたら・・・もう頑張れない。

 まるねこちゃんは、駅前の大型ビジネスホテルを、避難所に考えた。

 ・・・お金が要る・・・

 アルバイトと学業を両立できるか?

 ・・・できない・・・目いっぱい頑張らないと留年する・・・

 留年前提で、カリキュラムを組むか・・・でも、またあんな事になったら?

 無制限に留年できない。オヤジが定年、ままっちも、体力限界・・・

 そうして、出た答えが、

 『休学して、アルバイトして、お金を貯め、同時に、気持ちを立て直す。

  思うほど稼げなくとも、最低限、ココロの充電だけでもする。』

 ここまで言われると、反対できない。さあは、今以上、余分な小遣いをあげられない。

 学費以外の、通学費、画材費、小遣いは、さあのパート代から出ている。

 目いっぱいの授業をこなしながら、アルバイトは無理だ。

 当然だが、条件は付けた。

 「期間一年。必ず学校へ戻る事。無茶をしない事。

  その後、留年してでも、必ず卒業する事。」

 長男は、留年の上、大学院へ行った。7年間学生をした。

 次男は、見かけは順当だったが、医者を目指し、塾に幾ら払ったか分からない。

 結局、保健学科に入ったから、失敗したと言える。大学入学当初は、随分苛立ってた。

 だから、娘が順当に卒業できなくても、文句は言えない。

 3人平等にしてやろうと思うなら、休学の上、留年させてやるしかない。

 もともと、高校卒業さえ危なかったのだ。

 絵なんか、もう描かないとか、私は才能無いから、やめるとか、言うのではない。

 「絵が描きたい。でも、学校の課題をこなす、気持ちの強さが出ない。

  お金が、この世の全てではないけど、今の私には、お金は『安心材料』

  だから、少しは、自分の稼ぎを、財布に入れたい。そうすれば、安心して

  絵が描ける。いずれ学校へも、戻れるようになるかも知れない。」

 少々、お脳が弱いと思っていた子に、理屈で説得された。

 親バカだ。自分で思う。思いながら、休学届けに判を押した。

 帰りの道に、桜吹雪が散っていた。満開だった。

 来年、この桜を、笑顔で見上げられるだろうか。

  親なんて・・・親なんて・・・何もできない。

 もう、桜を美しいと、思う日が、来ないかもしれない。

   心の痛い春。散る花びらは、どこへ行くのだろうか・・・

  



Posted by さあちゃん at 11:01│Comments(2)
この記事へのコメント
はじめまして。
思わずコメしてしまいました。
状況等は違いますが、我が家の娘が高校を退学しました。
一生懸命、親はせめて高校だけはと説得しましたが、すればする程、娘は遠くへ行きました。
親ができることって、本当に何でしょう。
虚しさや悲しみが押し寄せ、苦しんでいます。
Posted by サファイア at 2013年04月10日 11:51
Dear サファイアさん
 本当に、親の出来ることは、・・・ないです。
 ただ、お嬢様は、未成年でしょうか?
感情に任せて、意思の疎通を絶ってしまわれると、いざと言う時、病院にも行けなくなってしまいますから、
どんなに、気持ちや距離が離れても、本当に手を放すのは、もう少し先に延ばされた方が、いいかも知れませんね。
 大学生でも、成人していても、未成年扱いなんです。
いざ手術となると、「親のハンコがない」と言って、二の足踏まれました。命の瀬戸際でも、そうなんです。
 
 今は高校も、通信制や大験が、代わりにありますから、お嬢様が落ち着かれたら、
よくお話し合いをされてはいかがでしょう。
 私も、知り合いのお子様達が、必ずしも最短距離でなく社会人になられた例を、
数々見ていなかったら、もっと騒ぎ立てたかも知れません。
 中退、留年、浪人、定時制へ転校、就職できず留学・・・
子供の数だけ道があり、親達は、その度に、慌て騒ぎ、泣き嘆き、溜め息をつき、涙と共にハンコを押す・・・
 皆さん、紆余曲折の後、ちゃんと独り立ちされ、お勤め人、自営業、いいお母さんになられてます。
 
 でも、今は、桜もタンポポも、涙無しに見ることができません。
春の日差しにカーテンを閉ざし、気持ちの堂々巡りに、溜め息をつくばかりです。
 
Posted by さあちゃんさあちゃん at 2013年04月11日 10:51
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