2016年06月18日

まあ、これも愚痴ですけど・・・


 泣いている人を見ると、人間の脳味噌には、

 自分より弱っている相手を、保護しなければ、という、

 種族保存の本能に基づく感情が生まれてくる。

 ・・・と、されている。

 一方で、さらに古い、哺乳類以前の世代から持っている、

 弱肉強食の本能が、自分より弱い相手とみなして、

 餌食にするために、更に攻撃を加えようとする。

 ・・・らしい。

 どちらにしても、人前で、泣いて見せると言うのは、

 危険な行為である。相手が保護してくれたとしても、

 結局、当の相手より、下の立場に置かれるのだから、

 保護を受けた時点で、生殺奪与の権限を、相手に取られる、

 ということなのだ。

 私は、かつて、泣き虫であった。

 乱暴な言動、理不尽な対応に遭うと、どうしても感情の高ぶりが

 抑えきれず、わあわあと、泣き喚いてしまうのだ。

 泣き喚きで有名になった、カラ出張県会議員どころではない。

 あれの数倍は、激しく泣き喚いていた。

 ・・・小学校時代の事である。

 朝、登校すると、机の中に、異様な物が入っていた。

 見た目は、何かの天婦羅であった。

 昨夜のおかずの残りか、何かであったろう。

 具材は緑色だった。私は、それを手に取ってしまった。

 ・・・iconN05・・・

 サヤインゲンの天婦羅に、違いなかった。

 が、そう認識するより早く、男子の一人が叫んだ。

 「カマキリの、天婦羅やぁっiconN04iconN04

 私は、鋭い悲鳴を上げ・・・たかどうか、覚えていない。兎に角、

 手にした物を、その場に投げ捨て、教室を飛び出し、

 廊下の隅にしゃがみこんだ。それ以上、恐怖で動けなかった。

 教室内は、騒然となった。が、床の上の物体は、誰が見ても、

 サヤインゲンの天婦羅であり、ただ、万が一にも、

 本当にカマキリの天婦羅であったら嫌なので、

 クラスメートが遠巻きにしている状態だった。

 担任がやって来た。朝の会の時刻だから来たので、

 誰かが呼びに行ってくれたのではない。

 そして状況を見て、他の児童から話を聞いて、

 問題の物体を回収して調べ、と言うか、見てみて、

 結果、イタズラの仕掛人ども、男子5、6人に、

 特大製のカミナリを落とした。

 カミナリの論点は、4つだった。

 まず、学校に、授業に必要なもの以外を、持ち込んだこと。

 それから、人の机の中に、驚かせる為に、要らぬ物を入れた事。

 それから、「カマキリの天婦羅」などと、

 ありもしない「ウソ」をついた事。

 最後は、戦中戦後の食糧難を体験されたであろう、そういう年代の、

 先生らしい怒りであった。

 「食べ物を、無駄にした。」

 まだ、食べ物の無駄は、「もったいない事」だと、

 巷で、普通に言われる時代だった。

 イタズラ男子たちは、教室の戸口から、廊下の私に向かって、

 一応、謝罪をした。

 だが、私は、そのまま廊下から動けず、

 午前中の授業をボイコットした。

 わざとではない。どうしても、感情の高ぶりが止まらず、

 涙が止まらなかったのだ。

 手には、気味の悪い感触が残り、手洗いに行きたかったが、

 古い校舎のトイレは、気味の悪い所でもあり、

 一人で行く事は、怖かったし、足の震えも止まらなかった。

 当時、まだ長休み(2時間目と3時間目の間の20分休憩)がなく、

 トイレが、怖くないほど賑わうには、昼休みを待つしかなかった。 

 他にも、上靴に、特大製の毛虫が入っていたり、

 (当時、下足箱は教室の前にあった。廊下が土足だったと思う。)

 流行りのプラスチックの筆箱を、割られたりした。

 (象が踏んでも壊れないはずだったが、机の脚の下で、あっけなく砕けた)

 次第に、イタズラが暴力化するうちに、一人の転校生が来た。

 特別製の乱暴者であった。

 彼が、勉強で褒められたところを、見た覚えはない。

 むしろ、叱られ、立たされ、うなだれている所しか、覚えていない。

 たしか、九九も、まともに覚えていなかったと思う。

 算数の時間になると、教室の端の席から、一人ずつ、

 「はい、3の段を」、「次の人は7の段」と、一人1段ずつ、暗唱していく。

 彼が出来ない子である事を、担任は知っていて、順番が来ても、

 いつもいつも恥をかかせるのも、哀れと言う事か、

 「何の段なら言える?2の段?5の段?」と、

 簡単な段を選ばせたりした。しかし、結局それも言えず、

 彼は、いつも立たされていた。

 その代り、休憩時と体育は、凄まじかった。

 ルールを守るのが得手ではないから、彼が入ると混乱するのだが、

 何しろ、腕力が強いから、皆も彼をルールブックにするしかなかった。

 だが、私は得心しなかった。

 そんなゴリ押しは通らないと、いつも張り合った。

 言葉を操るのも不得手な彼は、機関銃のように浴びせられる、

 屁理屈の雨に、腕力で応戦するしかないようだった。

 事件は、導入されたばかりの「長休み」に起こった。

 仲よく、元気に外で遊びましょう、というのが、コンセプトだったが、

 外遊びの苦手な私には、ただの苦痛な時間に過ぎなかった。

 ドッヂボールをすることが多かった。ルールが簡単だからだろう。
 
 ただし、クラス独特のルールもあった。

 一人だけを、皆で標的にするのは、いけないとされていた。
 
 私以外にも、動きが遅く疲れやすい子は、いたからだ。

 追い回され続けると、息切れして逃げられない。

 わざと顔面を狙うのも禁止だった。

 しかし、彼のルールには、そんな文言はない。

 私は、彼を筆頭にする男子達に標的にされ、

 逃げ回り続け、最後に顔面に、剛球をぶつけられた。

 それが連日続いた。

 乱暴な話だが、やり口はワンパターンだ。だから、逃れる方策はあった。

 私は、クラスのルールが通用しているうちに、さっさとボールに掠って、

 外野へ逃れ、絶対にコートに入らないようにした。

 ところが、自分からボールを受けようとしないから、

 ゲームに支障をきたす事が起こった。

 すると、敵チームのはずの彼が、いきなりぶっ飛んできて

 「おまえ、なめとんのかiconN04真面目にしろやiconN04」と、

 こぶしで顔面を殴りつけるのだ。

 泣こうが喚こうが、一度火のついた彼が、止まる事はない。

 かくして、私の顔面は、ぼこぼこになり、

 何日も消えない青あざだらけになるのだった。

 この事で、彼の親が家に謝りに来た覚えはない。
 
 学校で問題になった様子もない。

 それどころか、積極的にゲームしなかったのが、原因だと言って、

 私に、クラス全員に謝れと、担任が言ったのだ。

 私が謝る訳はない。いつもいつも、ひどい目に遭って来た。

 私に非はない、と、私は連綿と訴えた。

 感情が高ぶって、泣けて泣けて、泣きじゃくりながら訴えた。

 すると、担任が意外な事を言った。

 「そうやって、いつも泣くでしょう。泣くからいじめられるんです。

  泣かないようにしなさい。泣いてはいけません。」

 逆である。いじめられたから泣いているのだ。

 いじめられる前から、泣いているのではない。

 しかし、担任も、クラスの全員も、

 「すぐ泣くから、余計いじめられる。

  泣かなければ、いじめない。」と言い出した。

 私には、訳が分からなかった。

 泣いてる人を見て、余計いじめたくなるという感情が、

 私には理解できなかった。

 幼い弟や従妹が身近にいたが、彼らが泣き出したら、

 何とか泣き止ませたいとは思うが、もっと泣けばいいとは、

 思った事がなかった。第一、もっと泣くようなことをしたら、

 あとで大目玉を食うのは、こちらである。

 「そんな、訳の分からない事、出来ませんiconN04

 私は謝らなかった。

 約1500人の、全校生徒が、私の敵に回った。

 誰とも遊ばず、誰とも協調せず、積極的に話もせず、

 ニコリとも笑う事もなく、ただ授業だけの為に通学した。

 乱暴者の暴力は、度々身に降りかかった。

 私の顔からは、青あざの消える事がなく、

 持ち物の破損は、度を越していった。

 5年生の終わりに、彼が転校し、私の地獄は終わった。

 6年生になって、誰もが、この異常事態の原因は、あの乱暴者の、

 悪影響であって、泣き虫の屁理屈コネは、体育が苦手なだけの

 普通の女子であったことが、分かって来たのだろう。

 だが、泣くことを禁じられた私の感情は、表面的には枯渇し

 泣かない代わりに、笑う事も忘れた、能面のような表情を作り出た。

 その表情を自分で嫌い、私は演技を覚えた。

 どのようにほほ笑むと、優し気に、可愛らし気に見えるか、

 人に会う時は、口角や、視線に細心の注意を払って、過ごすのだった。

 大抵の人は、それで誤魔化せた。だが、今日、お教室の生徒に、

 看破された。宿題をしたくないと言う子に、にっこり微笑んで、

 「宿題、した方が、良いと思うよ。」

 途端に、その子は、私の顔を指さして言った。

 「そういう目、睨んでるやんか。嫌いや。怖い目ぇや。」

 子どもの目が、いかに真実を見抜くか、である。

 泣きも笑いもしない私の表情を、あの子は、余程に気味の悪い物だと、

 ずっと思っていたのだろう。仕方がない。

 もとはといえば、あの子達のような、感情を露わにし過ぎる子供に、

 やられ続けた結果なのだから。

 だから、私は、泣き虫の子に、「泣くな」とは言いたくない。

 「泣く奴、嫌いや。イライラする。センセ、あいつ泣き止まして。」

 そんな事を言う子もいる。

 だが、泣かしたのは、それを言ってる方の子である。

 おもちゃを取り上げて、泣かしたのである。 

 それを解いて言い聞かせたが、その子の知能はその繋がりを

 理解できないようであった。

 自分が欲しいおもちゃを、欲しいように手にした事と、

 相手が泣き出して、自分がイライラしている事が、

 エピソードとして、関連しないのだ。

 私は、泣いてる方の子を庇った。

 「もう、そのおもちゃ、持ってていいから、この子に構わんとって。

  仲よく遊ばれへん子は、一人で向こうで遊んで。」

 泣いてる方の子は、そのおもちゃを手にできない事が分かって、

 さらに盛大に泣き出した。

 「他のおもちゃで遊ぼう。ボールもあるよ。ゲームもあるよ。」

 突然、怒ってた子が、泣いてる子を突き回し出した。

 結構な力だし、立った位置から、しゃがみ込んでる子を突くのだから、

 頭や顔を突く事になる。危険だし、私は割って入って、

 荒ぶる感情を静め静め、ゆっくりと説得しようとしたが、

 何としても、聞き入れない。

 「泣く奴、嫌いや。イライラするねん。泣き止めや、

  こいつ、まだ泣きよる。泣き止めや。ああ、イライラする。」

 その時、私の脳裏に、記憶がよみがえった。

 『泣くから、いじめられるのです。泣いてはいけません。』

 それは、正しい指導だっただろうか?

 そうは思えない。その結果が、歪み切った精神構造の私自身だ。

 泣かした方が、悪いのだ。当たり前のことだ。

 「もう、向こうへ行って。仲良しできない人は、一人で遊びなさい。

 泣いてる人、突くなんて、最低の卑怯者よ。」

 推理物のアニメの好きな子だから、このセリフは効いた。

 部屋のまん中に大の字に転がって、

 「イライラするんだよぉ!すっごくイライラするんだぁ!!」

 だが、その時には、もう、泣いてた子は別の遊びを見つけて、

 楽しそうに笑い声を立てていた。

 「なんや、泣いてへんのか。」

 むくりと起き上がって、普通に近づいて来た。

 私はまだ警戒していたが、距離的には近い所で、

 二人は、別々に遊びだしていた。

 無理に同じ遊びをさせる事だけが、良い訳ではない。

 体力の差がありすぎる時は、別々に一人ずつ遊んだって、

 構わないと思う。何が何でも、全員が一斉に同じ遊びをしようとするのは、

 誰かが我慢をし、誰かが無理をすることである。

 時には良いかもしれないが、個人差の激しい子達なのだから、

 一人ひとり、安全範囲を逸脱しない程度に、

 好きな事を、させてやればいい、と思う。・・・のだが、

 なんだか、方向性が少しずつ変わって行ってるようだ。

 みんなが一斉に、仲良く同じ遊びをするように、

 計画が立てられ、道具が揃えられ、指導方法が話し合われている。

 計画や指導方法は良いが、無理や我慢を強いられる子が出るのは、

 どうすればいいのか、よく分からない。

 ・・・やはり、私は、集団には向かない性格なのだろうか・・・

 一人ずつを大切に思いたいのだが、どうも、上手く行かない。

 経験値の問題では、無いような気が、

 して来てしまう、この頃である。

 


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Posted by さあちゃん at 04:33│Comments(0)愚痴保育
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